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DeNA川崎ブレイブサンダース代表取締役・元沢伸夫氏インタビュー(後編)


DeNA川崎ブレイブサンダース元沢社長に聞く、チームマネジメントの心得

2018.07.31

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2018-19シーズンから川崎ブレイブサンダースのオーナーとなるDeNA川崎ブレイブサンダース。代表取締役社長の元沢伸夫氏はDeNAの社長室・HR本部を経て、横浜DeNAベイスターズの事業本部長を務めた経験を持つ、異色の経営者だ。

今回はそんな元沢社長に、横浜DeNAベイスターズ時代の経験、スポーツビジネスに向いている人材の特徴、DeNA創業者・南場智子氏から学んだチームマネジメントの心得についてお聞きした。

※この記事は、「DeNA川崎ブレイブサンダース・異色キャリアの社長が語る、創業期の人材採用」の続編です。

180717_017DeNA川崎ブレイブサンダース 代表取締役社長 元沢伸夫氏

1976年11月26日生まれ。 経営コンサルティング会社に勤務後、2006年株式会社ディー・エヌ・エーに入社。 社長室にて新規事業の立上げなどに従事。 HR本部人事部キャリア採用マネージャーなどを経て、2014年から横浜DeNAベイスターズへ出向。 同社執行役員事業本部本部長などを歴任後、2018年1月から現職。

横浜DeNAベイスターズ時代には、全国で放映権を販売

─2013年頃にDeNAのHR部門から横浜DeNAベイスターズに参加されたということで、横浜DeNAベイスターズ時代の経験についてお聞かせください。

横浜DeNAベイスターズには2013年の終わりくらいから関わらせていただいて、2014年のシーズンから正式に入社しました。最初の1年間は社長室長ということで、当時の球団社長直下の部隊で、一緒に戦略を立てたり、スポンサー営業に同行したりして、どんな仕事をどうやっているのかを勉強させていただきました。

翌年度からは事業本部長として、広報や管理部門以外の部門について全て管轄させていただきました。かつ、1年目は営業部長も兼務していたので、スポンサー営業は自らも取りに行きますし、社長の指示で放映権の担当もしていました。

─スポーツビジネスというと専門性が高く、どういった世界かご存じない方も多いかと思うのですが、例えば、放映権担当のお仕事はどんなことをされるのですか?

放映権担当としては、プロ野球で「横浜DeNAベイスターズのホームの試合を放映する権利」を、メディアの方々に販売する仕事をしていました。基本的には営業です。首都圏のキー局や、ラジオ局のみなさんに「放送しませんか」と営業していきます。

他には、横浜DeNAベイスターズが横浜スタジアムで広島カープさんと試合する場合、その試合を広島のテレビ局さんが放送したいんですね。そこで、広島のテレビ局に直接行って商談をして、放映権を売っていく。プロ野球には交流戦もあるので、パ・リーグのチームとも試合をします。それで楽天イーグルスさんの本拠地仙台のテレビ局に行ったこともありますし、とにかく全国飛び回って放映権を売っていく。最近はインターネットのメディアもありますので、ネットメディアの方にも販売しています。

未経験の領域で、事業を左右する意思決定を行う

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─大変ながらやりがいのありそうなお仕事ですね。営業部長時代には、他にどんなお仕事があったのでしょうか?

基本的には、スポンサー営業の仕事をメインでしていました。協賛、広告をいただいたり、横浜DeNAベイスターズの選手を使ってキャンペーンをしたいといったご要望があった際に、権利を販売したりといった仕事ですね。

─横浜DeNAベイスターズ時代に特に印象に残ったお仕事はありますか?

事業本部長になった初年度が大変でしたね。スポーツビジネスの営業を直接やったことがあるわけでもないですし、放映権にも関わったことがなかったので。それでも事業本部長として、大半の事を意思決定しなくてはいけない。私が判断を間違えると事業が傾いていってしまう。

グッズだったり演出だったり、地域振興のスクール、チケット販売と、球団運営には非常にさまざまな部署が紐づいているので、緻密な情報をキャッチアップしていく。この作業が一番大変でした。

─DeNAのHR部門から横浜DeNAベイスターズの営業部門に移られたということで、戸惑いはありませんでしたか?

