株式会社TBMコーポレート・コミュニケーション本部・増田稜氏、執行役員・笹木隆之氏インタビュー
新素材「LIMEX」を生んだTBMの人事に大学生が抜擢された理由
2018.05.16
石灰石を原料とした新素材「LIMEX(ライメックス)」を生み出し、紙やプラスチックの代替製品を開発・製造・販売するTBM。2011年の創業以来、事業を成長させてきた背景には「人」の力がある。2017年10月よりHRデザイナーとして働いているのは、現役大学生の増田稜氏だ。なぜ大学在学中からTBMで働くに至ったのか、ヒトや組織に関わる仕事のやりがいや今後の展望について、増田氏の採用を決めた執行役員の笹木隆之氏とともに話を聞いた。
増田稜氏
株式会社TBM
コーポレート・コミュニケーション本部 HRデザイナー
兵庫県芦屋市生まれ。2014年、同志社大学経済学部に進学。3年次が終わったタイミングで休学し、株式会社サイバーエージェントグループで長期インターンを開始。HR領域での新規事業立ち上げで企画責任者を経験。2017年10月株式会社TBMに入社。大学に在学しながら、新卒及び中途採用全般・採用PR・組織文化の浸透・組織活性化を担当。
笹木隆之氏
株式会社TBM
執行役員 コーポレート・コミュニケーション本部
筑波大学卒業後、2013年株式会社電通に入社。未来創造グループにてアイディアを起点にした新規事業開発、新商品開発、店舗開発のプランニング及びプロデュ
人事業務にとどまらず、組織づくりに貢献
―増田さんは現役大学生でありながら、正社員として人事を担当されています。まずは現在のお仕事の内容を教えてください。
増田氏:
今は大きく中途採用業務と、組織活性を担当しています。
まず採用業務ですが、各本部でどのような人材が必要かという会社の方針から、その人材を採用するために必要な手段を考えます。ダイレクトリクルーティングや人材紹介会社などの選択から始まり、関係会社と協力して母集団形成、書類選考、面接といったプロセスをすべて担当しています。また、採用広報という観点で、自社のホームページやWantedlyを通じて応募者に向けた採用メッセージを考え、発信したりします。
次に組織活性業務ですが、週に1回、部門横断の「クレド会議」を実施しており、各部署から7人ほどのメンバーが集まります。TBMは「最強で最高のチームになろう」というスローガンを掲げています。「最強」とは目標を達成し続けることであり、「最高」とは仕事相手や仲間たちと感動し合えるという意味です。そんな組織になるために、今何が足りておらず、何をすればそれを補えるのかを考え、その場で具体的なアクションを決定し、率先して行います。
―増田さんが感じる仕事の難しさとは?
増田氏:
やはり会社が求める人材を採用することが難しいですね。今のTBMでは即戦力を求めています。現在の急成長フェーズの中で求めるスキルはかなり高いと実感しています。一方で、ビジネススキルだけでなく、TBMのカルチャーにマッチする人材であることがより大切です。そうなると、より難しいですよね。猫の手も借りたいようなフェーズでありますが、いい意味で採用には妥協しない風土が生まれています。自分たちが一緒に働きたい、本当に優秀だと思う人達を採用させていただいています。
そのため、とにかく多くの人と会うように心がけています。お取引させていただく人材会社様も増やし、さまざまなリクルーティングを試して流入経路を多くしています。以前は履歴書がピカイチの人と会うという選択をしてしまいがちでしたが、TBMに合うかどうかは会ってみないと分からないと実感しています。
―仕事の面白さはどんなところに感じていますか?
増田氏:
今はそもそも何事も初めてのことが多いのでワクワクしますね。必要な人材を採用するためにさまざまなアクションを自ら考え実施することも楽しいですし、自分が採用に携わった人が実際に入社して、活躍したり、既存のメンバーとコミュニケーションをとっているのを見るのは嬉しいですね。
また、採用以外にもいろいろな業務を任せてもらえることは非常に面白いです。最近は、一人で海外出張の機会もいただきました。また、採用や人事戦略は経営と密接に絡み合い、経営戦略を把握している必要がありますが、そのような上流の情報も笹木から随時共有してもらえます。会社経営など、普通新入社員がなかなか関われない点まで学べることはワクワクします。
会社のフェーズと事業の意義に惹かれて入社
―TBMに入社された経緯を教えてください。
増田氏:
もともと留学予定で、大学3年生のときにその資金を集めるために、バイトをしようと考えたんです。せっかくバイトをするなら面白いことをしたいと思って、3年生のテストが終わってすぐ、17年の2月に東京に出てきました。そしてサイバーエージェントで長期インターンという形で半年くらい働きました。
その後、夏くらいから留学しようと思って、留学先も決まっていたのですが、そんなときに知人の紹介で執行役員の笹木と会う機会がありました。
―留学を辞めて、TBMで働きたいと考えたのでしょうか?
増田氏:
最初、笹木に会う前はTBMで働くことは考えておらず、単純に話を聞いてみたいなと思ったんです。
1回目は銀座のカフェで会い、2回目には会社も見学させてもらい、実際にLIMEXに触れることもできました。この石灰石を使った新素材が非常に安価であり、水や木材を使用せずに紙やプラスチックの代替製品を製造できるという、TBMの事業の意義やポテンシャルに惹かれました。また、創立7年という成長途上のフェーズであること、更にTBMで働く笹木に魅力を感じ、選考プロセスに進むことを決めました。
株式会社TBMのWEBサイトで公開されている、石灰石からつくる新素材「LIMEX」の紹介ムービー
―正社員として働くとなると、学業との両立は難しくなります。採用されたら大学を退学するという決断もありましたか?
