特集

企業ブランドと人材戦略のカギを握るCHRO(最高人事責任者)【第5回】


CEOとCHROの連携の秘訣は、会社への帰属感とお互いへの信頼

2018.06.23

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企業や事業の成長において『人』が全てと言っても過言ではない昨今、経営課題解決の一助を探るべく、実際にCHROを雇用し、効果的に機能させている株式会社メイプルシステムズを取材した。前回は、CEO・望月祐介氏とCHRO・鴛海敬子氏の「人」に対する熱い想いをうかがった。後編となる今回は、二人がどのように経営の意思疎通を図っているのか、その秘訣を聞いた。秘訣を探るうちに見えてきた二人の意外な関係性とは。
【2018年4月26日、株式会社メイプルシステムズ本社オフィスにて取材】

前編はこちら 『型破りな企業』に見るCEOとCHROの意外な関係性とは

株式会社メイプルシステムズ

創業から10期目となるシステム開発会社(社員数約50名)。社長が現役のエンジニアであり、技術者の視点に立った経営を意識したエンジニア集団であることに重点を置く。従前は社長が人事を兼任していたが、人事施策を強化すべくCHROを雇い、現在は「離職率100%」というユニークな制度を掲げ、社員の成長支援を行っている。
HP:http://www.maplesystems.co.jp/

CHROに大切なものはスキルよりも会社を自分事としてとらえるパッション

橋本:鴛海さんのCHROという肩書はいつからなんでしょうか。

鴛海:この会社に入社してからですね。前職では新卒採用業務をメインに部下もいましたが、とくにそんな大層な肩書はなかったです。

チカイケ:最初にCHROを打診されたときはどんなお気持ちでしたか。

鴛海:この会社は、社長の望月がもともと人事をやっていました。それを切り分けて私にパスするということは、会社と一心同体になってやるくらいの覚悟をもって入らないと絶対に失礼だな、と、肩書をもらう前から思っていました。役職があった方が仕事はやりやすいので、非常に嬉しかったですが、CHROという肩書があったから何かが特別変わったとかはないですね。

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チカイケ:入社される際、望月さんは鴛海さんにミッションや、期待する役割などをお伝えしたんですか。

望月:彼女に最初に言ったのは、キャリアアップのための退職を応援しようとか、キャリアをきちんと磨いていくのがエンジニアだよとか、そういう話をしました。それさえしてくれれば、あとは全部信頼していたので、これをやってほしい、あれをやってほしいと指示はしなかったですね。

橋本:なるほど。私は人事の方などからどうすればCHROになれるのかとよく質問を受けるんですけど、もしかしたらその質問自体が違うのかもしれないですね。

鴛海:そうですね。面接とかもあるので、多少経験はあったほうがいいと思いますが、スキルよりも本当に会社を自分事のように思って人事をやりたいという気持ちが大切な気がします。そこがないと、いくらハイスペックな人を雇ったとしてもうまくいかないように思います。正直、私は自分に高いスキルがあるとは思わないですし、ただ想いだけで走ってきたところがあるので。

望月:彼女はエンジニアではないので、技術的なことでエンジニアと対等に話すことは絶対にできません。技術的な知識は、私が理解していれば良い話ですから、下手に知識をつけるよりも、むしろ仕事に対するパッションといった異なる側面からアプローチしてほしいなと思っています。

CHROの採用はシンプル。まず社長が人事をやる。そして分身を採用する。

望月:CHROの採用は、どうやって採用するかを考える前に、社長が自分でまず人事をやってみることです。そして、自分のやり方を理解した上で、それと同じことができる人に来てもらう、というのがシンプルです。私が人事をやっていたときはスカウトメッセージに想いを込めて返信するようにしていましたが、鴛海も分身のようにそれができます。

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鴛海:はい、分身のようにできます(笑)。ただ、それができているのは、どういうふうに人事をやっているのかを、入社前に望月が熱く語ってくれたことが大きいです。たとえば、応募者が会える距離にいるとわかったらすぐ電車に乗ってダッシュで会いに行ったり、滋賀県とかの遠方だったとしても夜行列車で会いに行ったり。「会いたい人だから会いに行く。」そういう熱い人事がまさに私のやりたかったことだったので。

