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【平成29年度使用者による障害者虐待の状況等】使用者による障害者虐待が前年度比44.6%増で2,454人に

2018.08.23

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厚生労働省は2018年8月22日に、「平成29年度 使用者による障害者虐待の状況等」の結果を公表した。これによると、通報・届出の対象となった障害者数は2,454人で、前年度と比べて44.6%増えた。実際に虐待が認められた障害者数は1,308人で、前年度比34.6%増という結果になった。また、受けた虐待の種別では、経済的虐待が1,162人(83.5%)で最も多かった。以下、報道発表資料より。

平成29年度使用者による障害者虐待の状況等の結果のポイント

(1)通報・届出のあった事業所数、通報・届出の対象となった障害者数はいずれも前年度と比べ増加。[P.3 1-(1)、(2)]
・通報・届出のあった事業所数1,483事業所(前年度比12.7%増)
・通報・届出の対象となった障害者数2,454人(同44.6%増)

(2)虐待が認められた事業所数※2、虐待が認められた障害者数はいずれも前年度と比べ増加。[P.6 2-(1)、(2)]
・虐待が認められた事業所数597事業所 (前年度比 2.8%増)
・虐待が認められた障害者数1,308人(同34.6%増)

(3)受けた虐待の種別※3※4では、経済的虐待が1,162人(83.5%)と最も多く、次いで心理的虐待が116人(8.3%)、身体的虐待が80人(5.7%)となっている。[P.7 2-(3)]

詳細はこちらをご覧ください。
「平成29年度 使用者による障害者虐待の状況等」の取りまとめ結果
・別添1 平成29年度における使用者による障害者虐待の状況
・別添2 平成29年度における使用者による障害者虐待の事例
・参考1 障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律の概要
・参考2 使用者による障害者虐待が行われた場合などの対応

平成29年度における使用者による障害者虐待の事例(別添2より)

事例1:身体的虐待が認められた事例

通報・届出の概要

・障害種別:身体障害
・就労形態:期間契約社員
・事業所の規模:5~29人
・業種:金融業、保険業

障害者本人からの届出。
上司によって職場内の倉庫に閉じ込められることが複数回あった。1度であれば誤って鍵を閉めた可能性も考えられるが、1人で倉庫にいるときにのみ、これまで複数回閉じ込められた。

労働局の対応

労働局は職業安定部(公共職業安定所)を担当部署とし、訪問調査を実施した。

事業主に事情聴取したところ、障害者からの相談を受けて行った事業所内の調査により、障害者の上司が閉じ込め行為を行ったという事実を確認したため、当該上司に対して指導を行うとともに再発防止のために双方が仕事上で接触しないよう指示する等の対応を行ったとのことであった。

使用者による身体的虐待であることが認められ、事業主が調査を行い、再発防止策を講じていることから、公共職業安定所は引き続き適切な対応を行うよう指導を行った。処理終了後、労働局は県庁へ情報提供を行った。

事例2:性的虐待が認められた事例

通報・届出の概要

・障害種別:発達障害
・就労形態:パート等
・事業所の規模:5人~29人
・業種:医療、福祉

障害者本人からの届出。
障害者は、上司から抱きつかれるなど体を触られることや、お尻を叩かれるなどの性的虐待を受けた。

労働局の対応

労働局は雇用環境・均等部(室)を担当部署として、訪問調査を実施した。事業主に事情聴取をしたところ、身体的接触に関する通報内容を事実として認めた。

使用者による性的虐待であることが認められたことから、雇用環境・均等部(室)は、事業主に対し、男女雇用機会均等法に基づき、セクシュアルハラスメントの被害者や行為者に対する措置を適正に行うこと、再発防止対策について指導を行った。処理終了後、労働局は県庁へ情報提供を行った。

事例3:心理的虐待が認められた事例

通報・届出の概要

・障害種別:知的障害
・就労形態:正社員
・事業所の規模:100人~499人
・業種:サービス業

市役所から県庁を経由して労働局に報告された事案。
事業主が障害者に対し、仕事を適切に行っているにもかかわらず、「何をやってるんだ!」「早くしろ!」と怒鳴るなど、度々威圧的な態度をとる。

労働局の対応

労働局は職業安定部(公共職業安定所)を担当部署とし、訪問調査を実施した。事業主から事情聴取したところ、通報内容について概ね事実であることを認めた。

使用者による心理的虐待であることが認められたことから、公共職業安定所は、業務指導の一環との認識で行った行為であっても、著しい暴言等は心理的虐待に当たることを助言し、障害特性等を踏まえて対応するよう指導した。処理終了後、労働局は県庁へ情報提供を行った。

