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「これからのCHROについて」イベントレポート


“欲しいのは人事部長じゃない” 時代に求められる『これからのCHRO』を語る

2018.08.31

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2018年6月27日、次世代CHRO(最高人事責任者)が集まるCHRO STUDY COMMUNITY主催のイベント「これからのCHROについて」が開催された。イベントでは、人事担当者ら参加者中心のミニワークショップやトークショーなども開催されたが、このイベントのハイライトになった、次世代CHROを名乗るにふさわしい登壇者たちが繰り広げたパネルディスカッションの様子をレポートする。従来の人事の限界、そして経営者が欲しがるこれからのCHROの在り方と、CHROになるために身に付けるべき知識や経験とは? 彼らの考えがこれからCHROを目指す人事担当者、そしてこれからCHROを雇いたいと考えている経営者への良い気付きとヒントになれば幸いである。

【主催者紹介】

チカイケ 秀夫(ファシリテーター)
korekarachro_p1_180807「すべての人にスタートアップを」をミッションに、GMOグループ上場企業での企業理念策定/社内新党に参画。2008年よりGMOグループにてベンチャー企業の立ち上げと、全グループ5,000人に関わるプロジェクトのリーダーとして、グループ内ブランディングを経験。現在は、ブランディングを通して、スタートアップ/ベンチャー企業に特化した支援事業を展開。また、支援事業の一環として組織の課題解決に取り組むべく、組織・人事をテーマとするCHROの勉強会CHRO STUDY COMMUNITYを主催する。PERSONAL VENTURE CAPITAL代表。

【登壇者紹介】

橋本 祐造
korekarachro_p4_1808071978年生まれ。2002年に早稲田大学卒業後、NHKに入局。営業職として約3年間従事。その後、人材コンサルティング会社を経て、GMOインターネット株式会社にてグループ人事部として活躍。以来、いくつかの会社で人材採用の戦略や方針、実行および人材育成プログラムの策定に携わる。現在は、ユニファ株式会社の人事責任者として従事。

鴛海(おしうみ) 敬子
korekarachro_p3_180807大手アミューズメント会社にて人事採用業務に従事。採用戦略立案から実行まで担当し、年間70名近くの新卒一括採用を成功へ導く。その後、株式会社メイプルシステムズへ CHROとしてジョインし、採用ブランディングから組織作りまで幅広く従事。一般的な採用の枠にとらわれない新しい手法で採用実績を残す。

坪井 一樹
korekarachro_p5_180807組織人事コンサルティング会社勤務を経て、グルーポン・ジャパンに経営企画室として入社。以来、事業会社での組織変革に携わり、30名のチームマネジメントを経験。現在はIT企業にて「人材と組織のパフォーマンスの最大化によって事業成長に貢献する」をミッションにマーケティング事業のHR責任者を務める。

織田 晃弘
korekarachro_p2_180807サイバーエージェントでナレッジマネジメントに取り組み、社内の知識・情報資産の活用と基盤化を推進する一方、技術ブランディングの確立を目的とした技術広報を立ち上げる。現在は富士通クラウドテクノロジーズ株式会社にてエンジニアリング組織のマネジメントおよび文化形成、環境整備、エンジニアキャリアの形成などに従事。

経営者が求めるCHROに必須の「経営目線」を養うには

―そもそもCHRO(最高人事責任者)は経営者と同じ目線に立つことが求められると思いますが、どうしたら「CHROとしての経営目線」を持つことができるのでしょうか。

橋本:私はCHROには起業した経験が必要と考えています。毎月決まった給料が入ってこない、自分の体調に何かがあったら終わり、何をしたら結果が出るのかわからない、といった誰にも相談できない経営者ならではの孤独感、そういった感覚がわかるからこそ経営者の人生相談にまで踏み込める、本質的な意味で経営に寄り添ったCHROになれるのではないかと思います。また、過去に会社の業績低迷の都合で社員をリストラした経験があるのですが、当時は本当に苦しく、人を雇う責任を真剣に考える良い機会になったので、CHROを志す方は経験しておいた方が良いかもしれません。

坪井:私は起業経験者でも経営者でもないので、橋本さんのように経験から理解することはできません。だからこそ、経営層が何を感じているか、考えているかをまず理解しようとする姿勢がやはり大切だと感じています。相手になりきることはできなくても、可能な限り理解しようと努めることがCHROにとって大事なスタンスではないでしょうか。

