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リンクアンドモチベーション主催・4社共同記者発表会レポート


エンゲージメント・レーティングとは? 上場企業が語る新指標の重要性

2018.10.03

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労働人口が減少し、成熟した現代社会で企業が生き残るには、従業員の会社に対する愛着心や仕事への情熱『エンゲージメント』が重要な要素となる。

従業員のモチベーションにフォーカスしたコンサルティング会社「リンクアンドモチベーション」は、2018年9月18日、エンゲージメントを測る指数「エンゲージメント・レーティング」を投資指標として上場3社と新展開する共同記者発表を開催した。

今回は、会見で紹介された指数の重要性や活用方法を紹介する。

「エンゲージメント」が本質的な働き方改革を実現する

linkand01小笹芳央氏(リンクアンドモチベーション代表取締役会長)は、従業員のワークモチベーションの把握が重要だと述べた。

小笹氏:
「経済が成熟して社会が豊かになるにつれて、ワークモチベーションも多様化しています。制度待遇や仕事内容、人的能力や事業内容など、人によって異なるワークモチベーションを束ねる必要があるでしょう」

企業が生き残るには、商品市場に加えて労働市場の変化にも適応しなければならない。企業と個人の関係も変化し、従来の終身雇用や従業員の忠誠行動に支えられていた「相互拘束型」の関係から、多様な雇用形態を提供し、従業員が自立的な投資行動をする「相互選択型」の関係に移行しつつある。

これまでは従業員がどの程度組織に適応しているかを測る指標が存在しなかった。そこで注目されたのが、従業員エンゲージメントだ。従業員エンゲージメントとは、従業員と組織がどの程度理解し合っているかを測る指標で、企業への愛着・情熱を表す基準とも言える。

小笹氏:
「社員のエンゲージメント状態を可視化するためには、会社に何を期待しているかという『期待度』と、会社の何に満足しているかという『満足度』の2軸を見る必要があります。期待度と満足度が共に高いことは企業の強みだと言えるでしょう」

リンクアンドモチベーションは、組織改善クラウドサービス「モチベーションクラウド」を開発し、組織診断サービスを提供している。同サービスでは、従業員が会社に「何をどの程度期待しているのか」「何にどの程度満足しているのか」の2つの観点で質問を行い、その解答結果からエンゲージメントスコアを算出して、エンゲージメント・レーティングとしてランク付けする。

この企業と個人の相思相愛度合いを数値化した「エンゲージメントスコア」は、業績との相関性があることが明らかになっている。エンゲージメントスコアが向上すれば、営業利益率、労働生産性も向上するのである。持続的な企業価値向上を促すためにも、エンゲージメントスコアを向上させて今の労働市場に適応することが重要だ。

組織の見えない課題を可視化する「エンゲージメント・レーティング」

企業と従業員のエンゲージメントを測る指数、エンゲージメントスコアを基にした格付けランクであるエンゲージメント・レーティングは、スコアに応じて「AAA~DD」の11段階で判定される。約4,000社、90万人以上のデータベースを基にスコア算出しており、自社のIR資料において、組織状態を示す相対比較可能な非財務指標として活用可能だ。

上場企業3社が「エンゲージメント」についてディスカッション

linkand2パネルディスカッションでは、自社のエンゲージメント・レーティング開示に賛同した上場企業3社の代表が登壇。

松本恭攝氏(ラクスル株式会社代表取締役社長CEO)、吉田浩一郎氏(株式会社クラウドワークス代表取締役社長CEO)、稲垣裕介氏(株式会社ユーザベース 代表取締役社長・共同経営者)の3名がエンゲージメント・レーティングの活用方法について語った。

松本氏:
「ラクスルでは、エンゲージメント・レーティングを『会社と従業員の関係性の把握』『部署ごとの組織状態の把握』『組織課題の可視化と対処』に活用しています。特に、会社のビジョンが伝わっているかを把握するのに適していて、通常であれば空気感でしか把握できない関係性を数値化できる点が大きなメリットです。結果的に組織のマネージメントがしやすくなり、事業が伸びやすくなったと感じています」