事例4:心理的・身体的虐待が認められた事例

通報・届出の概要

・障害種別:知的障害
・就労形態:期間契約社員
・事業所の規模:500人~999人
・業種:生活関連サービス業、娯楽業

障害者本人からの届出。
上司は、作業に時間がかかったり、一度教えてもらったことを覚えきれずに作業が遅れると、暴言や殴る、蹴るなどの暴力をふるうことがあり、恐怖を感じている。

労働局の対応

労働局は職業安定部(公共職業安定所)を担当部署とし、市と合同で訪問調査を実施した。

事業主から事情聴取したところ、上司はスキンシップのつもりで行ったものであるが過剰な行為になっていることや、過去に上司は障害者に対する暴言等について謝罪したが再発していることを認めた。

使用者による心理的・身体的虐待が認められたことから、公共職業安定所は、当該上司への指導の徹底や再発防止、障害者に対しての言動や雇用管理について、障害特性を踏まえ配慮するよう指導した。処理終了後、労働局は県庁へ情報提供を行った。

事例5:身体的・心理的虐待と経済的虐待が認められた事例

通報・届出の概要

・障害種別:知的障害
・就労形態:正社員
・事業所の規模:5人~29人
・業種:卸売業、小売業

市役所から県庁を経由して労働局に報告された事案。
事業主から作業が遅いことを叱責され、反論すると脇腹を殴られることや、腰を蹴られ、襟をつかまれる等の暴行を受けた。さらに、「帰れ、二度と来るな」と言われた。

労働局の対応

労働局は職業安定部(公共職業安定所)を担当部署とし、身体的虐待の程度が高く、緊急対応を要する事案であると判断し、市及び県とも連携して合同で訪問調査を実施した。事業主から事情聴取したところ、通報内容にあった暴行、暴言について事実と認めた。

使用者による身体的虐待及び心理的虐待であることが認められたことから、公共職業安定所は、虐待の再発防止について指導を行った。

さらに、調査時に時間外労働に対する割増賃金の不払いに係る経済的虐待の疑いも認められたため、労働基準監督署が監督を実施したところ、経済的虐待が認められたため、是正勧告を行った。処理終了後、労働局は県庁へ情報提供を行った。

事例6:経済的・心理的虐待が認められた事例

通報・届出の概要

・障害種別:精神障害
・就労形態:期間契約社員
・事業所の規模:30人~99人
・業種:卸売業、小売業

障害者本人からの届出。
採用の際、「健常者なら時間給900円だが、障害者だから800円だ」と言われ同意してしまった。しかし、納得できないと考え、使用者に賃金額の見直しを申し出たが、改善してもらえなかった。

労働局の対応

労働局は職業安定部(公共職業安定所)を担当部署とし、調査を実施した。

事業主から聴取したところ、障害者であることを理由に800円で契約したことを認めたため、労働局は、使用者による経済的虐待および障害を理由とする差別について心理的虐待であることを認め、事業主に対して改善を指導したところ、採用時に遡って時間給を900円とし、支払いを行った。

処理終了後、労働局は県庁へ情報提供した。

事例7:経済的虐待が認められた事例

通報・届出の概要

・障害種別:知的障害
・就労形態:期間契約社員
・事業所の規模:30人~49人
・業種:サービス業

労働基準監督署による発見。
障害者の約定賃金(時間額)が地域別最低賃金額(時間額)を約100円下回っていた。

労働局の対応

労働基準監督署は、監督指導を実施し、法定の除外事由(最低賃金の減額特例許可)の有無や賃金台帳を確認したところ、法定の除外事由なく、最低賃金未満の賃金を支払っていたことがわかり、最低賃金法第4条違反として是正勧告を行った。

最低賃金法違反の理由は、最低賃金の減額特例許可をこれまで受けていたが、許可更新を失念していたとのことである。使用者による経済的虐待であることが認められたことから労働基準監督署は最低賃金額との差額の支払いを指導した。処理終了後、労働局は県庁へ情報提供を行った。

事例8:経済的虐待が認められた事例

通報・届出の概要

・障害種別:知的障害
・就労形態:正社員
・事業所の規模:5人~29人
・業種:製造業

労働基準監督署による発見。
障害者の約定賃金が月額11万円で、時間額にすると地域別最低賃金額(時間額)を約200円下回っていた。

労働局の対応

労働基準監督署は、監督指導を実施し、法定の除外事由(最低賃金の減額特例許可)の有無や賃金台帳を確認したところ、法定の除外事由なく、最低賃金額未満の賃金を支払っていたことがわかり、最低賃金法第4条違反として是正勧告を行った。

最低賃金法違反の理由は、地域別最低賃金額の確認を怠り、障害者の入社時の最低賃金額から変更していなかったことである。使用者による経済的虐待が認められることから、労働基準監督署は最低賃金額との差額を支払いを指導した。処理終了後、労働局は県庁へ情報提供を行った。

【報道発表資料:「『平成29年度使用者による障害者虐待の状況等』の結果を公表します」より|2018年8月22日・厚生労働省】

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