書籍紹介

『だれもが働きやすい「最高の職場」をつくる 女性の視点で見直す人材育成』書評


離職率低下、育成力向上に効果あり 女性視点での「働きやすい職場づくり」とは

2018.10.01

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少子高齢化による人材不足が進み、2025年までには労働人口が583万人減少するといわれています。(参照:「労働市場の未来推計」パーソナル総合研究所)特に中小企業の人材不足は深刻化しており、多くの人事担当者にとって喫緊の課題となっているのではないでしょうか。

人材不足解消のための1つの方法として欠かせないのが「働きやすい職場づくり」です。今後、子育て・介護・病気などを抱えて働く人が増加し、さらには年齢・国籍・セクシュアリティが異なる同僚と働く可能性もますます高まっていくと予想されます。その多様性を受け入れることが「働きやすい職場づくり」の第一歩だと言えるのではないでしょうか。

この課題に対して、新たな視点でその解決法を提案する書籍があります。それは、『だれもが働きやすい「最高の職場」をつくる 女性の視点で見直す人材育成』。立教大学教授・中原淳氏と、トーマツ イノベーションの共同制作により出版された1冊です。

今回は、本書の内容を紹介しながら、「働きやすい職場づくり」の方法について解説します。

「女性活躍推進」が多様性を受け入れる第一歩に

本書の中で、中原氏は「日本の職場において、女性には”最もメジャーなマイノリティ”としての側面があります」と言及。男性中心文化が根強い日本企業では、性別による不平等が存在している職場がいまだに存在しているといいます。

”最もメジャーなマイノリティ”である女性にとって「働きやすい環境」を作ることができない企業は、その他の細分化されたマイノリティを受け入れることはできません。そこで、女性活躍推進を目的とするのではなく、あくまで「誰もが働きやすい職場」への第一歩として、本書では「女性が働きやすい職場」を追求していきます。

4つのステージ別に女性を支援

一口に「女性」といっても、個人の状況はさまざまです。女性のライフステージ、キャリアステージ別に、細かい適切な支援を行うことが必要になります。そこで本書では、以下4つのトランジション・ステージを設定し、ステージ別の女性に対する支援の仕方について解説していきます。


・ステージ1:スタッフ期
・ステージ2:リーダー期
・ステージ3:マネジャー期
・ステージ4:ワーママ期

だれもが働きやすい「最高の職場」をつくる 女性の視点で見直す人材育成』p.67

※トランジション…ライフステージ・キャリアステージに応じて、女性が担う役割の変化(参照:『だれもが働きやすい「最高の職場」をつくる 女性の視点で見直す人材育成』p.67)

1.スタッフ期

スタッフ期とは、リーダーでもマネジャーでもない実務担当者のことを指します。スタッフ期の女性を対象に、「『いまの職場で働き続けたい』と思う要因」についてアンケートを実施したところ、以下のような結果となりました。


1位:責任を持って仕事に取り組む風土
2位:多様性を認める風土
3位:残業見直しの雰囲気

だれもが働きやすい「最高の職場」をつくる 女性の視点で見直す人材育成』p.74

 この中で、2位にランクインした「多様性を認める風土」について見ていきます。

・多様性を認める風土
男性ばかりにチャンスが与えられていたり、女性リーダーを拒絶するメンバーがいたりすると、女性の就労意欲を低下させる要因になります。

スタッフ期の男性1,252人、女性989人に調査をしたところ、「職場では男性の方が優遇されている」と実感する割合が、女性で44.9%、男性で30.8%と、男女間で14.1ポイントの差が出る結果となりました。企業によっては、逆の結果が出ることがあるかもしれません。いずれの場合でも、職場内で男女間の認識の差があるかどうかを把握することが重要だといえます。

また、「育休・産休の制度があるか」「制度が使いやすいかどうか」といった「女性支援制度」に関する項目がランキングの上位に来ていないのは、少し意外な結果ではないでしょうか。

現在では、「女性支援制度」の整備が進み、それを利用する女性も増加傾向にあります。このように、制度を取り巻く環境が改善されつつあるため、本書では「女性支援制度」自体が就業継続意欲に与える影響が少なくなってきていると考察しています。

これらの結果から、「女性支援制度」の整備や利用しやすい環境づくりは最低条件として、「男女平等に仕事のチャンスが与えられている」「残業の常態化を見直す」といった、「普段の職場環境」を整えることが重要だといえます。

2.リーダー期

リーダー期とは、部下を1名以上持つが、評価権限は有していない人を指します。これまで、スタッフ期で「ソロプレイヤー」として活躍していた人物が、他人を動かしチームの成果を出す「リーダー」へとステップアップします。

