林修三先生のなるほど人事講座
面接官が身に付けておきたい「アクティブリスニング」2つのポイント
2018.04.13

2019年卒学生に向けた採用広報活動解禁から1ヶ月超となりました。世間的には、早いところでは既に内々定出しが始まっているようですが、多くの企業では面接が随時進んでいるといった段階かと思います。
相変わらずの売り手市場という様相が続いている中で、少しでも応募学生の本音を引き出し、自社に惹きつけるためには、学生との接点がある全ての段階で、自社への好感度を高める対応が必須です。筆者は、「アクティブリスニング」こそ、その切り札になる技術だと考えており、今回はそのアクティブリスニングの基礎中の基礎についてご紹介してまいります。
アクティブリスニング(傾聴)の概要
「アクティブリスニング」というのはアメリカ生まれの概念で、一般的には「傾聴」という訳語で表現されています。この「傾聴」という言葉には聞き覚えのある方が多いかもしれません。しかし、「傾聴」という言葉はその字義ゆえに受身的な聴き方をするニュアンスで解釈されてしまうことが多く、筆者は原語通り「アクティブリスニング」という表現をそのまま使用したほうが、より正確な意味合いになると考えています。
アクティブリスニングで求められる、2つの基本姿勢
アクティブリスニングというのは、文字通り「積極的(アクティブ)に、聴く(リスニング)」という行為で、決して受け身的な行為ではありません。むしろ、相手にどんどん話をしていってもらえるようにこちらからさまざまな働きかけをしていくという、文字通りアクティブな行為です。けれども、「聴く」というのは通常受け身的な行為だと考えられていますので、一見矛盾しているように思えてしまいます。
この一見矛盾するように思える2つのものが結び付くためには、二つの基本姿勢が必要となります。一つは、「(コミュニケーション相手への)好意的関心」、もう一つは「共感的理解」と呼ばれるものです。
面接時に必要となるのは、対象者への「好意的関心」
好意的関心とは、平たく言えば「この人の考え方や経験についてもっと知りたい! 理解したい!」とポジティブに思う意識のことです。
例えば自社を志望している学生がいるとして、「なんでこの学生はウチで働きたいと思ってくれているんだろうか?」「その考え方は、どのような経験・環境によって培われてきたんだろうか?」「どういう経緯でそのような経験をするに至ったんだろうか?」などについて、ワクワクした気持ちで考えられていれば、好意的関心としてはほぼパーフェクトです。
逆に「ダメなところを探そう」「矛盾点を突いてやろう」といった気持ちで面接に臨んでいる方は、相手への好意的関心が低いと言えます。たとえ年下の学生であっても、相手をリスペクトし、知的好奇心に近いような気持ちで関心を持つことが重要です。
この好意的関心を持って相手の話を聴くことで、相手は「この人は自分のことを(良い意味で)知りたいと思ってくれている」という気持ちを抱くようになります。その結果、より一層話すことへの意欲が高まっていくことになります。聴く側からすれば、相手の人物像把握がより進みやすくなるということです。
アクティブリスニングの基礎「共感的理解」とは?
共感的理解とは、相手の気持ちや過去の言動などについて、その背景になる価値観などにも共感を示しながら理解するということです。ただし、ここでいう「共感」というのは、一般的な意味での共感とは若干異なります。
一口に「共感」と言っても、実は2種類の共感が存在します。一つは一般的な意味での共感、もう一つはカウンセラー的共感です。
一般的な共感と「カウンセラー的共感」の違い
例えば、応募学生が「アルバイトの先輩に○○と言われたのがすごくショックで……」という話をしてきたというケースで考えてみましょう。端的に言えば、
「うん、たしかにそう言われたらショックだよね」と返すのが一般的な意味での共感。
「なるほど、そう言われてすごくショックに感じたんですね」と返すのがカウンセラー的共感です。
さてこの2つ、何が違うと思いますか?
答えは、「自分の価値観を表に出しているかいないか」という点です。
前者は「私もそう言われたらショックに感じるだろう」という自分自身の価値観を表明しているのに対し、後者は「あなたがそう言われてショックを受けたということを私は理解した」ということの表明に過ぎず、自分自身の価値観については触れていません。
別の言い方をすると、前者は自分にフォーカスを当てた発言、後者は相手にフォーカスを当てた発言、ということになります。
「共感的理解」を促進するコミュニケーション方法
共感的理解というのは、この後者(カウンセラー的共感)のように、常に相手にフォーカスを当てながら相手のことを理解していこうとするコミュニケーションの取り方です。
相手方からすれば、話全体の主導権が委ねられつつ、自分の話を正確に理解してもらっている気持ちが高まることになりますので、こちらに対する相手の好感度も上がり、採用面接であれば自社への好感度アップにも繋がっていくことになります。
「好意的関心」と「共感的理解」が面接成功のカギに
この「好意的関心」と「共感的理解」を常に相手に示しながら会話を進めることで、相手に多く話をしてもらいつつ、好感度アップも図ることができます。そしてこの2つを示していくためには、受け身ではなく、絶えずこちらからの意図的なアプローチが必須となります。だからこそ、「アクティブ」リスニングなんですね。
アクティブリスニングの細かな技法を紹介した本や記事は世の中に数多く存在します。しかし、それらの技法のほとんどは今回ご紹介した二つの基本姿勢を土台にして開発されているものになりますので、個々の技法を身に付ける前段階として、ぜひこの二つの基本姿勢を意識なさってみてください。
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執筆者紹介

林修三(はやし・しゅうぞう)(株式会社ヒュームコンサルティング代表取締役) 1975年生まれ。仙台市在住。東北大学法学部を卒業後、大手自動車部品メーカーの経営企画職~IT企業の人事・採用職を経て現職。現在は東北地方の複数の大学でキャリア系科目講師として学生の就職指導に努めるほか、人事・採用コンサルタントとしても活動中。
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