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改正障害者雇用促進法解説 Vol.3


障害者雇用納付金と特例子会社制度のポイント

2018.04.25

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2018年4月1日から、障害者雇用促進法の改正が施行されました。「初めて障害者雇用義務が発生するとき押さえておきたいポイント」、「障害を持つ雇用者のカウント方法と、実務上の確認方法」の記事に引き続き、今回の改正内容と、人事担当者が対応すべきポイントについて説明します。今回は特に、100人を超える企業に当てはまる、障害者雇用納付金制度や特例子会社関係の制度について解説します。

【1】2018年4月1日施行の障害者雇用促進法の改正内容

まず、2018年4月1日に施行された改正の内容を確認しておきます。

(1)法定雇用率の引き上げと障害者雇用義務のある企業の拡大

今回の改正では、法定雇用率の引き上げが行われ、民間企業は改正前の2.0%から2.2%となりました。これに連動して、障害者の雇用義務のある事業主の範囲が、改正前の50人以上から45.5人以上に拡大されました。新しく障害者雇用義務が生じる企業の方は、とくに注意が必要です。

(2)精神障害者の雇用義務化について

これまでは法令の記載上、障害者雇用の義務があるのは、身体障害者と知的障害者のみとなっていました。今回から障害者の種別の記載がなくなり、精神障害者が対象に加わります。ただし、法令上の扱いが変わるのみで、必ずしも精神障害者の雇用を強制されるわけではありません。

(3)今後のさらなる改正について

2021年4月までに、法定雇用率は2.3%となります。具体的な引き上げ時期は、今後の労働政策審議会で議論される扱いとなっています。障害者雇用の法定雇用率が2.3%になった場合は、同時に対象となる事業主の範囲が従業員数43.5人以上に拡大されます。

【2】障害者雇用納付金および関連する制度

前項目のように、45.5人以上の常時雇用労働者数がいる企業において、障害者雇用が義務づけられることになりましたが、さらに100人を超える(100.5人以上)企業については、障害者雇用納付金制度が適用されます。

(1)障害者雇用納付金制度とは

障害者の雇用に伴う事業主の経済的負担の調整を図るとともに、全体としての障害者の雇用水準を引き上げることを目的に、障害者雇用納付金の徴収、障害者雇用調整金、その他報奨金や各種の助成金の支給を行う制度です。

法定雇用率を下回る場合は、障害者雇用納付金を納付する必要があり、上回る場合は、調整金の支給申請ができます。なお、2018年の申告時は、適用する法定雇用率は2.0%。2019年の申告時より2.2%になります。

本制度の対象となる企業は、原則、年度内で常時雇用労働者数が100人を超える月が5カ月以上ある企業です。この規模の企業は、法定雇用率を達成しているかどうかに関わらず、障害者雇用納付金の申告を行う義務があります。提出先は主たる事業所の所在地を管轄する独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構の各都道府県申告申請窓口となります。

(2)納付金と調整金の詳細

障害者雇用納付金とは、法定雇用率を下回った場合に徴収されるもので、1人当たり月額50,000円を申告と同時に納付します。なお、年度内で常時雇用する労働者数が8カ月以上100人を超え200人以下の事業主は、2020年3月31日までは、納付金の額が1人当たり月額50,000円から40,000円に減額されます。

障害者雇用調整金とは、法定雇用率を上回った場合に申請に基づき支給されるもので、1人当たり月額27,000円が支給されます。2018年の申告期間は4月1日~5月15日となっています。

(3)100人以下の企業の報奨金についての補足

100人以下の企業は申告義務はありませんが、一定の数を超えて障害者を雇用している場合は申告により、1人当たり月額21,000円が報奨金として支給されます(申告時期は4/1~7/31まで)。

(4)在宅就業障害者特例調整金・在宅就業障害者特例報奨金

関連した制度として、在宅就業障害者支援のための、在宅就業障害者特例調整金・在宅就業障害者特例報奨金の支給もあります。

在宅就業障害者に仕事を発注する企業、あるいは企業が登録を受けた在宅就業支援団体を介して在宅就業障害者に発注した場合に適用されますので、自社の雇用でない発注に対する報奨金の制度となります。金額は発注額に応じて計算されます。詳細は厚生労働省等の情報で確認してください。

以上のように、100人を超える規模の企業については、障害者雇用納付金関係の制度への対応が必要となります。また、上記以外にも様々な助成金制度があります。申告手続きや助成金制度の活用にあたっては、社会保険労務士等の専門家や、ハローワークなどの行政機関によく確認し、確実に行っていくことが重要となります。

【3】特例子会社制度および関連する制度

障害者雇用義務の責任単位は「企業」であり、それが雇用義務制度の原則です。ただし、いくつかの条件をクリアした場合に法人格の異なる組織体を合算することができます。それがこの特例子会社制度です。

