コラム

林修三先生のなるほど人事講座


2級FP技能士を独学で合格 実務担当者が業務に生かすための学習法とは

2018.08.07

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私事ですが、去る5月末に2級FP技能士試験を受験いたしまして、首尾良く合格することができました。

実は以前の記事(人事担当者がぜひ取得しておきたい資格(対従業員編))を執筆していた際、皆様におススメする以上は自分自身も取得を目指さねばということで、密かに学習を進めていた次第です。

ただ、学習を進めるにあたり、ネット上で公開されている様々な合格体験記に目を通したのですが、ほとんどが「合格ライン(6割)をクリアする」ためだけの方法論に留まっていて、合格後を見据えた知識の獲得・定着を果たすための学習法について語られていたものは残念ながら見られませんでした。

そこで、今回は筆者自身の体験をベースに、実務担当者としてレベルアップするための学習法をご紹介します。

目次
  1. FP(ファイナンシャルプランナー)資格取得への基本方針
  2. まずはテキストを使って徹底的にインプット
  3. 問題集では徹底的にアウトプット訓練
  4. 仕上げに模擬試験・過去問でタイムトライアル
  5. 3級FP試験の結果
  6. 2級受験に向けて
  7. 2級FP試験の結果
  8. 2級FPを取得してみて
  9. 参考付録その1:受験会場の様子
  10. 参考付録その2:2級FP取得に費やした期間と金額(概算)
  11. 参考付録その3:参考書

FP(ファイナンシャルプランナー)資格取得への基本方針

・独学が大前提(主に家計面での事情によります)
・2級受験資格を得るための研修は受講せず、まずは3級に合格することで2級受験資格を得る
・資格取得自体が目的ではなく、あくまで知識の獲得・定着が目的

まずはテキストを使って徹底的にインプット

独学前提のため、何はともあれ市販の3級テキストと問題集を1冊ずつ購入しました。多くの種類があるのでかなり悩んだのですが、今となっては、3級受験であればどの本を買っても大差はなかったかと思います。

さて、ポイントはここからです。

ネット上の合格体験記では、「最初にテキストをさらっと通読する → あとはひたすら問題集を解いてポイントを記憶していく」というのが黄金パターンとされているのですが、それでは試験合格後に立ちどころに知識が失われていくと考え、まずは徹底的に生きた知識を体系的にインプットしていくことを目指しました

体系的な知識を得るために、不明点を徹底的に調べる

実際に工夫した点は以下の2つです。

(1)学習時にはPCの前に座り、テキストを読み進めつつ、少しでも気になった部分は即検索して調べ尽くす
(2)学習していく個々の制度や法規定などについて、その制定趣旨や全体体系への理解ができるまでは先に進まない

(1)(2)とも試験合格だけを目指す場合には不要な学習法だと思いますが、今回の目的は知識の獲得・定着ですので、ここにこだわりました。

例えば土地の評価額を例にすると、合格を目指すだけであれば、公示価格・固定資産評価額・路線価・基準地価格の4種類があるということと、その各々の特徴を覚えれば十分なのですが、ここからさらに

「そもそもなぜ4種類も価格があるのか」「なぜその算出方法が取られているのか」「例えば自宅や会社近辺の評価額やその推移はどうなっているのか」「仮に自分が○○の土地を買った場合、評価額はいくらになるのか」

などなど、調べれば調べるほど疑問が湧いてくるようになり、それら全てを自分なりに調べて腑に落としてから、ようやく次の単元の学習に進むというやり方を取りました。

ちなみに、3級FP試験はかなり基礎的な内容のため、テキストの記載もそれに合わせて最低限の情報しかなく、正直テキストを読むだけでは上記のような疑問を払拭することはできません。そのため、PCの前で学習し、不明点をすぐに解消できるような態勢にしておくことが大切でした。

このような学習の仕方だったため、テキストの進捗が1時間で3,4ページという日もあり(テキスト全体はおよそ400ページ)、最終的にテキスト1冊の学習を一通り終えるまでに2ヶ月を費やしました。

