コラム

「内定力」著者・酒場のマスターの就活コラム


優秀であっても女子の就活は厳しい? 男女比を合わせる意味を問う

2018.04.25

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目次
  1. 「優秀な女子学生」と「元気のない男子学生」
  2. 採用数の男女比調整は、本当に必要ですか?
  3. 「女性は長く働かない(働けない)」という認識を再考する
  4. 就活では、学生も人事も「まずは思い込みを捨てよう」
  5. 男女比より気にするべきは、だれもが能力を発揮できる環境
  6. 積極的な女性の採用と制度の新設が、より良い会社をつくる

「優秀な女子学生」と「元気のない男子学生」

「男子学生にはゲタを履かせないと、採用目標に至らない」
「素直に同じように評価をしたら、最終選考に残るのが女子学生ばかりになる」
「エネルギーの高い男子学生に出会う機会が減ったね」

新卒採用の現場では、しばらく前から上記のような言葉がよく聞かれます。多くの人事の方が感じている、いわゆる「就活男女格差」問題ですが、ここ数年で、この現象に拍車がかかってきているように思います。

私自身も飲み屋の人間としてこの10年間、毎日のように学生たちと会って、一緒にお酒を飲みながら彼らの大学生活の話をしたり、恋愛や就職活動の相談にのったりと、多くの学生たちと接してきました。

そんな中でも、特にこの3,4年ほど、「優秀な女子学生」「元気のない男子学生」の差が、更に顕著になっているのを感じます。

もともと学生が多い店ですが、社会人のお客さんも20代から50代、ときには60代の方も来る中で、彼らと楽しそうに会話をするのは、ほとんどが女子学生。

かつては社会人と議論をしたり、上手に会話を盛り上げたり、もしくは噛み付いたりする男子学生もいました。しかし、ここ数年ではそんな男子学生を目にする機会も少なくなり、最近ではカウンターの隅でおとなしく横目で話を聞いているだけ。もしくは、気心の知れた仲間内だけで盛り上がっていることが多くなりました。

日々そんな学生たちを見ていることもあり、最前線で学生たちの「男女格差」に頭を悩ませている採用担当者の方々の課題意識は、それなりに想像できるつもりでいます。

採用数の男女比調整は、本当に必要ですか?

とはいえ、だからこそ採用に携わる方々は、いま一度、この男女格差について考えてみてはどうかとも思うのです。

「女子学生をそのまま評価をすると、女性の内定者が増えてしまう。そのために男子学生にはゲタを履かせて解釈を拡げることで、採用数の男女比を調整している」。

そんな状況に直面して、「確かにそうせざるを得ないよね」と、感じているとしましょう。

そこで、そうした「常識」と思っているものについて、感覚そのものを改めて疑って、検証してみてはいかがでしょうか。

結論から言えば「男女かまわず、“優秀”なら採用しちゃいませんか?」ということです。

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もちろん採用活動は、イコール経営活動です。

社員の人生を預かる責任、そこで生じるコストやリスク、それらについては長期的視野で考える必要があります。そう簡単に「じゃあ、男女比なんて考えずに採用してしまおう」と言えるようなテーマではないことは重々承知しています。

しかしながら、「優秀なのに、女性だから採らない」ということには、やはり矛盾があり、そこに根本的な問題解決の糸口があるように思えてならないのです。

「女性は長く働かない(働けない)」という認識を再考する

この問題のそもそもの前提となるのは「女性は長く働かない(働けない)」ということです。

女性の場合は、選考時はもちろん、入社後も早期に戦力として期待できる人が多い一方で、男性は戦力化に時間がかかるケースが多い。そして男性は長く働き続けてくれるけれど、女性は結婚や出産といったライフイベントで退職の可能性が高い。そのため、女性を多く採用することは、企業経営においてもリスクになる。

「だから、女子学生は優秀だけれど、採用を抑制せざるをえない」

 本当に、そうなのでしょうか?

その場合、「女性は辞める」のは、どの程度の事実・確率なのでしょうか。

優秀な女性を採るリスクと、採らないことでの機会損失はどうでしょうか。

そして、「辞める」までの費用対効果は、男女でどれくらいの違いがあるのでしょうか?