橋本:それはすごい! 口癖のように「私は人事のことはよくわからないんだよ」と話す社長の下にいる人事の方は、たいてい作業員のようになっていますからね。

鴛海:ありますね。そういう会社では人事としてのパッションを持ちにくいです。社長自らできないことを頼まれても、いくらCHROの肩書がついても無理でしょうっていう。

橋本:望月さんの「人」に熱いスタイルはいつから始まったんですか。

望月:基本的には全部親からです。幼い頃からずっと「自分がされて喜ぶことを他人にしなさい」と言われてきました。だから、たとえばスカウトメッセージ1つとっても、定型文でもらって喜ぶ人はいないので、意識して送るようにしていました。経営者の方は小さい頃から言われていることが根本にあることが多いので、そこをあらためて深掘りしてみると良いかもしれません

一緒にいる時間は家族以上。その秘訣はお互いを信頼し、遠慮をしないこと。

橋本:状況に応じて社長の考え方が変化していく中で、一般に人事やCHROはキャッチアップに困っている印象があるのですが、普段のお二人の中で、コミュニケーションの取り方やタイミングはどのように調整されているんですか。

望月・鴛海:もはや家族よりも一緒にいます(笑)。

橋本:なるほど(笑)。とはいっても今のポジションになってから半年程度じゃないですか。それでこのシンクロ感はどうしてだろうと。

鴛海:たしかに。ただ、遠慮しないでコミュニケーションを取るようにはしています。言いたいことは全て言い合うようにしているので、喧嘩になることも多いですけど、最後は冗談を言って和ませて終わらせたり(笑)。そういう意味では、くだらない冗談を言い合えるのも重要だと思います。

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チカイケ:それはいいですね。世の中的には経営者と人事に結構距離があって、誰を採用するとか興味ないから何人採用してくれ、というふうに数値だけ降りてくる会社の方が多い。でも、望月さんのようにCEOがCHROタイプの会社はうまく回っている印象があります。

鴛海:それで言うと、望月が採用の面で「必要ならいつでも時間を作るから」というスタンスでいてくれることが非常にありがたいです。面談はすべて同席してくれますし、社長がわざわざ時間を割いてきてくれるということで、応募者にも想いが伝わって成功体験を一緒に踏めるので、どういう人がほしいか、どういう採用活動が良いかが、わざわざ時間を取って話さなくても自然と合います。

望月:鴛海は話を引き出すのが上手で、話しているだけで考えをまとめてくれるんですよ。そこも彼女の魅力で、元々自分の中にあった「離職率100%」の考えも、堅苦しい会議の場で生まれたわけではなく、鴛海との普段の会話の中で制度としてのコンセプトをまとめました

橋本:なるほど。そこもトップダウンではなかったんですね。採用ビジョンが自然とすり合うというのも滅多にないすごいことだと思います。

望月:逆に鴛海でなければ、この制度は生きていないと思います。経営者である私が伝えても恐らく信じてもらえなくて、人に好かれる彼女だからこそ「離職率100%」という言葉が相手のためを思って本気で言っているというのが伝わると感じています。

鴛海:望月はそう言ってくれていますが、私もこの会社でなかったら、ここまで自分を正直に見せることはできなかったと思います。CHROがCEOとのコミュニケーションに委縮していては二人三脚の経営はできません。何を言っても嫌われないだろうという安心感があるから、望月とはとても仲が良いし何でも言い合えるのだと思います。そういうお互いの信頼の中で仕事をしているというのは非常に大きいです。

チカイケ:なるほど、ありがとうございます。これまで私が見てきたCEOは、CHROをとりあえず人事責任者としていれてみるけれどうまくいかない、というパターンが多い印象がありました。ですから、そうした中でCEOとCHROはどういった関係性であるべきなのか、というのは個人的にずっと疑問に思っていたのですが、今日お二人の話をうかがっていて答えが見えたような気がします。

橋本:そうですね。お互いに信頼し合い、対等になんでも言い合える「友達」みたいな関係性だと感じました。これもCEOとCHROの在り方の1つのモデルなんだと思います。

(インタビュー終わり)

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どれだけ時間を共にしても苦ではないと笑顔で語るお二人へのインタビューを通じて、あらためて企業として「人」を第一に考えること、そしてCEOとCHROが互いを信頼し二人三脚で経営することの大切さを学ばせていただきました。

【編集部より】
「CHRO」に関する記事はこちら。

執筆者紹介

野澤 麿友子(のざわ・まゆこ)(株式会社スキマタイズ) 本職はIT企業人事。新卒で入社したメーカーで経営企画業務に携わる中、「従業員の幸せ」と「会社の発展」を両立できないことに疑問を持ち、それを実現できる人事になることを決意して転職。将来の夢はCHRO。人の理念や情熱などの漠然とした想いを、言語化することが好き。

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