HLC定例会「戦略人事を考える」
ソフトバンク源田氏が実践する「採用術」と「人材の見極め方」とは
2018.08.01
2018年7月12日、会員制人事コミュニティー・HLC定例会「戦略人事を考える」が開催された。ソフトバンク株式会社の採用・人材開発統括部長、源田泰之氏が登壇し、革新的な人事制度を導入し、採用活動にも力を入れている同社のノウハウを余すことなく共有。
株式会社サイバーエージェント取締役で、人事統括の曽山哲人氏がファシリテーターを務め、新規事業の育て方や採用に活かせるインターンについてディスカッションを展開した。
新規事業に必要な人材を起用するには
源田氏:
「今の若い人の就業意識が変わりつつあり、社会的に意義のある仕事を望む人が非常に多いです。そういった点では、いざという時のライフラインになる携帯電話事業は受けの良い仕事だと言えます。
とはいえ、経営面では既存事業にだけ力を入れるわけにはいきませんので、新規事業への人材シフトを進めています」
ソフトバンクでは、希望する部署に自ら手を挙げて異動できるフリーエージェント制度を年に1回行い、新規事業に特化したジョブポスティング制度を年に4回実施している。
源田氏:
「受け入れ側の上長が面接や評価により選抜します。ポイントは、異動元の部署、つまり異動によって人員が減った部署に対する人員補充は基本的にしないこと。
そうすると、自然と新規事業に人材が集まっていき、新規事業活性化につながります。異動元の部署は業務効率化を推進し回していく方針です」
新卒採用は初回のセグメントとインターンがカギ
源田氏:
「これまで新卒採用活動では、大きな就活イベントで母集団を集めてから選考していたのですが、このやり方だと3万人近くのエントリーが来るので、最初の選考だけでもかなりのコストと時間がかかっていました。
それなら、ソフトバンクにマッチする学生に会社側からアプローチした方が効率的だと考え、大きな就活イベントで大量の母集団を集めることを辞め会社から学生1人1人にアプローチする施策に注力しました。
その結果、人的コストを7割削減できましたし、母集団の量も1割しか減りませんでした。また、最初からマッチ度を高めたことで、選考効率も一気に上げらました。内定辞退率も下がっていて、いいこと尽くめですね」
曽山氏:
「インターンにも力を入れていらっしゃいますよね」
源田氏:
「はい。夏季インターンでは4500人の応募があり、そこから選抜した400名を受け入れ、全員に業務用スマートフォンや名刺、社員証を配って、社員と全く同じ環境で、丸々1ヶ月就業してもらいます。
早期から就活をスタートしているうえに2週間~1ヶ月間をインターンにコミットしたいと考えている学生なので、かなり優秀ですね。昨年度はインターン参加者のうち約3分の1が入社しました」
ソフトバンクは、インターン参加者のインターン期間中の部門評価を重視しており、新卒採用選考に参加する際の、基準にも加えている。
源田氏:
「また、一般的に新卒は3年で3割が辞めると言われていますが、ソフトバンクのインターン経由で入社した新卒はハイパフォーマーが多く、離職率も低いです。納得して入社する割合が高いんですね。
インターン生からの採用を増やせば増やすほど、その後の新卒採用にかける工数が減り、より精度の高い採用活動に注力できます。
ソフトバンクというと携帯電話事業のイメージが強く、ディープラーニングなどの最先端の技術者を求めていることを知らない人が多いので、そういった技術者層には自分たちが研究室などに出向いてアプローチしなければ採用できません。
通常の採用を効率化することで、採用しにくい層へのアプローチに時間をかけられるのです」
インターンで会社への興味関心を喚起、プロモーション効果も
ソフトバンクの社名をなるべく目立たせずに募集した地方創生インターン「TURE-TECH(つれてく)」からも、多くの優秀な学生を採用することに成功した。地方創生に興味関心がある学生は多く、約1450名が集まり、そこから上位60名(初年度は1地域開催のため30名)を選抜した。
源田氏:
「実際に地方が抱えている課題解決を目指すプログラムで、市の予算も確保したうえで実施します。まずチームごとに課題に対する仮説を立ててもらってから、現地に赴いてその仮説が正しいかどうかを検証していきます。
大体の仮説が外れていて木っ端みじんに砕け散るんですが、最終日は市長にプレゼンしなければなりません。そこからチームごとに必死で課題解決策を練り直し、市長に提案するという流れです。本当に導入された案もあります」
初回の「TURE-TECH」では、参加した30名のうちソフトバンクに興味があった学生はたった1人だった。しかし同インターンを経て、半数の15人が入社。
源田氏:
「インターン期間は1週間ですが、濃密な時間を過ごすなかでソフトバンクへの興味関心も深まりますし、ソフトバンク社員も同席するので社員のパーソナリティも把握できます。
社会に出て働いた経験がない学生は「どんな人と働くのか」を気にしていて、1週間ソフトバンク社員と過ごすことで親近感を抱いてくれるんですね。
さらに、高い倍率をくぐりぬけた優秀な学生たちなので、SNSでの拡散力もあり、結果的にインターンのプロモーション効果も高かったです。そのおかげでソフトバンクのブランドイメージが上がり、学生間の人気が高まりました」
入社後に活躍する人材の見極め方
ソフトバンクが活躍している優秀人材のデータ分析をした結果、高校時代に運動系の部活に所属し、実績(県大会以上出場)およびリーダー経験(部長、副部長等)がある人材が活躍していることがわかった。
曽山氏:
「これはとても興味深いデータですね」
源田氏:
「はい。意外にも、直近の大学時代の経験は関係ないんですよね。あと、活躍している営業幹部が面接で『営業に向いている』と判断した学生が営業職に就いた場合は、予想通り活躍しています。
しかし不思議なことに、データ分析ではこれといった傾向が見つからないんです。数値データだけに頼らず、配属部署の優秀社員が評価した人材を採用するのも重要でしょう」
また、ソフトバンクではオリジナルの「ビジネス統計検定」を導入している。「ビジネス統計検定」のスコアと活躍度には強い相関がみられ、統計の知識を持つ人材は活躍する傾向があるという。
源田氏:
「社員教育の一環として、統計の勉強を組み込んだが良いと思います。物事の意思決定をする時に、過去の経験に基づいて主観的に判断する人よりも、数字データなどをベースにして客観的に判断できる人がいい成果を生み出すのではないでしょうか」
ソフトバンクは、既存の形にとらわれない画期的な人事戦略で成長し続けている。今までのルールに縛られず、本来の目的を達成するための新しい人事に挑戦してはいかがだろうか。
【編集部より】HLCに関するリンクはこちら。
ソフトバンク源田氏へのインタビュー記事はこちら。
執筆者紹介
萩原かおり(はぎわら・かおり) フリーランスのライター・編集者。美容と心理が専門で、婚活パーティーの取材人数は200人を超える。三度の飯と執筆が同じくらい好き。求人・化粧品・社史制作を経て独立。現在は執筆業を中心に、取材記事から広告・LP・メルマガ作成まで幅広く活動中。休日はエステとジムに通い詰める美容オタク。 https://note.mu/hagitaro1010
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