障害者雇用率制度では、障害者の雇用は、それぞれの事業主ごとに義務づけられています。しかし、企業によっては業種や規模などの様々な理由から、障害者雇用を進めるのが現実的には難しい場合もあります。そのため、事業主が障害者の雇用に特別の配慮をした子会社を設立し、一定の要件を満たす場合には、特例としてその子会社に雇用されている労働者を親会社に雇用されているものとみなして、実雇用率を算定できるようになっています。これが特例子会社です。

特別の配慮をした子会社を積極的に認めていくことにより、多様な働き方を可能にするという政策目的を実現していくための制度となります。

(1)特例子会社制度の詳細について

一般的な特例子会社の趣旨は以上の通りですが、特例子会社制度全体の中では、いわゆる一般的な特例子会社は「関係会社特例」と呼ばれています。関係会社特例において、特例子会社として認定されるには詳細な要件があるため、概略を次の項目に記載します。

また、特例子会社に関係した制度として、必ずしも子会社を設立しなくても雇用率を合算できる「企業グループ算定特例」、複数の中小企業で雇用率を合算できる「事業協同組合等算定特例」などが存在しますので、これらについても概略を記載します。

(2)関係会社特例、いわゆる一般的な特例子会社の詳細要件

特例子会社は完全子会社の形で設立される場合が多いですが、地方公共団体と民間企業とが共同出資して設置した、第3セクターの形をとっているところもあります。

(3)親会社の認定要件

親会社が、当該子会社の意思決定機関(株主総会等)を支配していること。典型的には、子会社の議決権の過半数を有している連結決算対象子会社として、対象の子会社との体制が整備されていることなどが必要となります。

(4)子会社の主な認定要件

特例子会社として認められるための要件が複数あります。まず、親事業主との人的関係が緊密であること。具体的には親事業主からの役員派遣、従業員出向など人的交流が密である場合などです。

その上で、障害者の雇用者数や体制上の要件があります。常用雇用障害者が5人以上で、全常用雇用者に占める割合が20%以上であること。 また、常用雇用障害者に占める重度身体障害者、知的障害者及び精神障害者の割合が30%以上であること。

また、子会社の体制が、障害者の雇用管理を適切に行うに足りるものであることも必要な要件となります。具体的には、障害者のための施設・設備の改善、障害者の職業生活に関する指導を行う専任の指導員の配置など、 雇用に特別な配慮を行っていることをいいます。

その他、障害者の雇用の促進及び安定が確実に達成されると認められることなどの要件もあります。

(5)企業グループ算定特例について

一定の要件を満たし、厚生労働大臣の認定を受けた企業グループについては、特例子会社がない場合でも企業グループ全体で実雇用率の通算が可能となる特例制度です。グループ内にすでに障害者の就労しやすい業務を行う子会社がある場合、親事業主の責任の下、当該子会社で障害者雇用を進めることにより、グループ全体での業務効率と障害者雇用を両立させることができます。

ただし、親会社と子会社の関係性の要件などのほか、子会社における障害者の人数規模、子会社での施設や障害者を雇用する体制などに一定の要件があります。

(6)事業協同組合等算定特例制度について

中小企業が事業協同組合等を活用して協同事業を行い、一定の要件を満たすものとして 厚生労働大臣の認定を受けたものについて、 事業協同組合等(特定組合等)とその組合員である中小企業(特定事業主)で実雇用率の通算が可能となる制度です。

個々の企業では障害者雇用を推進のための十分な仕事量の確保が難しい場合でも、組合等を活用し複数の中小企業が共同して、障害者の雇用機会を確保することが出来るメリットがあるといえます。

以上のように、特例子会社に関係する制度は要件が多く、認定のための手続きも複雑なものになっています。また、人事制度として設計を工夫する余地が大きく、検討段階から社会保険労務士等の専門家や、ハローワーク等の行政機関とも連携して進めていくことが重要です。特例子会社制度などを生かした障害者の雇用制度の事例に関しては、ハローワーク等の行政機関や独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構等の機関で多数の事例が共有されています。

※この記事は2018年4月に作成したものです。最新の情報は厚生労働省のWebサイトやハローワークでご確認ください。

【障害者雇用に関する法律の記事はこちら】

【障がい者雇用の成功事例に関する記事はこちら】

執筆者紹介

松井勇策(社会保険労務士・産業カウンセラー・Webアーキテクト) 東京都社会保険労務士会 広報委員長(新宿支部)。フォレストコンサルティング社会保険労務士事務所代表。名古屋大学法学部卒業後、株式会社リクルートにて広告企画・人事コンサルティングの営業職に従事、のち経営管理部門で法務・監査・ITマネジメント等に関わる。その後、社会保険労務士として独立。労働法務の問題や法改正への対応、IPO支援、人事制度整備支援、ほかIT/広報関連の知見を生かしたブランディング戦略等を専門にしている。

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