増田氏:
会社のフェーズやスピード感を考えたら、学業との両立は厳しいのではないかと考えましたし、退学してフルコミットで働く覚悟はありました。ただ、大学側が正社員での在学を許可してくれたのと、社長の山﨑が自分の人生を真剣に考えてくれ、卒業しなさいと言っていただき、4月から大学に復学しました。授業で発表があるときなどは関西に戻り、19年4月に卒業する予定です。
―今後の目標を教えてください。
増田氏:
必要な人材をきちんと採用できて、TBMという組織を語れる存在になりたいです。そのために自社の魅力を伝え、応募者に魅力を伝えていく必要があります。そのうえで、組織づくりや人材戦略の側から会社をリードできるスキルも身に付けていきたいと思います。
笹木にもよく言われますが、「今のTBMを楽しめ」は意識し続けたいと思います。
若手の優秀な人材は希望の星。どんどん暴れてほしい
―笹木さんにお伺いします。増田さんの第一印象はいかがでしたか?
笹木氏:
彼の知人がTBMで働いていて、「すごく賢い人だ」と会わせたがっていたんです。実際に会ってみると、その前評判の通り、賢いな、と。その賢さとは、思考のロジカルさだと思います。もう一つ、何か大きなことをしでかしそうだな、という雰囲気を感じました。
また、これまでの経験などを聞くと、ベンチャー志向が強く、自分の成長のためなら労力を惜しまず働きたいというような意欲を感じたんです。「おぉ、これは金の卵かな」という感覚でしたね。
最初の面談で、採用する可能性があることは示唆しました。入社する意思があればよく考えてほしい、と一回僕はボールを投げたんです。初めて会って、それくらいの話までいきましたね。
―最初から、増田さんに人事を任せたいと考えられたのですか?
笹木氏:
彼がサイバーエージェントで人事系の新規事業の立ち上げを経験していたので、その延長に入社後の仕事のイメージを持ちました。
また、人事の仕事も、ITやメディアリテラシーの低い人ではもう通用しない。そこに感度の高い増田であれば、年齢に関係なく十分に通用する力を発揮してくれるだろうと考えました。
2回目に会ったときにはもう、採用をメインとしつつ、組織や人事戦略全般の仕事を一緒にやりたいという話をしましたね。
会社自体は7年目に入り、今は第二創業期なのですが、組織という意味では今がまさに創業期だと考えています。この会社がこの先5年、10年と成長していったときに、創業期を知っている若手は、確実に未来のエースになれます。いまこの会社に入って、将来の組織を語れるような人材になってもらいたいと思いました。
―採用は人を選ぶ仕事です。経験値も必要だと思いますが、大学生という若さや経験の少なさに不安はなかったでしょうか?
笹木氏:
逆にそこを彼のユニークポイントにすればいいのではないかと思いました。もちろん、経験が必要になる部分もありますが、今の彼の仕事ぶりを見て、「大学生だから」と特別扱いする人は社内には誰もいません。
当社ではいまシニアの方もたくさん活躍してくださっており、そんな先輩方にもお話ししていただく機会をつくっています。限られた時間の中で、何の話を聞くかはすごく重要です。1日でも10日分の経験ができる1日もあると思っています。例えば入社して1週間ちょっとで、元々内閣総理大臣補佐官を務められた弊社の常勤監査役の加藤先生から「採用というのは、相手の人生を背負う覚悟が必要だ」という話を聞く。それは背筋が伸びますよね。本で読むのと、社会人の大先輩から直接伝えられるのとでは全然違うと思います。
―今後、増田さんに期待することは何でしょうか?
笹木氏:
この会社は新素材のLIMEXで地球を救ったり人類を救ったりする、そんな大それた挑戦をしている会社なので、挑戦者にとってはこれ以上ない環境であると思っています。
そういう意味で、増田にも挑戦し続けてほしい。そして、この会社の中でいい意味で暴れてもらいたいですね。経営戦略や人事戦略を統括的に推進する役回りを担い、会社をリードするんだという気持ちをもって突き進んでほしいなと思います。
当社の事業はまだ発展途上ではありますが、製造業で活躍する大学生の増田の存在は、日本のものづくりにとって希望の星ではないでしょうか。
「100億円をかけた挑戦」。非常識なスピードでLIMEXを広める
―最後に、今後のTBMの展望を聞かせてください。
笹木氏:
いま、補助金などを含め、100億円を超える資金をLIMEXの事業に対して調達させていただいています。我々は「100億円をかけた挑戦」などと言っていますが、これはスケールの大きさを伝えたいというより、それだけ大きな責任と期待を背負った事業だということです。だから、何としてでも成功させるしかありません。
そのためにいま、日本を代表する大企業とのオープンイノベーションも推進しています。また、本格的な海外展開を推進しています。一例として、サウジアラビアにてLIMEXの工場を作る計画も進んでいます。LIMEXの製品そのものの輸出ではなく、エコシステムをまるごと輸出できる、そんなグローバル展開を進めています。
この100億円を懸けた挑戦は、人の力によって100億円を何倍、何十倍、何百倍にできるかどうかの挑戦でもあると思っています。
今後、国内外において、非常識なスピードでLIMEXを広めていきたいと思っています。
―ありがとうございました。
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執筆者紹介
尾越まり恵(おごし・まりえ) フリーランスライター。福岡県北九州市生まれ。結婚情報誌ゼクシィの制作に携わり、2011年に独立。「女性の生き方」をテーマに取材・執筆を続けている。福山雅治、ホークスが好き。
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