業務内容の変化によって、ギャップを受ける体験を「リアリティショック」といいます。この衝撃が強すぎると、モチベーションやリーダー業務の継続意欲の低下を引き起こす可能性があります。そのため、リーダー期に突入した女性については、このリアリティショックをいかに軽減させるかが大きな課題となります。

また、女性は男性に比べて、「ビジネスで成功した女性は妬みを買いやすい」と感じる傾向にあります。(下図参照)そのため、リーダー期の中でもとくに女性に対しては、このネガティブなイメージを払拭する必要があります。
181001_b_02※出典:トーマツ イノベーション×中原淳 女性活躍推進研究プロジェクト (2017)「女性の働くを科学する:本調査」

これらの課題を解決する手段として、本書では「プレビュー」と「フォローアップ」を提唱しています。

「プレビュー」とは、リーダーになった場合に起きることを上司から事前に伝えること。事前の情報共有によって、リーダー就任後の事態を想定させることが重要です。次に、「フォローアップ」とは、リーダー着任後に、上司との話し合いを通じて課題解決のヒントを与えることです。

これらの手法によって、リーダー期の女性にとっての業務上の障壁を取り除いていくことが重要です。

3.マネジャー期

マネジャー期とは、評価権限を有し、部下を1名以上持つ人を指します。マネジャー期の男女に「管理職の役職を引き受けた理由」についてアンケートを実施したところ、以下のような結果になりました。

181001_b_01※出典:トーマツ イノベーション×中原淳 女性活躍推進研究プロジェクト (2017)「女性の働くを科学する:本調査」

この結果から、多くの女性は上司の説得によって昇進を引き受けたのに対し、男性はポジティブな理由から昇進を引き受ける傾向にあることが分かります。そのため、マネジャー期の女性には、「なぜあなたを管理職に選んだのか」という理由を伝えることが重要です。

本書では、その理由を効果的に伝える手法として、以下の4つのステップを踏むことを提案しています。


・ステップ1:結論
いつから何の職に就いてほしいのかを単刀直入に伝える

・ステップ2:理由
職場の状況やスキルの適合性を踏まえつつ、なぜ昇進してほしいのかを伝える

・ステップ3:意向確認
本人の現時点の思いを聞く。一方的に伝えて終わりにしない

・ステップ4:後押し
上司からのサポートや人事のバックアップがあることを伝える

だれもが働きやすい「最高の職場」をつくる 女性の視点で見直す人材育成』p.145

また、前述の通り、女性は男性よりも「活躍する女性への妬み」を敏感に察知する傾向があります。そのため、「下手に活躍して妬みを買うなら、あえて無能なフリをしよう」とする「戦略的無能」の心理が働くことがあります。これについては、無理に彼女たちの意識を変革しようとするのではなく、「無能を装ったほうがトク」と思わせる職場環境を変えていくことが重要です。

4.ワーママ期

ワーママ期とは、第一子が小学生以下の、夫婦共働きの女性(ワーキングマザー)を指します。

ワーママは、保育園・幼稚園の送り迎えのために時短勤務制を採用していたり、子どもの急な体調不良に対応するため早退したりと、他の社員よりも勤務時間が限られていることが多いです。そのため、周囲からの協力がより必要な段階といえます。

ワーママに対し「何か困ったことがあったら言ってね」と一言伝えるだけで満足している上司の方はいないでしょうか。ワーママ500人を対象に「職場の仲間に協力してもらえるよう積極的に働きかけているか」というアンケートを実施したところ、「できている」と答えたワーママはわずか10%しかいないという結果になりました。大多数のワーママは、周囲への協力を求めることに何かしらの課題を抱えているようです。

そこで、上司としては、メンバーたちのタスク状況を「見える化」し、誰がどれくらい忙しいかの情報を共有することで、ワーママがヘルプを頼みやすい状況を作るなどの工夫が必要になります。

このような協力体制を整備することで、ワーママ以外の多様な働き方を必要とする人々にとっても「働きやすい職場」づくりを実現できるのではないでしょうか。

離職率低下、育成力向上のための「職場づくり」を考える

以上、『だれもが働きやすい「最高の職場」をつくる 女性の視点で見直す人材育成』の内容を紹介し、「働きやすい職場づくり」のための方法について解説しました。

女性にとって働きやすい職場づくりを目指すことはそのまま、多様性を受け入れることにつながり、「誰もが働きやすい職場」への第一歩になります。また、本書では、働きやすい職場を提供することで、人や組織の成長を促し、離職率低下にも繋がるとしています。

本書をきっかけに、職場のあるべき姿について考察する機会を設けてみてはいかがでしょうか。

【文・@人事編集部】


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