もし「女性はどうせ辞めるから」という先入観や、ただ「男性のほうが長く働いてくれそうだし」という期待値だけで、「男子学生にゲタを履かせて」「内定者の男女比のバランスを」と考えてしまうとしたら、「それは過去の経験からの“思い込み”という可能性はないでしょうか?」と聞きたくなってしまうのです。

就活では、学生も人事も「まずは思い込みを捨てよう」

私は学生たちに「まずは思い込みを捨てよう」と伝えています。

彼らは「営業職はノルマが厳しい」、「〇〇業界はブラックだ」、「企画職以外は面白そうじゃない」など、実際の企業や社会を知らないがために、それを“思い込み”で補完します。その最たるところが「就活はしんどいものだ」です。

そうした“思い込み”によって、彼ら学生たちがせっかくの可能性を捨ててしまわないように、より良い社会人生活を送れるように、私は彼らに「思い込みを捨てよう」と言っています。

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同じ意味で、採用にかかわる方々にも一旦考えていただきたいのです。

「女性はすぐに辞める」から「採用するにはリスクが高い」のは事実でしょうか。

そこに、思い込みの可能性はないでしょうか。

仕事を続けたいのに「辞めざるを得ない」と感じている女性社員向けに、できる施策はないでしょうか?

そこに対応することは、より事業にドライブをかけられるチャンスだと思うのです。

男女比より気にするべきは、だれもが能力を発揮できる環境

たとえば、この記事を書くにあたって今年の就活中の女子学生に話を聞いてみたところ、大半の学生は「結婚しても仕事を続けたい」という答えでした。もちろん就職活動のために用意された言葉ではなく、彼女たちの素の言葉です。

彼女たちが言うには「ちゃんと自分で稼げる人でありたい」、「社会と広く接し続けて成長していきたい」、「人任せの人生にしたくない」、「そもそもそんなに結婚を重視していない」中には「私が家族を守っていくために働き続ける」という意見もありました。

過去の卒業生でも、住宅設備メーカーに就職して工事現場でのエクステリア(住宅の外装商品)の営業をしている女性は、百数十人の営業の中で唯一の女性営業として、結婚した今も全国トップ10に入る活躍をしています。CM制作の会社で同期の男性が次々と辞めていく中で、唯一人の女性社員として活躍している人もいます。

私の前職での同僚では、入社3年目で5000万円の粗利を生み出していた女性社員もいましたし、同じく私の上司だった女性は、結婚して子どもを育てながら、最前線で新しい価値を生み出す仕事をされています。

そうした事象を見ていると、「女子学生が優秀だけれど、男女比を考えると調整しなくては……」という考え方は、今の社会でどれほどの整合性があるのだろう、と訝ってしまうのです。

積極的な女性の採用と制度の新設が、より良い会社をつくる

私の前職の会社は、私が入社した時点では140人程度の小さな会社でした。

多くの女性社員が活躍していて、全国の営業職のトップ3を入社3,4年目の女性社員が占めることもありましたが、当時は女性社員向けの制度が充実していたとは言えません。しかし、そうした女性社員が結婚を控え、出産・育児をする事例が増えるにつれて、新しい制度が生まれていく。それで現在は、当時とは見違えるほどの制度が充実した会社になっており、業績も好調なようです。

「女性は辞めるから」といって採用を制限・抑制するよりも、むしろ積極的に採用することで、女性が活躍できる環境や制度を生み出していく。その方が、会社としても社会的にも、より健全な採用活動になるのではないか、と私は思うのです。

もちろん採用の選考の段階で、「とりあえずは内定を!」と考えてしまう彼女たちの本音を見抜けるかどうかという課題もあるでしょう。しかし、それこそが採用のプロとしての腕の見せどころです。学生や社員の本音を引き出し、それに応えられる環境や制度をつくり上げていくことこそが、人事の存在価値だと、私は考えています。

四季報などで採用情報を公開している企業においても、ここ数年で採用人数における女性比率は年々向上しています。学生の現況や社会の趨勢を踏まえても、「優秀だけれど、採用できない」よりも「優秀だからこそ採用して、長く活躍できるように」という企業が増えていくことが、より多くの方々にとって価値が生まれるのではないかと思います。

優秀な女子学生たちが不利な採用環境にならないよう、多くの企業が優秀な社員(男女限らず)を採用できるようになることを願っています。

執筆者紹介

光城悠人(みつしろゆうと) 立命館大学卒業後、エン・ジャパン(株)に入社。営業・ライター・クリエイティブディレクターとして7年間従事。退職後に、学生が新しい価値観に出会えるコミュニティの実現を目指し、2008年に京都で猿基地を開業。年間を通して学生とかかわる中で、「8キャラ」や「ぼうけんの書」などを活用した新しい就活の形として「就活ゲーム」を構築し、『内定力』(すばる舎)に著している。公式ブログ:『楽しく、気持ち良く、適当に。』

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