企業力を強くする「福利厚生」
駅伝参加で一体感を醸成 「オレンジアーチ」独自の福利厚生とは
2015.06.05
社内部活動の促進や妊活休暇を取り入れるなど、ユニークな福利厚生を導入する企業が増えている。目指す方向性にマッチした福利厚生を導入することで、社員の意欲向上や離職率の低下などの効果が期待できる。今回、ユニークな福利厚生を導入している『オレンジアーチ』の取り組みを取材した。
駅伝参加を福利厚生に導入
本山代表はフルマラソンを3時間を切るタイムで走る俊足ランナー。駅伝3キロのベストタイムは10分48秒。
毎年11月に東京・台場で開催される「Nippon IT チャリティ駅伝」に、オレンジアーチは2013年から協賛スポンサーとして参加している。1周3キロのコースを走り、1チーム5人がタスキを渡していく。オレンジアーチの社員は25人ほどがランナーとして参加。通常1人3千円の大会参加料を会社が負担している。
オレンジアーチの本山功(もとやまいさお)代表がこの駅伝大会への参加を決めた理由は大きく2つある。社会的に立場の弱い未就労者を応援するという大会の趣旨に賛同したことと、社員の健康を促進するためだ。
PC作業が多い社員たちは、運動不足に陥りがちだ。駅伝のために練習することで、体を動かすきっかけになるのではないかと考えた。
しかし、本山代表が“ノリノリで社員たちに駅伝への参加を宣言した”ものの、社員の反応は悪かったという。「社長はまた何を言い出すんだという、それはもう白けた雰囲気でしたね」と本山代表は当時を振り返り、苦笑いする。
しかし本山代表は諦めない。社員の注目を引くため、自ら大会用に会社のロゴ入りオリジナルTシャツまで制作。一方で社員への呼びかけは駅伝担当として部長に一任した。社長が直接声をかけると、断れない社員が出てくる可能性もあり、強制ではなく、あくまでも自主的に参加者を募りたいという本山代表なりの配慮だった。
半年かけて社員たちに呼びかけた結果、初めて参加した2013年は大阪支社のメンバーを含め、全4チーム計20人が駅伝に参加した。
社員と向き合う姿勢が福利厚生にも反映
オレンジアーチの社員は顧客企業へ常駐して半年から数年単位でプロジェクトを推進するため、社員同士が顔を合わせる機会が極端に少ない。そのため、本山代表は飲み会や社員旅行など、社員同士が交流できる場をつくることを大事にしてきた。
駅伝でも初めて顔を合わせる社員たちが多くいたが、仕事を離れた解放感からかすぐに打ち解けていた。お揃いのTシャツを全員が着て走ったことも一体感を生んだ。しぶしぶ参加したはずの社員たちの間からは、いつの間にか「来年はどうする?」という声があがっていたという。
「福利厚生とは、社員の生活を豊かにするもの」と本山代表は考える。そこには「仕事上だけでなく、プライベートの時間や家族も含め、幸せであってほしい」という思いがある。オレンジアーチは創業から6年以上経ち(2015年7月時点)、現在の社員数は約110人になるが、これまでに一人も退職者が出ていない。本山代表が真摯に社員たちと向き合ってきたからこそ、この驚くべき定着率を誇っているのだろう。
社員の声
「新卒採用の面接で駅伝のことを聞いたときから参加を決めていました。
当日は初めて会う先輩たちがたくさんいて、プレッシャーもあったのですが、気さくな先輩ばかりですぐに打ち解けました。各チームの第一走者を新卒の同期が務め、全員でスタートラインに立ったのはいい思い出です。
駅伝をきっかけに継続して運動するようになり、健康になったと感じています」(福田智史さん)
紹介企業プロフィール
- 会社名
- 株式会社オレンジアーチ
- 所在地
- 東京・北千住
- 業務内容
- 情報システムコンサルタント・ソリューション販売など
- 設立
- 2008年11月
- URL
- http://www.orangearch.co.jp/
執筆者紹介
尾越まり恵(おごし・まりえ) フリーランスライター。福岡県北九州市生まれ。結婚情報誌ゼクシィの制作に携わり、2011年に独立。「女性の生き方」をテーマに取材・執筆を続けている。福山雅治、ホークスが好き。
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