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労働派遣法改正のポイントは? 2018年から現場で必要になる4つの対応

2018.09.21

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2015年9月の労働派遣法改正に伴う期間制限の実効が発生に関して、前回の記事では事業所単位の期間制限(派遣社員の受け入れは事業所毎に3年が上限)について取り上げましたが、今回は事業所が派遣社員の労働環境などに関して対応すべきことと個人単位の期間制限についてご紹介したいと思います。

労働派遣法改正に関連して、現場で必要な4つの対応

まず、事業所としては、派遣社員に関連して以下の4つの対応が必要となります。

1.派遣先の労働者に業務に密接に関連した教育訓練を実施する場合は、派遣社員にも実施する

業務に関連した研修(例:業務上使用するツールの操作説明会など)を行う場合、派遣社員もその業務に関与しているならば、直接雇用の社員だけではなく、派遣社員も対象とする必要があります。業務に関連する研修の場合、雇用形態に関係なく同じ扱いをすることが法律で定められました。ただ、これは実務上の必要性から対応済みであることも多いでしょう。

2.派遣先の労働者が利用する福利厚生施設(具体的には社食施設、休憩室、更衣室等)については、派遣社員に対しても利用の機会を与えるよう配慮する

派遣社員は福利厚生施設を使用できない、ということが稀にあるようです。今回の法改正によって職場環境の改善がみられると思いますが、このようなことをそもそも規定しなければいけない状況があるというのは、何とも言えないやるせなさを感じます。

3.派遣元から直接雇用の依頼があった場合、正社員に限らず該当事業所での直接雇用の募集情報を周知する

どんな環境なのかを理解している派遣先での直接雇用は、派遣社員のキャリア形成における選択肢の一つでしょう。これは、採用募集情報や社内公募情報が派遣先のホームページやイントラネットに掲載されていれば、自身で照会できるので、派遣先も新たな負担は発生しないと思われます。

4.派遣元から依頼があった際に、派遣社員の職務遂行状況や遂行能力の向上度合いなどの情報を提供する

派遣社員の職務遂行状況や能力を掌握するのは、派遣元としては必要なことではないかと思います。そういった情報の提供を求められた場合、派遣先は適宜対応することが義務となりました。

同一事業所・部署での勤務は3年間

今回の法改正に伴う実効によって、同一の派遣社員が同一組織単位(課レベル)で継続して勤務する期間は3年が上限となりました。継続勤務が3年に至った後の選択肢としては、以下が考えられます。


1.他事業所・部署への異動
2.派遣先企業にて直接雇用
3.派遣会社の無期雇用社員となり、継続して同一の派遣先にて勤務
4.派遣契約終了および他社での派遣勤務

「1」および「2」は、派遣元の採用募集状況や、派遣元の意向・希望、派遣社員の業務遂行能力や適性なども鑑みて決定することなので、派遣社員の意向だけで決められるものではありません。

また、「3」については、「同一の派遣会社との間で通算契約期間が5年を超え、かつ、労働契約がない期間(派遣先企業に派遣されていない期間)が6ヶ月以上空いていない」場合、無期雇用転換の申請によって、派遣元会社で無期雇用社員になることが可能となりました。(今年4月からの労働契約法の改正による。詳細:https://at-jinji.jp/blog/14647/

加えて、所属する派遣会社を変更して、同一の派遣社員が同一の職務に携わる場合も、就業期間は通算されるため、上記のうちのいずれかの対応をする必要があります。

これまでご説明した内容から分かるように、派遣社員が3年以上継続して同一の職務に携わることは、かなり難しくなっています。前回も申し上げたとおり、今回の法改正の目的は、「派遣社員はあくまでも一時的な業務支援であり、長期間同じ業務が発生するならば直接雇用するように促す仕組みの形成」にあるでしょう。

違法派遣に対しては厳しい法的拘束

違法派遣の受け入れには「労働契約申込みなし制度」が適用されることになり、派遣先に非常に強い法的効力が及びます。違法派遣とは以下のようなものです。


• 労働者派遣の禁止業務(港湾運送、医療関連業務、運送業務、警備業務)に従事させた場合
• 無許可の事業主から労働者派遣を受け入れた場合
• 事業所/個人単位の期間制限に違反して労働者派遣を受け入れた場合(前回、今回ご紹介した内容)
• 偽装請負の場合

こういった違法派遣を派遣先が受けた時点で、派遣先が派遣社員に対して、その派遣会社との労働条件と同じ内容の労働契約を申し込んだと「みなす」制度が、「労働契約申込みなし制度」です。

要するに「違法派遣が判明した場合、派遣先が派遣社員を直接雇用することを自動的に成立させる。その際の労働条件は、派遣会社と派遣社員との間で締結されている内容を流用する」というのがこの制度です。

自動的と書きましたが、派遣労働者が申込みを承諾しなかった場合は、労働契約は成立しません。ただし、考慮されるのは派遣社員の意思のみですので、違法派遣を受けている派遣先の事情は一切考慮されません。

また、この効力は違法状態が終了した日から1年間は有効なので、その状況を改善してからも影響を及ぼすものです。

派遣社員の処遇を検討することが、会社全体の人的資源の施策に繋がる

先月(https://at-jinji.jp/blog/19491/)と今月の2回にわたって、派遣社員の雇用における期間制限(事業所単位・個人単位)の内容および具体的な対応方法についてとりあげました。派遣社員の処遇や方針を検討することは、会社全体の人的資源(労働力)の施策につながるものと言えるでしょう。

【編集部より】
「有期契約労働者に関する調査2018」の調査結果はこちら。

執筆者紹介

永見昌彦(ながみ・まさひこ) アルドーニ株式会社代表取締役。外資系コンサルティングファームなどで人事コンサルタントとして勤務した後、事業会社(ラグジュアリーブランド持株会社)で人事企画担当マネージャーとして人材開発・人事システム・人事企画を兼務。事業会社、コンサルティングファームの両面から人事に20年たずさわった経験を活かして、2016年にフリーランス人事プランナー・コンサルタントとして独立。2018年に法人化。現在、人事全般のプランニング・コンサルティング・実務にたずさわっている。

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