副業新時代~株式会社ビースタイル担当者インタビューvol.1
“踊る広報”柴田菜々子さんに聞く、週3日勤務×パラレルキャリアという生き方
2018.05.14
Photo by 佐藤瑞希
2018年1月、厚生労働省は 政府の「働き方改革実行計画」をふまえ、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を策定した。「働き方改革」も本格化し、国として副業・兼業を促進する動きが大きくなるなど、2018年は、これまでの日本の働き方が大きく転換する節目の年と言えるかもしれない。
今回は、株式会社ビースタイルで週3日勤務の「短時間社員」として勤務しながら、ダンサーとしても活躍を続ける、柴田菜々子さんにインタビューを行った。柴田さんの言葉には、これからの時代の「仕事と人生」「会社と個人」を考える、多くのヒントが詰まっている。
柴田菜々子さん
株式会社ビースタイル 広報
1990年静岡出身、桜美林大学卒業。8歳より新体操を始め、中学時代には県指定強化選手として全国大会に2度出場。大学ではダンス専攻に進み、コンテンポラリーダンスを始める。卒業後は株式会社ビースタイルに入社、広報を担当。2015年7月より同社で働き方を変え、週3日はビースタイル社員として勤務、週4日はダンス活動に当てる。「踊る広報」として仕事とダンスの両立、コンテンポラリーダンスの普及に励む。
2015年から週3日勤務の社員として広報を担う
──現在、御社で行っているお仕事内容を教えてください。
柴田さん:
ビースタイルグループで広報業務全般を行っています。具体的には、ビースタイルと子会社のネオべジでの広報ですね。私がしている広報の仕事は大きく分けると3つです。
1つは「情報をつくる」ということですね。リリースになるようなイベントを仕掛けたり最近の市場動向だとかをチェックしたり、調査をする部分。2つ目は実際にリリースを書くという仕事。3つ目はメディアさんとのやりとりですね。関係性をつくったり、取材対応をしたり。私が主にやっている部分は、1番目と3番目です。
──ビースタイルさんではいつ頃から働かれていますか?
柴田さん:
2013年に新卒で入社して、約2年半はフルタイムで働いていました。2015年の7月から週3日勤務で働いています。
時短社員を検討しはじめたきっかけは自社企画「ゆるい就職」
──週3日勤務をはじめたきっかけはありますか?
柴田さん:
ひとつは2014年に弊社で実施した企画「ゆるい就職」ですね。これは「週休4日、月収15万で働こう」というテーマの人材派遣・紹介サービスで、この企画に関わる中で、「こういう働き方っておもしろいな」と思ったというのがひとつあります。
柴田さん:
でも、実際に自分ができるとは思ってなかったし、会社自体にそういう働き方を受け入れてもらえるとも思っていなかったので、入社して2年目のころはずっともやもやしていたんです。「ダンスもやりたいんだけど、どうしようかな」と1年くらいずっともやもやしていて。それで、一回振り切ろうと思って、辞めることにしたんです。
一度は辞職を考えたものの、代表の言葉が転機に
──辞職されるつもりだったんですね。
柴田さん:
はい。ただ、上司に相談して、代表の三原と話をしたら「ダンスと仕事とプライベートを、全部『AND実現』できる方法を考えてみたら?」と逆に提案されたんですね。
──「AND実現」というのは?
柴田さん:
ビースタイルのクレドのなかに『AND実現』という理念があるんですね。日々何かやりたいことがあった時に『OR』でどちらかを取るのではなくて、『AND』でどちらも実現できる方法はないか考えようという考え方です。そのときの代表の三原の一言が、すごく大きかったですね。
それから、真剣にダンスと仕事を「AND実現」する方法を考えたときに、参考になったのが「ゆるい就職」の考え方です。1年間のスケジュールに、自分の出たいコンテストや、創作に充てたい時間を当てはめていったら「あ、週3日であれば働ける」と気づいて。それで、今度は私から代表に提案させてもらって、今の働き方が始まりました。
時短勤務になってから「成果」への意識がより強くなった
──「週3日勤務」を始めてから、大きく変わったことはありましたか?
柴田さん:
「中途半端に見られる」っていうことはリスクとしてあるなと思って、それでこの働き方を始めた時点で、「絶対成果を出そう」という思いが強くなりました。成果も残していなくて、言ったことができてないのに、違うところもやっているとなったら「おいおい」と思われますよね。だから、今の働き方をはじめてからの方が、「成果」にはシビアになっていますね。
──なるほど。それぞれのお仕事には、週にどの程度の時間を使っていますか?