一種の転職ですよね。今まではIT企業としてアプリやECサイトがどうということをやってきたので。妻にも「元の世界に戻れなくなるよ」と言われて、確かにそうだなと当時は思いました。(笑)

「スポーツビジネス」はビジネスの最前線の現場

─やはりスポーツビジネスというと専門性の高い印象で、一般的なビジネスとは全く別物のように思えるのですが、元沢社長はどう思われますか?

実感として、別ものではないと思いますね。(スポーツビジネスは)ビジネスの最前線の現場という言い方もできると思います。ファンの方やスポンサーというお客さまと対面で接して、彼らが何を考えていて、どうすれば喜んでくれるかを考える仕事なので。クレームを直に受けることもあるし、大変ではありますが、やりがいはありますね。

「専門性が高い」という印象は、スポーツビジネスを教える学校などのイメージがあるかと思うのですが、理論は入ってからいくらでも学べるし、ファンやスポンサーとの現場での接点の方が大事ですね。

スポーツビジネスというのはファンあっての業界なので、理屈で勝てるビジネスではないと思っています。論理的思考能力といったものも大事ですが、その必要性は1、2割程度だと思います。

スポーツビジネスには、「対人感受性」に長けた人材が適している

─関連して、「スポーツビジネスに向いている人材」の特徴などはありますか?

人の気持ちを考えられる人が向いていると思います。

「ファンの方がどう思うだろうか」というのが何よりも重要で、ファンの方が喜んでくれないと、全ての行動の意味がなくなってしまう。「ファンの方はこれをすると嫌がるだろうな」とか、「これをすると喜んでくれるだろう」とか、想像力や対人感受性の部分、これはなかなか本を読んで学べるようなものでもないので。もちろん、周囲にそういった想像力に長けた方々がいれば、学べるところも多いとは多いと思うんですけれども、元々そういった能力が高い方は、特に向いていると思います。

目標を明確化し、チームとして意識することが重要

─DeNAの中途採用チーム、横浜DeNAベイスターズ、そして現在はDeNA川崎ブレイブサンダースの代表と、さまざまなチームを率いてこられた元沢社長ですが、「チームとして成果を出すために意識していること」、チームマネジメント全般について意識されていることがあれば、お聞かせください。

180717_1962まずは、当たり前といえば当たり前のことですが、「目標を、分かりやすく、明示的に示す」ことが大事だと思います。私が横浜DeNAベイスターズで営業部長になってすぐのころ、営業のメンバーに「この営業部の今季の売上目標はいくらですか」と聞いた時、実は、誰も答えられなかったんですね。ただ、そういうチームは意外と多いんじゃないかなと思うんです。目標は存在しているけど、常に目標を意識して仕事をしているのか、ということですね。

横浜DeNAベイスターズの営業部では、最初に私自身が「目標」に関するマインドを変えることにしました。それから、週に1度チームの全員を集めて、営業部全体としての数字の進捗具合と、達成見込みの確認、目標まで不足分があれば、それをどうやって補っていくか。数字を常に意識したうえで、アクションを起こせているのか、その確認を行うことにしました。

この「目標」は個人が意識するだけでは駄目で、チームとして意識することが重要なんですね。実際に営業部時代に「良かったな」と感じたのは、チームの意識が芽生えてくると、私が何も言わなくても、メンバーの誰かが案件を獲得できそうとなったときに、みんなで意見を出し合って、獲得を後押ししてくれるようになったんですね。

誰かが1000万円のスポンサーを獲得できたという時にも、その「1000万円」の意味合いがチームにとってどのようなものか、どれだけチームのために役に立ったかをみんなが知っているので、本当にメンバー全員が歓迎して「よくやったね」と祝福する雰囲気になっていきました。こうした状況を見てきた中で、チームで目標を立てるというのは、改めてとても大事なことだと思っています。

─共通の目標を目指すことで、個人同士がぶつかるようなことが減り、チームとして協力する体制が出来ていく。

はい。個人の評価は評価面談で行っていくのですが、個人目標を記載してもらいながら、チームとしての目標も全員に明記してもらって、「チームとしての目標を達成してはじめて、大きな評価をします」ということを伝えていました。

良いチームの形成は「採用」からはじまる

─元沢社長の思う、「上手くいくチームとそうでないチームの違い」は何だと思いますか?