吉田氏:
「クラウドワークスでは、エンゲージメント・レーティングを導入して1年半で売上とエンゲージメントを大幅に向上させました。エンゲージメント・レーティングは、マネジメントとチームの状態を可視化する存在として重宝しています。導入前は大量採用によって各マネジャーが前職でのルール・言語を持ち込み、解釈のぶつかり合いが生まれていました。エンゲージメント・レーティング導入後は可視化されない組織状態を数値化することで、さまざまなKPIを立ててPDCAを回し、こうしたぶつかり合いを解消して改善につなげていきました」

稲垣氏:
「ユーザベースでは、エンゲージメント・レーティングの最高ランクAAAを維持しています。経営面では『財務状態』『ミッション』『バリュー』の3つを重視していて、特にバリューの可視化に悩んでいましたが、エンゲージメントスコアとして数値化ができて助かっています。経営が悪化した時期にはチームの分裂や経営メンバーへの不信が生まれましたが、エンゲージメント・レーティングの数字を追いながら、各部門や部署ごとに改善を加えていきました。スコアが著しく悪い部分に関しては、抜本的な解決が必要ですね」

上場企業が投資家にエンゲージメント・レーティングを開示する意味

さらに、エンゲージメント・レーティングを資本市場に開示する意味について、各社が見解を語った。

linkand3吉田氏:
「クラウドワークスの強みはチーム経営なんですね。ティール組織のような分散型の経営をしていて、上場後に作った新規事業は軒並み50~200%の成長を遂げています。ただ、こうした分散型経営の価値をIRで伝えるのは非常に困難です。個人が働く市場を啓蒙し顕在化させるために投資をしていますが、その価値は利益だけでは測り切れません。エンゲージメント・レーティングがAAAであると伝えれば興味を持ってもらえると考え、開示を決めました」

稲垣氏:
「私たちの作っているNewsPicksは、スマートフォンの可処分時間を割いて読むメディアなので、はやりのマンガアプリなどが出ると一気に利用者が減る可能性があります。投資する側に立ってみると、企業価値をみる時にチーム力も重視するんですね。上場企業になるとチームの中身が見えにくくなるので、KPIを分かりやすく伝えるためにこの数値が大切なのではと考え、開示に賛同しました」

松本氏:
「製造業は機械を導入するのでキャッシュフローが長いのが特徴ですが、インターネット業では、サービスを作るのは人です。全てのサービスは人のアイデアから生まれているものの、アイデアの部分はバランスシートに一切記載されません。長い時間をかけて価値を生み出すのに、人件費としてコストにプラスされてしまう。そこで、コストとして処理する人件費とエンゲージメント・レーティングを掛け合わせればアセットとして捉えられるので、インターネット企業に投資しやすくなるのではと考えました。人に対する投資は増やしていきたいので、理解を深めるためにはエンゲージメント・レーティングの開示が必要です」

従業員の会社への「期待度」と「満足度」が重要な指標に

社会は変化し続けており、物差しを変えなければいけない時代に突入している。女性活用についても、単に「女性管理職比率の向上」だけを目標とするのではなく、「女性従業員のエンゲージメント向上」という視点を加えた方が、女性従業員の就業継続意欲や生産性の向上につながり、より本質的な取り組みを行うことができるのではないだろうか。

限られた労働力で強い企業を目指すためには、今後は従業員の会社への期待度と満足度により目を向けていく必要がありそうだ。

執筆者紹介

萩原かおり(はぎわら・かおり) フリーランスのライター・編集者。美容と心理が専門で、婚活パーティーの取材人数は200人を超える。三度の飯と執筆が同じくらい好き。求人・化粧品・社史制作を経て独立。現在は執筆業を中心に、取材記事から広告・LP・メルマガ作成まで幅広く活動中。休日はエステとジムに通い詰める美容オタク。 https://note.mu/hagitaro1010

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