問題集では徹底的にアウトプット訓練

長い長いテキスト学習を終え、ようやく問題集に取り組んでいきます。基本的には○×式あるいは三者択一式の問題ですので、正解ならそれでよし、不正解ならテキストの該当部分を再読み込み、という学習法で十分な場面です。

しかし、今回の目標はあくまでも合格後を見据えた知識の獲得・定着ですので、単に回答が当たったか外れたかということよりも、問題文のテーマ部分に関してある程度語れるようにするというやり方をとりました。

例えば遺族厚生年金の中高齢寡婦加算に関する問題を解く際であれば、「中高齢寡婦加算は遺族基礎年金を受給できない人を救済する措置で(中略)遺族基礎年金をもらっていた人でも子が18歳になると(以下略)」といったことを、誰もいない空間に向かって語りつつ、「ということで、この問題は○(×)」と最後に締めるような感じです。

人に見られると怪訝な表情をされそうな学習法ですが(笑)、このようなアウトプットを繰り返すことで脳内の記憶回路の構築が進んでいきますので、遠回りなようでも確実に知識を定着させていくことが可能になります。

この手法の問題点は、テキスト学習時と同じく「時間がかかる」という点です。スケジュールに余裕をもって対応していくことが必要となります。

仕上げに模擬試験・過去問でタイムトライアル

ある程度知識が身についたと思えた段階で、最後の仕上げとして模擬試験本を購入しての試験本番シミュレーションを行います。実は日本FP協会のサイトで過去問と解答は公開されているのですが、解答に対する解説まではなされていないため、それらが付随する模擬試験本のほうが望ましいでしょう。

実際に模擬試験(計3回分)を解いてみると、まず所要時間に関して言うと、学科では120分設定に対しておおよそ30~40分実技では90分設定に対しておおよそ40~50分で解答しきれることがわかりました。

試験の特性上、わからない問題をその場でどれだけ考えても無駄ですので、時間配分に関しては自分のやり方で問題ないとわかりました。

ただ、正答率に関して言うと、3回分全てで合格ラインすれすれの点数しかとれませんでした。

あれだけ勉強したのに……と正直ショックだったのですが、不正解問題の見直しを進めていくと、ほとんどがボーンヘッド(「不適切なものを選べ」に対して適切なものを選ぼうとしていた、問題文中の細かな前提条件を見落としていた、など)によるものだと判明したため、回答時には「適切(不適切)なものを選べ」という部分を丸で囲んで間違えないようにしたり、時間はかかっても問題文を隅から隅まで熟読するなどの対策をとりました。

試験テクニック的な対策はこのくらいで十分かと思います。(但し合格のためには大変重要な対策です)

3級FP試験の結果

結果、こうなりました。

林修三氏の3級FP試験の結果

実技が100点満点だったことはもちろん嬉しいのですが、個人的には学科で1割も不正解だったというのが痛恨なくらいです。

2級受験に向けて

無事3級を合格しましたので、晴れて2級への受験資格を得ることができました。ここからさらに2級受験に向けて動いていきます。やはり独学で進めていきますので、3級の時と同じように市販のテキストと問題集を1冊ずつ購入しました。

ここで、3級受験時に前述のような学習をしたことが大いに活きてきます。

最初は3級受験時と同じように2級の勉強をしようと考えていたのですが、テキストに目を通していくうちに、「わかる、わかるぞ!(某赤いキャラクター風)」という状態になっていました。

確かに3級に比べると要求される理解度や知識量が段違いに多いのですが、なんと3級学習時よりも短期間でテキストの学習を終えることができました。

実はFPの2級と3級の試験範囲は同一で、問題の難易度に差がついているだけなんですね。そのため、3級の試験勉強時に相当深く制度や法規定を学んでいったことで、気付かぬうちに実質2級のレベルに到達していたものと考えられます。

業務繁忙の都合もあり、実際のところ2級試験のための学習にはあまり多くの時間を割けないという状況でしたので、もし3級受験時に3級合格レベルの学習しかしていなかったとしたら、この段階で新たに覚えたり理解すべき情報量の多さに心が折れていたかもしれません。