実はこれまで、チームが上手くいっていないという経験があまりないんですね。では、なぜ上手くいっていたかといえば、私のマネジメントが良かったからというより、良いメンバーがいたからなんです。そのメンバーの力が一番大きかったので、やはり振り返ってみると「採用」は大事なのかなという気がしました。やる気を持って仕事を頑張るメンバーが集まれば、自然と良いチームができますね。

─これまで、チームマネジメントを学んでいくうえで、参考にしたものなどはありますか?

手前味噌になりますけど、創業者の南場さんの言葉は今でも覚えていて、マネジメントする時の自分に対する教訓としていますね。入社してから上司には恵まれていて、いただいた言葉をずっと忘れずに、真似しているところはあります。

元沢社長に影響を与えた、南場智子氏の「マネジメント論」

─南場さんの言葉の中で、特に印象に残っているもの、参考にしているものがあればお教えください。

南場さんは、「人は仕事で成長するから、マネージャーとして一番重要なのは、メンバーの『状態』と『能力』と『これから』を考えて、どの仕事に対してどの人をアサインするか」だと仰っていて、特に「仕事のアサインメント(割り当て)はものすごく重要だから、そこは雑にやるな」ということは強調していましたね。

部下に仕事をアサインする際には、「ギリギリ達成できるか出来ないかの仕事を与えること」がすごく重要で、その仕事を達成して部下が成長したら、もう少し難易度が高い仕事を与えなさい、ということを話されて、この考えはずっと参考にしています。

他には、「自分が出来ないことを配下のメンバーに求めるな」というのはよく言われることだと思うんですが、南場さんは、「そういう考えは今すぐやめなさい」と話していたんですね。

「マネージャーは、自分よりも優秀な人がいるチームを想定した方がいい。マネージャーができないことをメンバーができても良いし、マネージャーができないことをメンバーに求めることも悪くない。どんどん求めなさい」と。「マネージャーは自分ができないからといって、求めることをやめなくて良い」と。

たまたま、社長室の頃にそうやって教えていただく機会があって、私以外の社員にも、こうした話はされていたのですが、その内容はよく覚えていて、現在も参考にしています。

リーグ全体を牽引するクラブチーム作りが目標

─2018年10月から、DeNA川崎ブレイブサンダースさんも参加されるBリーグの2018-19シーズがはじまるということで、今後、会社として、チームとしての川崎ブレイブサンダースが目指すものがあればお聞かせください。

180717_09156チームとしては当然、優勝を目指すことを考えていますが、同時に、「バスケットボールの未来を作りたい」と強く思っています。

バスケットボールという競技は、メディアの露出は最近は増えてはいるものの、野球やサッカーと比べるとまだまだ少ないないですし、産業としてはクラブ経営も含めてまだ厳しい状態です。

そういった現状を踏まえ、バスケットボールのステータスを上げられるような取り組みをしたいです。

当然それは、Bリーグが主導する話ではあるのですが、突出したクラブがいて、引っ張っていくという形があっても良いと思うんですね。リーグ自身も努力するし、クラブも頑張る。単純に「チームを優勝させたい」というレベル感ではなく、それは当然として、もっと目線を高いところに置いて取り組んでいきたいと考えています。

─ありがとうございました。

【2018年6月 DeNA川崎ブレイブサンダースオフィスにて取材:聞き手 @人事編集部】

【編集部より】
株式会社ディー・エヌ・エーに関する、この他の記事はこちら。

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