厚生労働省
割増賃金の未払いが1,870社の企業で発生 前年度比521社増
2018.08.17

厚生労働省は、2018年8月10日に、平成29年度に時間外労働などに対する割増賃金を支払っていない企業に対して、労働基準法違反で是正指導した結果を発表した。
これによると、100万円以上の割増賃金を支払った企業は1,870社で、前年度から比べて521社増えており、そのうち支払金額が1,000万円以上になったのは262社だったことがわかった。厚生労働省では、引き続き、賃金不払残業の解消に向け、監督指導を徹底していくという。以下、報道発表資料より。
平成29年度の監督指導による賃金不払残業の是正結果のポイント(詳細別紙1、2)
是正結果は、全国の労働基準監督署が、賃金不払残業に関する労働者からの申告や各種情報に基づき企業への監督指導を行った結果、平成29年4月から平成30年3月までの期間に不払だった割増賃金が各労働者に支払われたもののうち、その支払額が1企業で合計100万円以上となった事案を取りまとめたものです。
監督指導の対象となった企業では、定期的にタイムカードの打刻時刻やパソコンのログ記録と実働時間との隔たりがないか確認するなど、賃金不払残業の解消のためにさまざまな取組が行われています。(別紙3参照)
(1)是正企業数1,870企業(前年度比521企業の増)
うち、1,000万円以上の割増賃金を支払ったのは、262企業(前年度比78企業の増)
(2)対象労働者数20万5,235人(同107,257人の増)
(3)支払われた割増賃金合計額446億4,195万円(同319億1,868万円の増)
(4)支払われた割増賃金の平均額は、1企業当たり2,387万円、労働者1人当たり22万円
【別紙1】100万円以上の割増賃金の遡及支払状況(平成29年度分)[PDF形式:1.3MB]
【別紙2】100万円以上の割増賃金の遡及支払状況(過去10年分)[PDF形式:5.9MB]
【別紙3】賃金不払残業の解消のための取組事例[PDF形式:121KB]
賃金不払残業の解消のための取組事例(別紙3より)
事例1(業種:小売業)
賃金不払残業の状況
◆タイムカード打刻後に作業を行うよう指示されているとの労働者からの情報を基に、労基署が立入調査を実施。
◆タイムカードの記録とメールの送信記録とのかい離や労働者からのヒアリング調査などから、タイムカード打刻後も作業が行われており、賃金不払残業の疑いが認められたため、労働時間の実態調査を行うよう指導。
企業が実施した解消策
◆会社は、メールの送信記録などを基に労働時間の実態調査を行った上で、不払となっていた割増賃金を支払った。
◆賃金不払残業の解消のために次の取組を実施した。
①代表者が「賃金不払残業撲滅」を宣言をするとともに、全店舗の店長に方針の説明を行った。
②賃金不払残業撲滅に係る社内ポスターを作成して掲示するとともに、タイムカードの適正打刻に関する研修用DVDを作成し、店長を通じて、全労働者に対する研修を行った。
③タイムカード打刻後の作業が行われていないか確認するため、店長が定期的に店舗内を巡回することとした。
事例2(業種:その他の事業)
賃金不払残業の状況
◆インターネット上の求人情報等の監視情報(※)を受けて、労基署が立入調査を実施。
◆会社は、自己申告(労働者が始業・終業時刻をパソコンに入力)により労働時間を管理していたが、自己申告の記録とパソコンのログ記録や入退室記録とのかい離が認められ、また、月末になると一定の時間を超えないよう残業を申告しない状況がうかがわれるなど、賃金不払残業の疑いが認められたため、労働時間の実態調査を行うよう指導。
※厚生労働省は、平成27年度から委託事業により、インターネット上の賃金不払残業などの書き込み等の情報を監視、収集する取組を実施している。労基署は、当該情報に基づき必要な調査等を行うこととしている。
企業が実施した解消策
◆会社は、パソコンのログ記録や入退室記録などを基に労働時間の実態調査を行った上で、不払となっていた割増賃金を支払った。
◆賃金不払残業の解消のために次の取組を実施した。
①会社幹部が出席する会議において、自己申告制の適正な運用について、実際に労働時間を管理する者に説明を行うとともに、当該管理者を通じて全労働者に周知した。
②自己申告とパソコンのログ記録のかい離を自動的に確認できる勤怠管理システムを新たに導入し、月2回、必要な補正を行うようにした。
③労務管理についての課題と改善策を話し合う労使委員会を年2回開催することとした。
事例3(業種:運送用機械等製造業)
賃金不払残業の状況
◆違法な長時間労働が行われているとの労働者からの情報を基に、労基署が立入調査を実施。
◆会社は、自己申告(労働者がパソコン上の勤怠管理システムへ入力)による労働時間管理を行っていたが、自己申告の記録と入退室記録とのかい離、労働者からのヒアリング調査などから、賃金不払残業の疑いが認められたため、労働時間の実態調査を行うよう指導。
企業が実施した解消策
◆会社は、入退室記録や労働者からのヒアリングなどを基に労働時間の実態調査を行った上で、不払となっていた割増賃金を支払った。
◆賃金不払残業の解消のために次の取組を実施した。
①全労働者に対し、適正に自己申告を行うことなどについて研修を実施した。
②自己申告の記録と入退室記録との間にかい離があった場合は、上司がその理由を確認する仕組みを導入した。
②労働時間の自己申告方法を含む労務管理について書かれた労働者向けのガイドブックについて、より分かりやすい内容に作成し直し、全労働者に周知した。
事例4(業種:建設工事業)
賃金不払残業の状況
◆賃金未払残業が行われているとの労働者からの情報を基に、労基署が立入調査を実施。
◆会社では、労働者が「残業申請書」を提出し、上司が承認することにより労働時間管理を行っていたが、「残業申請書」の提出をしていない労働者の時間外におけるメール送信記録などから、賃金不払残業の疑いが認められたため、労働時間の実態調査を行うよう指導。
企業が実施した解消策
◆会社は、メール送信記録や労働者からのヒアリングなどを基に労働時間の実態調査を行った上で、不払となっていた割増賃金を支払った。
◆賃金不払残業の解消のために次の取組を実施した。
①朝礼で、社長から、賃金不払残業を解消するための働き方改革の実行について決意表明を行った。
②総務部の担当者が定期的に巡回し、定時後に在社している労働者について、「残業申請書」の提出状況を確認した上で、残業申請なく、又は、申請された残業時間を超えて在社している場合は、ヒアリングを行い、上司に必要な指導を行うこととした。
③労使で構成するコンプライアンス委員会で、労働時間管理の改善状況を確認することとした。
【報道発表資料「監督指導による賃金不払残業の是正結果(平成29年度)」より|厚生労働省(2018年8月10日)
@人事では『人事がラクに成果を出せるお役立ち資料』を揃えています。
@人事では、会員限定のお役立ち資料を無料で公開しています。
特に人事の皆さんに好評な人気資料は下記の通りです。
下記のボタンをクリックすると、人事がラクに成果を出すための資料が無料で手に入ります。
今、人事の皆さんに
支持されているお役立ち資料
@人事は、「業務を改善・効率化する法人向けサービス紹介」を通じて日本の人事を応援しています。採用、勤怠管理、研修、社員教育、法務、経理、物品経理 etc…
人事のお仕事で何かお困りごとがあれば、ぜひ私達に応援させてください。