柴田さん:
ビースタイルの仕事が週3日で、ダンスに使ってる時間は月によって変わるんですけど、週3~4日くらいですね。
──それは、かなり忙しそうですね。
柴田さん:
時間的には忙しいんですけど、稽古がオフになればオフになりますし、自分が好きなことをやってるので全然ストレスにはならないですね。プラス、この(週3日勤務はじめてからの)2年間で、心というか、精神的にはすごく豊かになってますね。好きなことができてるので。
いいものは、心に余裕がないと生まれない
──時間的余裕がなくても、心は豊かになっている。
柴田さん:
そうですね。一言で言うと、人生の満足度が高いです。ダンスをしていて思うのが、いいものって、心に余裕がないと生まれないと思うんです。もちろん、追い詰めて追い詰めて生まれるものもあるとは思うんですけど、基本的には、自分の心に余裕がなかったり、豊かじゃないといいものは生まれないと思っていて。これはダンスに限らず、なにかをつくる仕事は、基本的にもそうだと思います。
ダンサーの友達とも話すんですけど、ダンスで稼げる人は多くないから、バイトをしている人がほとんどで、そうすると、困窮しちゃうんですよね。生活費の心配だったり、今後の将来の心配っていうものがつきまとってきてしまうのも事実で。
安定した基盤がないと、創作活動を続けることは難しいし、いいものをつくる環境を整えるのも難しい。週3日勤務での社員という働き方は、その「安心した基盤」になっていて、その上でダンスができるって、幸せなことだなと思います。
複数のコミュニティに所属することで、相互に好影響がある
──ダンスがビースタイルの仕事に与えている影響、ビースタイルでの仕事がダンスに与えている影響があれば、教えていただけますか?
柴田さん:
相互作用は本当にいろいろあるなと感じていて、まずは、どちらかがうまくいかなかったときに、もう片方が心の支えになる、ということがありますね。他には、私はビースタイルでは「踊る広報」と名乗ってるんですけど、その肩書のおかげで、覚えてもらいやすいというのはありがたいですね。人とお会いするのが多い仕事なので。
それと、会社のコミュニティと、ダンスのコミュニティという全然違うコミュニティに身を置いているので、会社の人がダンスを観に来てくれることも増えていて、それがとてもありがたいです。他には、ビースタイルの仕事の中で、何かを企画する、段取りを組むということが身に付いているので、何かダンスの公演をする、イベントをする際にスムーズにこなせるようになりましたね。
──なるほど。ダンスにもさまざまなジャンルがあると思うのですが、どういったジャンルで活動されているんですか?
柴田さん:
コンテンポラリーダンスという比較的ジャンルでいうと新しいものですね。最近でいうと、例えば女優の土屋太鳳さんが「Sia」という海外アーティストのPVで踊ってたりとか、少しずつ認知度自体は上がってるんですけど、まだまだヒップホップやシアタージャズ、タップなどに比べたら圧倒的に認知度が低いジャンルですね。
Sia日本版ミュージックビデオ 『アライヴ feat. 土屋太鳳 / Alive feat. Tao Tsuchiya』(Sony Music)
社会とダンスの架け橋になる
──今後、柴田さん自身がやっていきたいことがあれば、教えてください。
柴田さん:
社会とダンスとの架け橋になることにすごく興味があります。アーティストの方には、基本的に自分が表現したいもの、やりたいことをやる方が多いので、そこまで積極的に一般の方の声を聞く機会がないところがあるんですね。幸い、私はこういう(複業という)形で複数のコミュニティにも所属しているので、周りの声や、ダンスに興味のない一般の方の声を聞く機会があって、自分の方から周りの声を聞こうとするようになったんです。たとえば、どういう企画やダンスだったら見に行きたいか、といったことですね。聞けば聞くほど感じるのは、「わかりやすさ」と「コラボレーション」の大切さです。
「体だけじゃなくて、映像や生演奏や何かしらプラスアルファがあるだけで、見てる側からすると一気に分かりやすくなる」といった話を聞いて、それを実現する提案をしたりだとかもしますし。他には「場所」ですね。普段は劇場やギャラリーでやることとか多かったんですけど、普段やらないような「面白い場所」でやると、お客さんの反応もいいこともわかったんです。
──「面白い場所」というと、例えば、どんな場所ですか?
柴田さん:
例えば、東高円寺にライブハウスがあるんですけど、そのライブハウスはとても昭和レトロな舞台で、ライブハウスとしては珍しく、半円の舞台で赤いカーテンで開け閉めできるようになってるんです。毒々しくて、レトロで可愛い雰囲気なんですけど。
柴田さん:
その場所で「ショーパブ」をテーマに踊ったとき、みなさんの反応がよくて、そのときに「場所が面白かったり、コンセプトが面白いと、人は集まってくれるんだな」って気づいたんですね。でも、それって実は仕事も一緒で。「イベントやります」と言った時に、集客がうまくいくかどうかは、「テーマ」と「人」と「打ち出し方」で変わるので、改めてそういう所ってすごく大事だなと感じたんです。自分が何を表現したいかも大事なんですけど、多くの人に何かを見てもらいたいと思ったら、そういう「面白い」と思ってもらえるポイントをいくつ作れるかが、仕事でも芸術でも大事なんだと思います。
広報という仕事は、社会と会社の架け橋
柴田さん:
実は、この「架け橋」って考え方は広報の仕事にも言えて、広報は、社会と会社の架け橋なんですね。広報がいなければ、知られなくて埋もれてしまう会社さんやサービスっていっぱいあって、本当はすごい会社なのに、toB向けサービスだから知られていないとか、すごくもったいないなぁと思うんです。
だから私が目指しているものはやっぱり「架け橋」だなと思って、そんな役割に会社の方でもダンスの方でもなれればと思っています。今の働き方をはじめてから特に「やってきたことは、全てつながっていくんだな」と感じています。
【編集部より】
ビースタイル人事・岩本さんに「企業が複業を認めるメリット」を、柴田さんに「複業に向いている方の2つの特徴」をお聞きした続編記事はこちら。
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