コラム

残業ゼロを目指して


仕事の時間管理のコツは「かかる時間」に囚われないこと

2018.08.30

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残業ゼロを実現するためのビジネスハック術を紹介する、作家・佐々木正悟氏の連載企画。今回は、タスクを計画通りに処理するために重要な『時間管理』の考え方を解説します。

目次
  1. 「かかる時間」を前提に考えると、計画通りに進まない
  2. 「かかる時間」が予想できるケースと、できないケースとがある
  3. 重要なのは「自分が仕事にかけられる時間」の限界を知ること
  4. 自分の限界を知った上で、無理のない計画づくりを

「かかる時間」を前提に考えると、計画通りに進まない

異例の暑さを記録した夏もそろそろ終わりを迎え、お子さんのいらっしゃる家庭では、「夏休みの宿題」をめぐって大変な戦いが繰り広げられている時期かと思います。

みなさんも、夏休みのはじめには先生の指示で「夏休みの計画表」を作成した経験があるのではないでしょうか。ただ私は、実際にこの「計画表」通りに夏休みを過ごした方をほとんど見たことがありません。

この「夏休みの計画表」が全く実現しない現象にはさまざまな要因があると思われますが、私が考える重要な原因は、計画表を作る際に、多くの人が宿題に「かかる時間」を予測し、それを書き込もうとすることです。

「かかる時間」を前提に考えると、時間管理はえてしてうまくいかないものです。今回は時間管理が上達するコツについてご紹介します。

「かかる時間」が予想できるケースと、できないケースとがある

なぜ時間管理を考える際に、「かかる時間」に囚われてしまうと、うまくいかないのでしょうか? 例を挙げて考えてみましょう。

非常に単純な作業であれば、「かかる時間」はある程度正確に予測することができます。たとえば、「歯磨き」にかかる時間はだいたい2~3分程度で、この時間に大きなズレが生じる可能性はほとんどありません。

しかし、「原稿を書く」というタスクに関しては「完全に予測」するのは不可能です。30分で書ける日もあれば、1時間以上かかる場合もあります。そして、30分という時間は、時間管理を考える上では、誤差の範囲内とは言えないのです。

予定から30分のズレが生じれば、10時にスタートするはずだったタスクは、開始が10時半にずれ込みます。このような予定外のタスクが1つ生じれば、全体の計画を見直す必要が出てしまい、そうした修正が何度も続けば、予定に従うこと自体が億劫になってしまいます。こうして、仕事の時間管理は失敗していくわけです。

そもそも「タスクにかかる時間を予想する」という行為は、たいていの場合失敗します。なぜなら、人は往々にして自分の力量を過大評価し、タスクを過小評価するものだからです。「自分だけは正しく把握できる」という考えは、正確な時間管理のためには厳禁です。

1つのタスクに「かける時間」を設定する

では、「かかる時間」が予測できないタスクを多く抱えている場合、時間管理はどのように行っていけばよいのでしょうか? 重要なのは、「かかる時間を予測する」のではなく、「かける時間を割り当てる」という考え方です。

例えば、上記の「原稿を書く」というタスクであれば、はじめから「50分」を割り当て、その50分の間は、原稿を書くことだけに集中します。そして50分が終わったら、作業が終わっていなくとも、次のタスクに移行します。

終わらなかった分のタスクをこなす「予備時間」は計画段階で一日の最後に設けておき、時間通りに終わった場合は、この予備時間には休んでしまってかまいません。こうすることで、時間管理の計画をいちいち大幅に変更する必要がなくなり、結果を出すことができるようになります。

重要なのは「自分が仕事にかけられる時間」の限界を知ること

「かかる時間」ではなく「かける時間」で時間管理を行う。これが時間管理において重要な前提です。その上で、次に重要となるのが「自分が仕事にかけられる時間」の限界を知るということです。

個人によって、一日でこなせる仕事の量は異なります。以前の記事でも書いたように、「自分が仕事にかけられる時間」を知る上で参考になるのは、自身の「作業記録」です。

自分が「この日は大変だった」と思う日、「この日は比較的楽だった」の思う日の作業量を改めて確認してみましょう。「大変だった日」と「楽だった日」の中間あたりが「自分が仕事にかけられる時間」の目安になります。

「自分が仕事にかけられる時間」を超えて仕事を続けることは可能ですが、そのしっぺ返しは必ず来るものです。しっぺ返しは、体調不良や精神的不調といった形で現れます。これは私の経験から来る感覚ですが、1日無理をすれば2日間がムダになり、1週間無理をすれば1カ月がムダになってしまうのです。

結果として、自分がタスクにかけられる限界の時間を決め、その限界を超えない形で仕事の時間管理をすることで、生産効率は確実に上がります。私は、これまで作業記録を取り、振り返りを行ってきたことで、自分の「仕事にかけられる時間」は、週に約36時間がいいところだと理解するようになりました。多くとも40時間以上仕事をしたら、確実に生産性が落ちていることが、記録から明らかだったのです。

 自分の限界を知った上で、無理のない計画づくりを

成果ではなく、自分の限界をもって「自分はもう十分に働いた」と確信できるということは、とにもかくにも精神衛生上素晴らしいことです。自分の限界を自分自身が知らなければ、それを知るはずのない他人からの圧力に押されるがままになってしまいます。

「かかる時間」ではなく「かける時間」で考え、自分が「仕事にかけられる時間」の限界を把握する。これが、仕事の時間管理で重要なコツです。自分の限界を超えて無理をしてしまったら、翌週には必ずその反動が来て、時間管理どころではなくなってしまう可能性があるということを、忘れないようにしましょう。

執筆者紹介

佐々木正悟(ささき・しょうご) 心理学ジャーナリスト。「ハック」ブームの仕掛け人の一人。1973年北海道生まれ。「効率化」と「心理学」を掛け合わせた「ライフハック心理学」を探求。執筆や講演を行う。著書に、ベストセラーとなったハックシリーズ『スピードハックス』『チームハックス』(日本実業出版社)のほか『先送りせずにすぐやる人に変わる方法』(中経出版)『一瞬で「やる気」がでる脳のつくり方』(ソーテック)などがある。ブログ:佐々木正悟のメンタルハック

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