コラム

社員に選ばれる会社の人事制度・人材開発


派遣社員の「事業所単位の期間制限」延長のための5つのステップ

2018.08.21

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労働派遣法が2015年9月30日に改正されたことにより、派遣社員に関連して2018年9月30日から新たに2つの視点で期間制限の実効が発生することはご存知でしょうか?

1.事業所単位の期間制限:派遣社員の受け入れは事業所ごとに3年を上限とする。
2.個人単位の期間制限:同一の派遣社員が同一組織単位(課レベル)で継続して勤務する期間は3年を上限とする

以前取り上げたように、派遣社員をとりまく環境は変化しています。事業所単位で3年を超えて派遣社員を受け入れるためには、過半数労働組合あるいは過半数代表からの意見徴収を行う必要があります。今回は、意見聴取およびそれに関連する流れについて紹介したいと思います。

参考:9月30日以降の無許可派遣受け入れ事業者は労働局から指導・公表対象に

1.事業所単位の再確認

最初に取り掛かることは、「事業所単位の再確認」となります。事業所とは「雇用保険の適用事業所」を指すので、その事業所単位に抵触日(期間制限に抵触することになる最初の日)が定まります。

会社に複数の事業所(支社・支店など)が存在する場合、その事業所毎に抵触日が異なっている可能性があることに留意しましょう。

2.意見聴取先の特定

労働者の過半数で組織する労働組合がある場合は、労働組合(以下、過半数労働組合)が意見聴取先になります。もし、過半数労働組合がない場合は、「過半数代表」を選定する必要があります。過半数代表は、以下の2つを満たしていることが要件となります。

・労働基準法第41条第2号に規定する監督または管理の地位にある者ではないこと(=非管理職者)
・「派遣可能期間の延長に係る意見を聴取される者を選出する目的」を明らかにした上で実施される、投票や挙手などの方法により選出された者であること

過半数労働組合が無い会社の場合、36協定の締結や就業規則改定などの承諾を得るために「従業員代表」を既に選定しているケースがあります。

結果として従業員代表が過半数代表と同一人物になることは問題ありませんが、「従業員代表なので、意見聴取も対応してもらう」ということは認められておりません。必ず、「派遣可能期間の延長に係る意見の聴取」のための選出をすることになります。

3.データの準備

過半数代表の選定とあわせて、意見聴取の際に使用する派遣法改正(2015年9月30日)以降の「派遣社員数と正社員数の推移」データを、事業所毎に準備します。

意見聴取の際、過半数労働組合/過半数代表が「常用雇用労働者の代替が起こっていないか」などの視点で判断・回答をするための材料とするのが目的です。

記載事項や書式については、法律で詳細まで定められていないので、その事業所での最初の派遣受け入れ(期間制限の起算)から3カ月、半年、1年など一定の期間ごとに区切り、その時点での派遣社員数と正社員数を集計して表などにまとめれば良いでしょう。

このようなデータ集計はすぐにできるように、普段から人事情報はデータベースにまとめていることが戦略人事の基盤と言えます。そのためには、近年多くのサービスがリリースされているHR Techサービスを活用していくことになるでしょう。

4.意見聴取

意見聴取は事業所ごとに、「書面」で行うことになります。(法律上、そのように定められている。)

必要事項を書面(「通知書」)に記載して通知し、過半数代表者が十分に考慮するための期間を設けた上で、意見の提出(「意見書」)を得ることになります。過半数代表者の意見の提出に期限をつけることは可能です。

また、期限までに意見がない場合には意見がないものとみなす旨を事前に通知しておけば、そのような取り扱いもできます。もちろん、考慮期間は十分に設けることが肝要です。

意見を聴いた過半数代表者が、派遣可能期間延長の方針に対して異議(例:延長そのものに反対、延長期間を短くすべき、受入派遣労働者数を減らすことを条件に賛成など)を表明した場合には、抵触日前日までに、過半数労働組合または過半数代表者に対して、会社側は以下のようなことを書面(「説明書」)にて回答することになります。

・延長しようとする期間およびその理由
・異議への対応方針

異議があった場合、派遣可能期間の延長ができなくなるわけではありませんが、過半数代表者の意見は十分に尊重し、丁寧な説明を行うことが会社の対応として求められます。

また、意見聴取は期間制限に達する1ヶ月前までに行う必要があるので、過半数代表の選定やデータの準備は計画的に行いましょう。

5.意見聴取後の対応事項

過半数労働組合あるいは過半数代表者からの意見聴取が完了した後にやるべきことは大きく分けて2つあります。

①派遣会社への通知

新たな派遣可能期間(抵触日)を書面に記載し、速やかに派遣元(派遣会社)に通知します。派遣会社によっては、独自のフォーマットを用意して、そこに記載・返送を求められることもあるでしょう。

派遣元(派遣会社)は、抵触日の延長通知を受けずに(延長前の)抵触日以降の期間について派遣契約を締結することはできません。

②事業所内への告知

以下の内容を事業所内に通知します。これは、通常使用している社内イントラネットなど、社員なら誰もがアクセスできるところに掲示しておけば問題ありません。

・意見を聴いた過半数労働組合の名称または過半数代表者の氏名
・過半数労働組合(過半数代表者)に書面通知した日および通知した事項
・意見を聴いた日および意見の内容
・意見を聴いて延長する期間を変更したときはその変更した期間

また、この内容が網羅されていれば「通知書」「意見書」「説明書」を周知・保存すれば支障はなく、周知のための新たな文書作成は不要です。

最終的には、派遣社員の直接雇用を視野に

今回の法改正の目的は、「派遣社員はあくまでも一時的な業務支援であり、長期間同じ業務が発生するならば直接雇用するように促す仕組みの形成」だと言えるでしょう。

事業所単位での期間制限の延長については、以上で完了となります。個人単位の期間制限への対応方法や留意点については、次回取り上げたいと思います。

執筆者紹介

永見昌彦(ながみ・まさひこ) アルドーニ株式会社代表取締役。外資系コンサルティングファームなどで人事コンサルタントとして勤務した後、事業会社(ラグジュアリーブランド持株会社)で人事企画担当マネージャーとして人材開発・人事システム・人事企画を兼務。事業会社、コンサルティングファームの両面から人事に20年たずさわった経験を活かして、2016年にフリーランス人事プランナー・コンサルタントとして独立。2018年に法人化。現在、人事全般のプランニング・コンサルティング・実務にたずさわっている。

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