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鴛海:私もCHROになってからの半年間、本当にたくさんの時間を社長と過ごしました。自分自身、経営の経験も全くない中で、CHROになる前と後では経営に対する理解度が大きく変わったと実感しております。人事担当者からCHROになっていくのであれば、まずは経営者の想いや考えをしっかり共有し、その上で自分の考えを持って二人三脚で業務を遂行することです。それがイコールCHROの育成の時間になるのかなと思います。

織田:私はCHROを、社員にも経営にも寄りすぎない非常に中間的で最も苦しいポジションだと考えていますが、そこに経営者としての経験が必要かはわかりません。ただ、自分の決断なり、行動なりが事業業績に直結する経験を有しているかどうかで、「怖い」という感覚を持てるかどうかが変わってくると思います。そういう意味で、小さなプロジェクトでも構わないので、1つの事業責任者を務めてみるとか、重たい責任を持って判断や決断を下す経験は必要かなと思いますね。

もしもあらためてCHROになるなら最初に着手することは

―経営者の中には「人事部長じゃなくてCHROが欲しい」と言う方がいます。そう考えると、人事のキャリアを積み上げた先が必ずしもCHROではないのかもしれません。そこで今回は、現職を一切考慮せず、新しくどこかの企業に参画してCHROを目指すとしたら、皆さんが最初に着手することをお聞かせください。

織田:私は企業の文化形成から着手すると思います。経営層は40~50歳代が多く、10年もすれば引退します。ですから会社の中心となる次の文化を現役の若手に作らせて、それがいまの経営者の想いと齟齬がないかを私が間に入って調整し、さらにそれをスライドさせて時代時代にあった文化にしていきましょう、という活動をします。そうすると私が会社の文化を握ることになりますから、最終的にはCHROとしての人の育成や人を率いるというところにつながっていくのではないかと思います。

坪井:私は、経営者の方と自分自身のミッションが何か、どんな役割・業務が求められているのかをまず話し合います。人事のスペシャリストを求めているのであれば、私は人事畑が専門ではないので、そもそも引き受けないかもしれません。一方で、HR×事業の経験はあるので、事業と結びついた人事課題への施策企画であれば貢献できると思います。経営者とその認識が合っていることは非常に重要だと考えていますので、最初に着手すると思います。

鴛海:私が入社したら、まず会社の文化を知るために、全社員に会ってどんな人がどんな想いで入社して、どんなやりがいを持って働いているのかを全部把握します。そして、この会社の「人」に関する部分は鴛海に尋ねればわかる、困ったら相談できる、というような社員にとってのお母さん的ポジションを早めに奪います(笑)。まず社員を味方につけて、それから社長とコミュニケーションをとっていくことで、社員と社長の結節点になれるのではと考えます。

橋本:私は、社長とまず面談をして「事業や組織を通じて誰を笑顔にしたいのか」を必ず聞きます。また、経営をグローバルに拡大していくのか国内で完結するのかで組織の作り方も大きく変わってくるので、「どういう世界を見たいですか」も併せて聞きます。それによって、「どういう組織ならそれを実現できそうか」を社長と最初に握ってしまいますね。経営者の想いや覚悟を理解して、それならば自分も覚悟を決めて採用や人事活動を行うので、厳しいことを言う場合もあるかもしれませんが、共に覚悟を持って乗り越えていきましょうよ、と。

経営者と社員をつなぐCHROとして意識していること

―先ほど、CHROは経営と社員をつなぐ結節点という話もありましたが、日ごろ経営と社員をつなぐ上で意識していること・心掛けていることがあれば教えてください。

坪井:社員と経営をつなぐ立場として社員と面談をする際には、最初に2つのガイドラインをお伝えするようにしています。1つは「ウェルカムニューアイディア」といって、経営層は皆さんのアイデアや感じていること・考えていることを踏まえた組織作りをしたいと考えているから、率直な意見を伝えてほしいということ。もう1つは「ノットオープン・ノットシェア」といって、直属の上司にはお伝えしないので、ポジ・ネガ含めて本音を教えてくださいということです。加えて、面談の終わり方も大切にしています。例えば、ネガティブな話で終わった際は、そのままでは社員がモヤモヤしてしまうので、じゃあ次はどんなアクションをとれたら良いか、という話で終えるように意識しています。

