特集

人事領域のテクノロジー 活用が多方面に生むメリット


「チャットボット」「AI採用」ソフトバンクが実践! 人事の業務効率化

2018.06.11

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ソフトバンク株式会社は2017年5月29日、新卒採用の選考にAIを活用することを発表しました。時代に先駆けて、新たな技術を活用する同社では、採用以外の人事分野でも、ITを活用し、大胆な業務効率化を実現しています。今回は、同社人事本部で、採用・人材開発統括部の統括部長を務める源田泰之氏に「IT技術を使った人事部門の効率化」について、お話をお聞きしました。

源田泰之(げんだ・やすゆき)氏

softbank0531001 ソフトバンク株式会社・人事本部
採用・人材開発統括部 統括部長

1998年入社。営業を経験後、2008年より現職。ソフトバンクグループ社員向けの研修機関であるソフトバンクユニバーシティ、後継者育成機関のソフトバンクアカデミア、新規事業提案制度(ソフトバンクイノベンチャー)、新卒及び中途採用全体の責任者。ソフトバンクユニバーシティでは、経営理念の実現に向けた社員向けの研修を企画し、社内認定講師制度などの人材育成制度を運用。採用では地方創生インターンなどユニークな制度を構築。

業務工数は半分に、生産性は2倍に。「Half&Twice」

──まずはじめに、「生産性向上」「業務効率化」について、ソフトバンク社の基本的な考え方を教えてください。

源田氏:
現在、ソフトバンクは全社的に「Half&Twice」という目標を掲げています。これは、業務工数とコストを、テクノロジーを駆使して半分(Half)にする。その上で、生産性は2倍(Twice)にしていこうという考え方です。

また、ソフトバンク流の「働き方改革」のスローガンとして、「Smart & Fun!」を掲げています。

ITを駆使した業務の効率化やメリハリのある働き方により時間を作り出す。そして作り出した時間を、新しい取り組みへのチャレンジや自己投資に回していく。これにより、さらにイノベーティブで、クリエイティブな仕事ができるようになる。この循環を作っていこうというのが、ソフトバンクの考える、働き方改革です。

他社に先駆けて、人事の業務効率化を実践

源田氏:
では、人事は具体的にどういうことをやっているかというと、たとえば、「タブレット面接」という取り組みは、2010年から実施しています。採用の評価は全部タブレットに入力し、タブレットから確認できる。クラウド化が進んでこうした取り組みは今では普通ですが、当時はまだ新しかったですね。

ソフトバンクでは全社的にペーパーレスを推進していて、研修も全て電子テキスト化し、紙を使わない形で実施しています。オフィスでは、コピー機はほとんど稼働していないですね。

紙で用意しなければいけない書類もあるので、完全にゼロにはならないんですけれども、たとえば、社内の会議で紙を使うということは、完全にないです。会議室にあるプロジェクター・ディスプレイに映し出して、手元のiPad、PCで確認する、という状態が基本です。

チャットボットで就活生・内定者との一次対応を自動化

実際のチャットボットの対応画面

実際のチャットボットの対応画面

源田氏:
社員の問い合わせもチャットボットでサポートできるようになっております。例えば社員が転勤になった際に、「転勤の手続きってどうしたらいいんだっけ」ということをチャットボットに送ると、チャットボットが手続きを案内してくれます。

チャットボットについては、採用活動でも活用しています。就活生や内定者からの質問の一次対応はチャットボットが行っていて、これによって、1年度あたり800時間以上を削減できています

インターフェイスを何にするかについては学生の意見をよく聞いて、「LINEがいいんじゃないか」ということになりました。新卒採用のチャットボットはLINEをベースに、人工知能「Watson」のNLCを使っています。

定常的な問い合わせは、AIによって対応

源田氏:
これは肌感覚ではあるんですけれども、新卒採用の窓口に集まる質問というのは、実は定常的というか、ある程度決まったものが多いと感じていたんですね。

具体的には、「面接に遅れてしまいそうです。どうしたらよいでしょうか」ですとか、「合格・不合格の結果はいつ来すか?」ですとか「面接はあと何回くらいあるんですか?」といった質問ですね。そこで、どんな質問があるかを整理して、AIが一次対応できる仕組みを作りました。

──このチャットボットは、すでに実装されているんですか?