その後の問題集、模擬試験への取り組みについては、3級受験時とほぼ同じ方法の学習を行っています。必要な試験テクニックも3級と同様でしたので、あまり時間をかけずに一通り終えることができました。

2級FP試験の結果

結果、こうなりました。

林修三氏の2級FP試験の結果

満点とはいかなかったものの、ほぼ9割の得点率で合格することができました。

高得点で合格できた秘訣は、ひとえに3級受験時に各制度の制定趣旨や全体体系への理解を進めたことだと断言できます。2級レベルの試験ですと、どれだけ頑張って学習しても、本番の問題文に自分の知らない枝葉レベルの話が出てくることは避けられません。

しかし、幹になっている各種制度・法規定の趣旨や体系から考えていけば、正解にはなり得ない選択肢というものが見えてくるようになり、四者択一の問題を実質二者択一にまで絞り込めます。

やはり基礎をしっかり身に付けるということが、王道なのだと思います。

2級FPを取得してみて

筆者の業務においては、2級FPを持っていなければ携われないというものは特にはないため、現段階では名刺の肩書が一行増えたというだけに過ぎません。

しかし、仮に今の知識レベルのままかつての人事担当時代に戻れたとすると、その立場でもっと多くの企画立案や業務改善ができたかもしれないと考えています。

例えば、確定拠出型年金の導入検討、従業員向けマネープラン研修の企画・実施、住宅取得や相続関連情報を社内報に掲載、などなど。これらはFPという肩書があるから出来るというわけではなく、FPを取得する過程で習得した体系的な知識や見識によって行えるものです。

独立を考えている場合はともかくとして、企業内の実務担当者としてレベルアップしていくためには肩書よりも知識・見識のほうが重要ですので、FPに限らず何らかの資格取得を目指される際は、取得後を見据えた学習をなさって頂きたいと思いますし、当記事がそのための参考になれば幸いです。

参考付録その1:受験会場の様子

2級・3級とも、筆者が受験した会場は仙台市内の某大学キャンパスでした。

3級の時は基礎的な内容の試験だということもあり、大学生と思しき若い方が非常に多くいて、40過ぎの筆者にとってはアウェイ感全開な中での受験となりました。

2級の時は3級とは打って変わって室内の平均年齢がグッと上がっていたように思います。

これはおそらく生保・損保に携わっている方々の受験が多いためだと思われますが、自分よりも年上と思われる方々が必死に試験に取り組んでいる様子を見て、身が引き締まると同時に、向上心を持ち続けなければいけないなと改めて思える良い刺激を得ることができました。

参考付録その2:2級FP取得に費やした期間と金額(概算)

期間(平日夜に平均1~1.5時間程度学習するという前提)

3級テキスト学習……約2ヶ月、問題集……約3週間、模擬試験……約1週間、合計……約3ヶ月
2級テキスト学習……約1ヶ月半、問題集……約2週間、模擬試験……約1週間、合計……約2ヶ月

費用

3級学習用書籍……約5千円、受験料……6千円、合計……約1万1千円(別途会場への交通費)
2級学習用書籍……約6千円、受験料……8千7百円、合計……約1万4千7百円(別途会場への交通費)

参考付録その3:参考書

3級

テキスト……ナツメ社『一発合格!FP技能士3級完全攻略テキスト
問題集……ナツメ社『史上最強のFP3級問題集
模擬試験……TAC社『2018年1月試験をあてる TAC直前予想 FP技能士3級

2級

テキスト……ナツメ社『史上最強のFP2級AFPテキスト
問題集……ナツメ社『史上最強のFP2級AFP問題集
模擬試験……TAC社『2018年5月試験をあてる TAC直前予想 FP技能士2級・AFP

執筆者紹介

林修三(はやし・しゅうぞう)(株式会社ヒュームコンサルティング代表取締役) 1975年生まれ。仙台市在住。東北大学法学部を卒業後、大手自動車部品メーカーの経営企画職~IT企業の人事・採用職を経て現職。現在は東北地方の複数の大学でキャリア系科目講師として学生の就職指導に努めるほか、人事・採用コンサルタントとしても活動中。

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