「何か業務改善サービスを導入したいけど、今どんなサービスがあるのだろう?」
「自分たちに一番合っているサービスを探したいけど、どうしたらいいんだろう?」
そんな方は、下記のボタンを
クリックしてみてください。
サービスの利用は無料です。
関連記事
-
プレスリリース国内・海外ヘッドライン
デジタル・インフォメーション・テクノロジー株式会社
中規模企業向けのセキュリティ商材に追加料金なしでサイバーセキュリティ保険を自動付帯する新サービスの提供開始
デジタル・インフォメーション・テクノロジー(東京・中央)は3月31日、サイバーセキュリティ対策の統合基盤「DIT Security Platform」の提供を開始した。「DIT S...
2025.04.01
-
プレスリリース国内・海外ヘッドライン
一般社団法人日本ビジネスメール協会
「ビジネスメール実態調査2025」を4月1日より開始。回答を広く募集
日本で唯一のビジネスメールに関する継続的な調査一般社団法人日本ビジネスメール協会は4月1日、「ビジネスメール実態調査2025」の回答受付を開始した。同協会よれば、この調査は、日本で...
2025.04.01
-
プレスリリース国内・海外ヘッドライン
株式会社ワサビ
国籍を問わず全スタッフのキャリア発展を支援する取り組みを強化。多様性を重視した人事評価制度を導入
ワサビ(大阪市)は2024年12月より人事評価制度を制定、導入を開始した。同社はグローバルな人材活用を積極的に推進しており、現在、従業員の約20%が外国籍。新制度は、日本語能力試験...
2025.03.26
あわせて読みたい
あわせて読みたい

人気の記事

国内・海外ヘッドライン

THE SELECTION
-
THE SELECTION特集
【特集】ChatGPT等の生成AIが一般化する社会で必須の人材戦略・人的資本経営の方法論
-
THE SELECTION企画
人事のキャリア【第25回】
皆がうらやむような会社づくりに取り組む(アイロボットジャパン・太田浩さん)
-
THE SELECTION企画
レポートまとめ
@人事主催セミナー「人事の学び舎」 人事・総務担当者が“今求める”ノウハウやナレッジを提供
-
THE SELECTION特集
「副業」新時代-企業の向き合い方 特集TOP
-
THE SELECTION特集
人事のキーパーソン2人が@人事読者の「組織改革」の疑問に答えます(第2弾)
数値化できない部署を無理に人事評価する方が問題。曽和利光×北野唯我対談
-
THE SELECTION特集
「令和時代に必須! ハラスメント対策最前線」
パワハラと指導の違いは? 6種類のパワハラを佐々木亮弁護士が徹底解説(中)