橋本:私は逆に出てきた意見は直属の上司にストレートに言うようにしています。そもそも部下が本音を言えない上司ってどうなんだろうと思っていて、部下から上には言わないでほしいと言われたら、逆に「上司と何かあるんですか」と本質を尋ねると、2人の関係性が見えてきます。また、本音を言う方が社員にとって得がありますよという状態を作るために、面談で出た社員からの要望や期待は、原則3営業日以内に解決すると決めています。私は別に要望を聞く係ではないですが、あなたと同じか、それ以上にあなたの人生を考えますよというスタンスでいると、社員は本音を言ってくれるし、会社も変わっていくような気がします。

鴛海:私は社長と非常に仲が良いので、社長になんでも筒抜けになってしまうのではないかと社員から思われることがやはりあります。ですから、社員と面談する際には「これは社長に伝えるのか。それとも私でとどめて解決したいのか」をきちんと確認して精査するようにしています。

織田:私はヒアリングに工夫をしていて、「何か課題はありますか」「困ったことありますか」という尋ね方ではなく、最初から、「課題ありますよね? 私はここが悪いと思っていますが、あなたはどう思いますか?」という尋ね方をします。その時点でネガティブ要素を言ってもマイナス評価を受けないという保障ラインを引いて、さらに改善行動として返していくと、社員から本音がばんばん出るようになると感じています。

人事の限界と、これからのCHRO

―最後に、橋本さんは十数年人事を経験して、人事の機能だけでは世界を変えられないという限界を感じたそうですが、皆さんはこれからのCHROの在り方はどのようなものになっていくと考えますか。

橋本:働きやすい会社・働き甲斐のある会社を作るためには、総務が働きやすい環境面を整備して社員の心理的安全を確保する、広報がその取り組みを踏まえて「良い会社だよ」と社内外に伝えていって社員の心理的安心を担保する、そしてそれを見て応募してきた人を人事がきっちり採用しフォローし評価してつなげていく。私は、この人事と総務と広報を掛け合わせた「ハイブリット型」が新しいCHROのかたちになるのではないかと考えています。

鴛海:私自身も現在の会社が小さい組織ということもあって、同じように人事の仕事だけをしていくことに限界を感じていますし、実際に営業も広報もやっています。人事担当者の方は人事としてスキルを磨いていくのももちろん大切ですが、自分の視野を広げてできる幅を増やしていけば、市場価値が高まるのではないかと思います。

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坪井:私も現在HRとPR両方の視点で事業に関わらせていただく中で、この2つの領域は非常に近づいているのではないかと感じています。HRでいう組織の活性化や理念の浸透は、PRの世界ではインナーブランディングと表現されることとか、目的もほぼ一緒で施策も被るところが多いですよね。なので、今後はHR×PRを通じて事業の強みを作っていくところに関われたら面白いなと考えています。

織田:私も人事と広報は密接な関係にあると思っています。見栄えが悪ければ人はそこに見向きもしないし定着もしないでしょう。それに加えて、私はマーケティングが絶対に外せないものだと考えています。どういう領域に対して自分たちは何者であって、そこに対してどういうアピールの仕方をしてどんな人に来てもらうかをしっかりと連携します。そして、その人がパートナーになるのかお客になるのか社員になるのかはわかりませんが、どこに転がってもプラスに働くならば良し、と考えながら動いています。

―四者四様の貴重な考えをお聞かせいただき、ありがとうございました。

本イベントでは、経営者が求めるこれからのCHRO像や、人事担当者がこれからCHROを目指す上で求められる経験や考え方が披露され、まさに「これからのCHRO」というタイトルにふさわしいイベントであった。また、抽象的なテーマのみならず、登壇者らが日々実践している面談スキルや人事としての心構えなど、具体的なノウハウについても踏み込んで紹介がなされた。人事担当者の皆様の明日からの糧として、少しでもヒントになればと願ってやまない。

(敬称略)

イベント概要

「これからのCHRO」
会場:富士通クラウドテクノロジーズ株式会社オフィス
開催日時:2018年6月27日19:30-21:30
主催:CHRO STUDY COMMUNITY
参加者:人事担当者、経営者など約30名

【編集部より】
「CHRO」に関する記事はこちら。

      特集:企業ブランドと人材戦略のカギを握るCHRO(最高人事責任者)

執筆者紹介

野澤 麿友子(のざわ・まゆこ)(株式会社スキマタイズ) 本職はIT企業人事。新卒で入社したメーカーで経営企画業務に携わる中、「従業員の幸せ」と「会社の発展」を両立できないことに疑問を持ち、それを実現できる人事になることを決意して転職。将来の夢はCHRO。人の理念や情熱などの漠然とした想いを、言語化することが好き。

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