源田氏:
そうですね、2018年から実装しています。ホームページには、FAQなども用意しているのですが、全ての質問についての回答を掲載すると大変な量になってしまいますし、学生から見ても探すのが大変ですよね。加えて、「似たような質問はあるけど、ピンポイントで聞きたいこととは違う」といったことも起きるので、このチャットボットでそのあたりのことが解決できたのは、とてもよかったと思います。

2017年5月に「新卒採用選考におけるAI活用」を開始

源田氏:
AIを活用した新卒採用は、2017年の5月29月に開始して、約1年継続して実施しています。

「採用エントリー」⇒「エントリーシート」⇒「SPI」⇒「複数回の面接」というのがソフトバンクの通常の採用フローで、2017年からは「エントリーシート」の評価の部分でAIを活用しています。

softbankNLC

源田氏:
AIがESを評価する方法は、①「人事担当者による評価済みの過去のエントリーシート」の内容を人工知能・Watsonに「教師データ」として学習させて、②評価前のESを投入すると、③Watsonが過去のデータをもとに、合格か不合格か判断するという、非常にシンプルな仕組みです。

新卒採用にAIを利用するために使ったツールは3つです。1つ目は人事担当者による、評価済みの過去のエントリーシート(ES)データ。次にWatsonに学習させるマクロを組んだツール、そしてソフトバンク人事の判断基準を学習したWatsonです。評価については、「NLC(自然言語分類)」というWatsonの機能を使っているだけなので、新しいシステムを構築するような手間はかかっていません。

AI採用を行う際の、理想的な「教師データ」

源田氏:
「教師データ」については、実は、リリース前の検証段階では、過去のエントリーシートのデータを数万件読み込ませていたんですね。ただ、それでは思ったような結果が出てこなかったんです。それから、データを分解してトライアンドエラーを繰り返して、「理想的な教師データ」を抽出し、今はほぼ、人間が見るのと同じ精度のものになっています。

──「データを分解」したということで、具体的には、どのようなデータがAIが正しい判断をするために役立ったのでしょうか?

源田氏:
例えば、いつのESデータを「教師データ」として読み込ませるかで、AIによる判定か変わってきます。

最近ですと「ディープラーニング」とか「AI」という言葉は聞き慣れた言葉ですけれども、5年前だと、今ほど語られていない言葉だったりしますよね。ソフトバンクはIT企業なので、たとえばIoTだとか、シンギュラリティだとか、そういった言葉がESにもよく出てくるのですが、3年前、5年前の合否データだと、うまくハマりませんでした。

また、もちろん選考担当者は事前にトレーニングを受けて、担当者によって「目線のブレ」がないようにしていますが、当然ベテランの採用担当もいますし、経験の浅い担当者もいるわけですね。

そこで、読み込ませる教師データは、採用担当としての経験が長くて、よりしっかりしたジャッジをできている採用担当のデータに絞ったんです。そうしたところ、Watsonは人が見た場合とほとんどズレのない判断をするようになりました。

採用にAIを活用することで生まれた2つのメリット

──採用にAIを活用したことで、生まれたメリットについて教えてください。

源田氏:
まず大きいのが、作業時間の短縮ですね。これまでは、すべてのESを担当者がチェックして、読み込んでいましたが、AI活用を始めてからは、ESチェックにかかる時間を75パーセント短縮することができました。作業時間がかなり削減されたというのが、1つめの大きなメリットです。

そしてもう一つのメリットが、「評価軸が統一された」ということですね。届くESは一人で見られる量ではないので、これまで複数の担当者がESをチェックしていました。その結果、仮説として「目線のブレ」のようなものがあったかもしれない。ただ、今は一貫してWatsonがESを評価しているので、目線のブレはありません。これまでより、さらに公平な選考になったのではないかなと考えています。

Watsonが不合格と判断したESは人間も見る

AI採用の手ごたえを語る源田氏

AI採用の手ごたえを語る源田氏

源田氏:
この採用のポイントは、エントリーシートをWatsonがチェックして、不合格となったものは採用担当でもう一度見ているということです。「AIを使ったエントリーシートのジャッジ」というのは新しい取り組みでしたので、運用面にも気を配りました。

──実際に1年間、AIを活用した採用活動を続けてみて、印象的だったこと、課題などはありますか?

