「働き方改革推進支援センター」取材レポート
「働き方改革」を無料で相談できる! 知られざる厚労省の相談窓口に電話してみた
2018.05.31
「働き方改革」について調べていたある日、厚生労働省のサイトで気になる情報を見つけた。従業員の待遇改善に向けて取り組もうとする会社向けに、国が無料の相談窓口を設けているというのだ。小さな会社の経営者でもある筆者はさっそくこの知られざる相談窓口に電話をかけ、自社の働き方改革に向けて相談をしてみた。
全国47都道府県に無料相談窓口があるって知ってた?
相談窓口の名前は「働き方改革推進支援センター」。2018年4月に開設されたばかりで、知名度が低いのも少し頷ける。厚労省のサイト上(※1)には、「働き方改革に向けて、特に中小企業・小規模事業者の方々が抱える様々な課題に対応するため、ワンストップ相談窓口として(中略)47都道府県に開設します」と記されている。
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000198331.html
具体的な相談項目の例として挙げられているのは、「非正規の方の待遇をよくしたい」「人手不足に対応するため、どのようにしたらよいか教えてほしい」「賃金引上げに活用できる国の支援制度を知りたい」など。相談窓口は全国47都道府県ごとにあり、各センターの社会保険労務士らの専門家が無料で相談に乗り、アドバイスをしてくれるとのことだ。
筆者は2016年に小さな会社を立ち上げており、働いてくれている従業員の方々の待遇を今後もっと上げるときにどんな方法があるだろうか?国の支援制度などで活用できるものがあるのだろうか?との疑問を持っていたため、その点を相談窓口に連絡してみることにした。
社労士らの専門家が会社まで来てくれる!
同センターへの連絡先は、厚労省のサイト上(※2)に一覧で掲載されている。さっそく、会社のある県のセンターに電話をかけてみた。対応してくれた男性に、まずは前述の相談したい内容を簡単に説明。男性によると「その相談内容でしたら、電話よりも面談のほうがよさそうですね」とのことで、「一両日中に担当する社労士から折り返し電話をする」と話してくれた。
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11650000-Shokugyouanteikyokuhakenyukiroudoutaisakubu/0000206160.pdf
担当の社労士の方から電話が来たのは、それからわずか約15分後。面談は何とわざわざ会社まで来てくれるとのことで、2日後にアポイントを取ることができた。会社の業種や従業員数など、会社についてのいくつか簡単な質問に答えたあと、電話を切った。
対面相談で「キャリアアップ助成金」を正しく理解!
そして約束していた日時、社労士の方が会社を訪問してくれた。今後の従業員の待遇改善のために、紹介してくれたのは国の「キャリアアップ助成金」(※3)。非正規社員の待遇を改善するなどの成果が認められると、企業に一定の助成金が支払われるという「働き方改革」実現のための国の助成金だ。
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/part_haken/jigyounushi/career.html
これまでも存在は知っていたものの、サイトに掲載されている資料を読むだけでは複雑なコース編成と申請過程のために必要な条件がわかりづらく、考えるのを棚上げしてきた存在だった。今回、対面相談だからこそ、基本的な前提知識から、適用条件、申請までに必要な作業などの具体的な話まで、その場で一つ一つ気になったころを質問することができ、理解を深めることができた。
本当に「ワンストップ」? 国と専門家の距離感に感じた課題も
今回訪問してくれた社労士の方によると、筆者がかけた「働き方改革推進支援センター」の電話窓口は、県の社会保険労務士会につながる番号だったようだ。同会の中で「働き方改革推進支援センター」の窓口になっている担当者がおり、その担当者から同会の個別の社労士に依頼が来るのだという。
そのためこちらとしては厚労省の窓口から電話し、国としての見解を聴こうとしていたつもりが、社労士の方からは「労働局や厚労省に聞いてみないと分からない」と回答されることも多かった。説明を受けた助成金の細部が、後で調べると間違っているということもあった。同センターは「ワンストップ相談窓口」を謳っているが、実態としては国の相談窓口というよりも、地域の社労士があくまで個人的に持っている知見と経験の範囲で対応しているという印象を強く受けた。
それでも従業員にとって少しでも働きやすい職場を目指す中小企業にとって、無料で社労士ら専門家のアドバイスを聞くことができるのは非常に魅力的な機会だ。厚労省が地域の労働局、そして地域ごとの専門家を擁する同センターともっと連携した施策を取り、事業主により分かりやすく労働状況の改善策などをアドバイスできる体制ができれば、「働き方改革」を多くの企業が、より具体的で自分ごとの課題として実感し、行動に移すきっかけが作れるかもしれない。
執筆者紹介
安藤歩美(あんどう・あゆみ) 全国紙記者として東日本大震災の被災地報道や地方行政等を担当したのち独立。ニュースサイト「THE PAGE」でYahoo!ニュースに全国ニュースの解説記事を多数執筆。2016年、日本初のVR動画ニュースサイト TOHOKU360を立ち上げ、編集長に。東北各地を駆けめぐりながら、記事やVR動画などのさまざまな作品を企画・制作している。
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