@人事 ドイツ支部通信
日本企業は会議が多すぎる!ムダな会議を見直す3つの方法
2018.07.04
「日本の働き方は非効率」と言われる理由のひとつに、「ムダな会議が多い」ということがよく挙げられる。だが、そもそもムダな会議とはなんなのだろう。また、ムダだからといって省いて良いのだろうか。今回は「効率のいい効率化」のために、会議について考えていこう。
雨宮 紫苑(あまみや・しおん)
ドイツ在住、1991年生まれのフリーライター。大学在学中にドイツ留学を経験し、大学卒業後、再びドイツに渡る。ブログ『雨宮の迷走ニュース』を運営しながら、東洋経済オンラインやハフィントンポストなどに寄稿。
減らすべきムダな会議とはどんな会議?
「効率化のススメ」でまっさきに上がるのが、「ムダな会議の削減」である。たしかに、ダラダラと目的もなく話しているのは時間のムダだ。しかし多くの人が一緒に仕事をしていくうえで、顔を合わせて話し合う重要性もまた無視できない。「会議」は効率化のカギではあるが、効率化の壁でもあるのだ。
ムダな会議を減らすことは大切だが、それによって仕事が滞ってしまったら本末転倒である。しかし「どうすれば会議を効率的に進められるか」というテーマに比べ、「減らすべきムダな会議とはどんなものか」については、あまり注目されていない。
今回は3つの減らすべきムダな会議と、減らした後の対処法について書いていきたい。
【ムダ1】集まることが目的になった形式的会議
まず、目的のない会議の見直しについてだ。
わたしがドイツに住んで経験した会議は、日本の会議とはちょっと性質が違った。
日本だと、集まる曜日や時間が決まっており、それに合わせてテーマが用意されていることが多かった。しかしドイツでは、まずテーマがあり、それを話し合うために集まるという考えなのだ。目的がなければ、会議は開かれない。
いうなれば、「集まることが目的」なのか、「目的のために集まる」のかの違いである。
集まることが目的になり、ただ時間を浪費するだけの会議なら、なくした方がいいだろう。目的ありきの会議にすれば、「とりあえず集まる」という形式的で形骸化した会議はなくなる。
【対処1】会議ではなくチャットツールでコミュニケーションを
しかし、目的のない会議にもメリットがある。それは「とりあえず顔を合わせる時間がある」ということだ。
「今度の会議のときに相談しよう」「あいつは進みが遅そうだから会議のときに確認するか」というように、一見ムダに思える会議が、コミュニケーションのひとつのきっかけになっている可能性もある。
ドイツでは個人の仕事がはっきりしているうえ、裁量権や責任の所在も明確なので、報・連・相は日本ほど重視されていない。しかし個人の職務がはっきりしていない日本では、報・連・相はかなりマメにしておかないと、予期せぬトラブルに繋がりかねない。
そこで提案したいのが、会議に代わる場として、チャットツールを使うことだ。チャットというとLINEのイメージが強いが、Chatworkやslackなど、ビジネス向けのチャットツールはいくつもある。
気軽にメッセージを送れるだけでなく、タスクを登録すればToDoリスト代わりになるし、締め切りを設定すればリマインダーが通知してくれる。データも送れるし、メッセージ内容を検索したりもできる。ちなみに、オンラインでもアプリでも使用可能だ。
基本的にはチャットなので、気軽に「ちょっと確認してもらえます?」「あのプロジェクトどうなってる?」と連絡できる。部署の人数が少なければ、上司が毎日一回は全員に声をかけるという単純な方法でもいいかもしれない。
ムダをなくすことは大切だが、コミュニケーションの場もまた、大切である。
【ムダ2】人数が多く手持ち無沙汰な人がいる会議
ドイツで感じたもうひとつの違いは、ミーティングの人数だ。日本では「全員集合」のため大人数の会議もあったが、ドイツでは、少なくともわたしはそういった会議を経験しなかったし、そういう話も聞かない。せいぜい5人程度なものである。
というのも、ドイツではまず解決したい問題があるから集まるわけで、その件に関係のない人は呼ばないのだ。
全員集合して議題1に対してAとBが話し合い、議題2に対してBとCが話し合い、議題3に対してCとAが話し合う……ということはまずない。それならば個別に話し合えばいい、となる。
こういう、「無関係な人がいる」会議もまたムダだ。会議に参加する人数が多ければ多いほど意思決定に時間がかかるし、その間、参加者全員の仕事は滞る。会議の人数は、少ない方がいい。
【対処2】やっぱりチャットツールを使う
そのためにも、チャットツールは有効だ。LINEと同じく、チャットツールではグループを作ることができる。
プロジェクトAに対してひとつのグループを作り、プロジェクトBに対してはまた別のグループを作ればいい。グループ内にタスクを追加することも可能だ。
タスクが多くなりすぎればキャパオーバーということなので、上司に「こんなにタスクを抱えています」と見せればいいし、チームメンバーなのになんのタスクもなく実はなにもしていない人がいればすぐに気づける。
なにかを話し合いたければグループチャットに「○時にちょっと話せますか」と一言書き込めば、少ない人数で目的ありきのミニ・ミーティングができる。わざわざみんなが手を止めて集合する必要はないのだ。
もしくは、全員宛に「○○について話し合います。関係者は参加してください」と送るのもいいだろう。自分自身が会議に参加する必要があるか否かを決められる仕組みがあれば、やたらと人数だけが増えることもない。
【ムダ3】責任分散&決定に意味がない会議
また、問答無用に減らすべき会議というのもある。それは、責任を分散させる会議と、決定がくつがえる会議だ。
すでに決まっていることを共有して「全員一致」のかたちをとり「みんなの責任」にする会議は、案外多いと思う。そして、会議で決まったのに「結局上の許可が下りなかった」といった理由で「会議のやりなおし」なんてこともあるだろう。これは、まったくもってムダである。
こういった会議というのはそもそも、責任の所在が明らかになっていないのだ。すでに決定されていることはオンラインで共有すればいいし、最終決定権をもたない人たちの会議には意義がない。
会議を開くとき、しっかりと目的を周知し、必要とあらば事前準備をしてもらい、最終決定者を明確にしておけば、こういった会議を避けられるだろう。
「目的・人数・責任」からムダな会議の見直しを
ムダな会議かどうかを見極めるには、「目的」「人数」「責任」の3つがキーワードになる。目的がなく、人数だけやたら多く、責任がうやむやの会議は減らすべきだ。
しかし会議を減らす時は、それによりコミュニケーションに弊害がでないかどうかを考えてから行わなくてはならない。そのとき、チャットワークをはじめとしたオンラインツールは大活躍するはずだ。
会議の効率を考える前に「ムダな会議の見直し」を行うことで、効率のいい効率化ができるだろう。
執筆者紹介
雨宮紫苑(フリーライター) ドイツ在住、1991年生まれのフリーライター。大学在学中にドイツ留学を経験し、大学卒業後、再びドイツに渡る。ブログ『雨宮の迷走ニュース』を運営しながら、東洋経済オンラインやハフィントンポストなどに寄稿。著書に『日本人とドイツ人 比べてみたらどっちもどっち』(新潮新書)がある。
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