はじめは心配したんですけども、ネガティブな意見はほとんどありませんでした。ソフトバンクはIT企業なので、受ける学生たちがそもそもITリテラシーが高く、また新しい技術に好意的であるのかもしれません。

今はむしろ学生さんの方が、AIや新しいテクノロジーに関して前向きな気がしますね。だから僕らが思うほど、抵抗感がないのかもしれません。

人事担当者と経営層が「AI導入」の壁を取り払った

──今回のAI導入の件で壁となったもの、逆に推進する上で重要だった存在があれば教えてください。

源田氏:
他社の人事の方にも「経営層の反対をどうやって押し切ったのか、どう説得したか」についてよく聞かれるんですけれども、実は、そもそも説得をしていないんですね。「エントリーシートの評価にAIを活用する」という施策は、世の中的にもインパクトがありますから、経営会議で事前に説明したのですが、その際は「すぐやろう!」という反応でしたね。

それと、AIやテクノロジーに関しての拒否感がなく、好奇心を持ってそういった新しい技術にチャレンジしてくれる人事担当者がいたということがとても大きかったと思います。

──今後、人事の仕事について、AIを活用する領域を広げていく予定はありますか?

源田氏:
もちろんです。人事の領域というのは、まだまだ解明できていないものがかなり多いと思うんですね。採用面接では、話の中身だけでなく、いろいろな要素で総合的にジャッジしていますよね。そういった「いろいろな要素」の中には、なかなか科学的に解明されていないような部分があると思うんです。

今は表情を画像解析することで「この人は本当のことを言っているのか」「今緊張をしているのか」が分かるような技術も出てきていますし、これまで我々が「定量化できない」と思っていたところも、画像解析などが進んでいくと、あるいは明らかになっていくかもしれない。これまで人間が見逃していたような、分からなかったことが分かるようになるといいなと思いますね。

データをもとにAIが配属先を提案する未来があってもいい

pepperくんと話す源田さん

Pepperくんと話す源田さん

源田氏:
他には、「配属先を考える」というケースについても、仕事とその人の相性もありますし、チームの相性もありますし、上司との相性もあると思うので、その辺を複合的に考えるとかなり難しいですよね。

そういったことについて、過去のデータや本人のデータを活用して、AIが「この人はこの部署でこういう仕事をするとこんな活躍ができるかもしれない」といった可能性を出してくれて、そのデータをもとに人間がジャッジするという形を作れれば、お互いよりハッピーになれるんじゃないかと思いますね。

さらに言えば、会社に入る前の段階で、AIが「あなたはこの会社と相性が良いかもしれない」といったことを教えてくれて、みんなが自分に合った職業を選べるようになるかもしれない。「一番活躍できる仕事」や「一番自分らしく楽しくワクワクと働ける仕事」に就職できるようになるといいですよね。

──なるほど。画像解析という話もありましたが、将来的には面接でそういった技術を使うことも検討されていますか?

源田氏:
使えれば使いたいと思いますが、気を付けなくてはいけないことも多いと思います。ただ、人事の仕事というのは、人間に関わる、個人情報の塊のような部分もあって、テクノロジーの活用に必要以上に慎重になりすぎているところはあると思うんですね。

新しいテクノロジーというのは、ある程度使ってみて、PDCAサイクルを回すくらいじゃないと、本当にいいものというのはなかなか出てこないと思います。新しい技術にトライしていくような企業が増えていくと、もっともっと人事領域でのHRテック活用も、進んでいくのではと思います。

【2018年5月、ソフトバンク株式会社本社にて取材:聞き手、撮影 @人事編集部】

企業プロフィール

ソフトバンク株式会社
「情報革命で人々を幸せに」を経営理念に掲げるソフトバンクグループの主要グループ企業。移動通信サービスや携帯端末の販売、固定通信サービスなどの提供を手がける。従業員は約17,200名(2018年3月末時点)。サービス開始は1994年。本社は東京都港区東新橋。

【編集部より】
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