コラム

効果的な研修のための処方箋


OJTの質を驚くほど高める手法とは?

2016.01.04

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目次
  1. はじめに
  2. よく見られるOJT手法
  3. 経験学習モデルの考え方
  4. 経験学習モデルの実施のための留意点

はじめに

前稿では、座学・研修などのOff-JTと職場で実際に仕事を学ぶOJTを上手く連動させることが、研修を効果的なものにする「鍵」になるということを述べました。今回は、OJTについてさらに理解を深めていきたいと思います。結論からいうと、しっかりとしたOJTの仕組みづくりをすることが、効果的な人材育成には不可欠です。

よく見られるOJT手法

従来のOJTは、OJT担当者が自身の経験や勘を拠り所にして、その場その場で必要な時に介入をして指導をしていくものでした。経験や勘を拠り所にする手法は、状況に応じた即興的な指導方法として非常にメリットのある手法ですが、デメリットとして、OJT担当者の経験、実力に大きく左右されてしまいます。受講者の立場からすると、OJT担当者を自分から選択する余地はありませんから、経験や実力に乏しいOJT担当者に当たってしまうと、それこそ不幸と言わざるを得ません。また、経営戦略の観点からしても、人材育成に大きなムラが生じてしまうことは避けたいものです。

経験学習モデルの考え方

経験学習モデル

上記で説明したOJT手法を解決する考え方として「経験学習モデル」があります。ここからちょっと理論的な話にはなりますが、経験学習モデルの概念を理解され実践されることはOJTの質を驚くほど高めることになります。

昔から人は「経験から学ぶ」といわれています。具体的に「経験から学ぶ」ということはどんなシステムなのでしょうか?このシステムをわかり易く説明を試みたのがコルブという研究者でした。彼は、「経験から学ぶ」という概念を右図(クリックして拡大)に示したような経験学習サイクル使って説明しています。

①具体的経験

具体的経験とは、実際に何らかの業務を経験することに他なりません。ただし、ここで留意してもらいたいのが「経験」の意味です。経験とは、ただ何となく実践することではなく、「今までやったことがないこと」「今までできなかったこと」などを実践するチャレンジングな経験です。

②具体的省察

ここからが経験学習モデルの真骨頂になっていきます。そもそも「省察」という言葉は、英語では「Reflection」、つまり「振り返り」という意味です。具体的経験をした後は、成功や失敗に関わらず何らかの結果が生じます。経験はただやりっぱなしにするのではなく成功や失敗の原因を振り返ることが重要になります。ただ、ここで大切なのがOJT担当者の役割です。経験の当事者は、実行したことが上手くいったかどうかわかりづらいときがあります。ですから、OJT担当者は結果がどうであったかというフィードバックをしなければなりません。

③概念化

「失敗から何も学んでないね」。この言葉は同じ失敗を繰り返す人に対して浴びさせられる言葉です。 なぜ、失敗を活かしきれないのか?その要因は概念化の行為を怠っているがゆえに起こっています。 概念化とは、「実践で経験したことの結果に対し原因を見つけ、それに対し意味づけしていく行為」です。ひと言で表現すると「教訓を引き出す」というイメージを思い描いてもらうといいでしょう。概念化の行為で意味づけられたものは、成功経験では持論となりその行動が強化され、失敗経験では修正や改善の具体的目標になります。

④新しい試み

新しい試みとは、概念化に意味づけされたものや引き出された教訓を①の具体的目標として、再び経験学習サイクルを回していくための出発点となる行為です。

以上がコルブの提唱した経験学習モデルのフレームです。ピンとこられた方もいらっしゃるかと思いますが、この経験学習モデルの考え方は、エドワーズ・デミング博士が提唱したPDCAモデルと同じ考え方です。経験学習モデルが継続的な人材育成の目的で、PDCAモデルが継続的な業務改善の目的という違いだけなのです。

経験学習モデルの実施のための留意点

経験学習モデルは、馴染み深いPDCAモデルと考え方が類似しているので取り入れやすいモデルでもあります。しかし、理屈ではイメージしやすくても実施導入となるといくつかの留意点があります。

①育成目標の明確化

経験学習サイクルを回しても、各組織がイメージする成長像に合致していなければ意味がありません。そのために、育成目標を明確にしておかなければなりません。育成目標設定には、OJT担当者が集まり「経営戦略に応じた成長像」を構築していくことが必要です。実際、私が行っている研修では、経営戦略に照らし合わせて、OJT担当者の様々な経験からくるであろう育成目標項目の設定をOJT担当者の様々な経験から抽出していくワークを行っています。

②適切なフィードバックを行う

先にも書いたとおり、経験の当事者は結果が状況に埋め込まれているために、結果が認識しづらいことがあります。それを避けるために客観的な立場であるOJT担当者が適切な結果のフィードバックを行う必要があります。適切なフィードバックを実施する前提として、当然ですが目標設定の段階からOJT担当者は関わらなければなりません。

③コミュニケーション力を強化する

経験学習サイクルが上手くいくかどうかは、「省察的観察」「概念化」をしっかり行うことにかかっています。これらを実践する上で欠かせないのがコミュニケーション力です。より具体的な振り返りや、経験に応じた適切な概念化を行うためには、質問力に代表されるコーチングの手法を身につけておく必要があります。また、親密なコミュニケーションによって双方の人間関係も適切なものとしておかなければなりません。

経験学習モデルは効果的なOJTを推進する上で強力な武器となります。次稿では、経験学習モデルの「概念化」と「新しい試み」をつなぐ、認識と実践の関係性を紹介していきたいと思います。


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執筆者紹介

宮崎照行(みやざき・てるゆき)(Training Office 代表) 中央大学経済学部を卒業後、人材開発系ベンチャー企業の参画に携わる。その後、衆議院議員秘書を経て、研修事業・人事コンサルティング事業を主な業務内容としたTraining Officeを設立。

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