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改正障害者雇用促進法解説 Vol.2


障害を持つ雇用者のカウント方法と、実務上の確認方法

2018.04.24

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2018年4月1日から、障害者雇用促進法の改正が施行されました。「初めて障害者雇用義務が発生するとき押さえておきたいポイント」の記事では、初めて障害者雇用義務が発生した企業向けに、法改正の内容や理解しておきたい制度を解説しました。今回は意外と留意点の多い、障害者の方の人数のカウント方法と、障害者であることの定義、実務上の障害者であることの確認方法などついて解説します。

【1】2018年4月1日施行の障害者雇用促進法の改正内容

まず、2018年4月1日に施行された改正の内容を確認しておきます。

(1)法定雇用率の引き上げと障害者雇用義務のある企業の拡大

今回の改正では、法定雇用率の引き上げが行われ、民間企業は改正前の2.0%から2.2%となりました。これに連動して、障害者の雇用義務のある事業主の範囲が、改正前の50人以上から45.5人以上に拡大されました。新しく障害者雇用義務が生じる企業の方は、とくに注意が必要です。

(2)精神障害者の雇用義務化について

これまでは法令の記載上、障害者雇用の義務があるのは、身体障害者と知的障害者のみとなっていました。今回から障害者の種別の記載がなくなり、精神障害者が対象に加わります。ただし、法令上の扱いが変わるのみで、必ずしも精神障害者の雇用を強制されるわけではありません。

(3)今後のさらなる改正について

2021年4月までに、法定雇用率は2.3%となります。具体的な引き上げ時期は、今後の労働政策審議会で議論される扱いとなっています。障害者雇用の法定雇用率が2.3%になった場合は、同時に対象となる事業主の範囲が従業員数43.5人以上に拡大されます。

【2】障害者の人数・雇用率のカウント方法の詳細

障害者雇用促進法上のルールは以上の通りなのですが、自社の社員数・障害者の雇用者の人数や雇用率をカウントするためには、法定された定義を理解する必要があります。

法定雇用率に対する自社の雇用率を算定するための式は、以下の通りです。

count1

(1)対象となる労働者

「常用雇用労働者」「短時間労働者」の対象となる労働者は、次の2つのいずれかの類型に入る労働者です。「常用雇用」という名称ですが、有期契約の労働者も入っていることに注意が必要です。

・雇用契約期間の定めがなく雇用されている労働者(例:正社員)

・雇用契約期間を定めて雇用されている(有期契約)労働者であり、その期間が反復更新され、雇入れのときから1年を超えて引き続き雇用されると見込まれる労働者、あるいは過去1年を超える期間について引き続き雇用されている労働者(例:契約社員、パート、アルバイト、派遣社員など)

(2)常用雇用労働者

対象となる労働者のうち、1週間の所定労働時間が、30時間以上の労働者のことを言います。

(3)短時間労働者

対象となる労働者のうち、1週間の所定労働時間が、20時間以上30時間未満の労働者のことを言います。20時間未満の労働者は、短時間労働者に当てはまらないため、対象としてカウントされません。

(4)障害者である労働者のカウント方法

障害者である労働者のカウント方法も、前項までと原則は同じで、短時間以外の常用雇用労働者を1人としてカウントし、短時間労働者は、1人を0.5人としてカウントします。ただし、

  • 重度身体障害者、重度知的障害者は1人を2人としてカウントします。
  • 短時間重度身体障害者、短時間重度知的障害者は1人としてカウントします。

なお、短時間精神障害者ついてはさらに特例として、2018年4月以降、次の5年間の時限措置が取られます。精神障害者である短時間労働者(前項の通り、1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満)であって、雇入れから3年以内の方、または精神障害者保健福祉手帳取得から3年以内の方で、かつ2023年3月31日までに雇い入れられ、精神障害者保険福祉手帳を取得した方については、対象者1人につき、1人とみなすことになりました(今までは0.5人)。ただし上記に該当しても対象とならない場合もあるので、詳細はハローワークに確認してください。

以上を、下記の表にまとめます。

【障害者である労働者のカウント方法の詳細】count2(注)特例あり 条件によって1人につき1人とみなす

障害者の定義と実務上の確認方法等

あらたに雇用義務が発生し、障害者を雇用する場合、どういう方が障害者雇用促進法上の障害者に当たるのかを把握しなくてはなりません。そのためには法的な定義を理解する必要があります。ただし、この時に重要なのが、「障害者であること」はプライバシー情報であるため、情報のやり取りや雇用上の配慮も求められるということです。

(1)障害者の定義

障害者雇用促進法上、障害者は以下のように定義されています。

障害者

「障害者」とは、「身体障害、知的障害又は精神障害があるため、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者をいう」とされています。

つまり、障害の種類を問わず、職業生活上の困難を抱えているすべての種類の障害者が、この法律の対象となります。

身体障害者

「身体障害者」とは、視覚障害、聴覚・言語障害、肢体不自由、内部障害がある人とされています。

具体的には、身体障害者障害程度等級表の1~6級までの人、および7級に掲げる障害が2以上重複している人をいいます。 そのうち1~2級に該当する人、または3級に該当する障害を2以上重複していることで2級とされる人は、「重度身体障害者」とされます。「重度身体障害者」の雇用率の算定にあたっては、前項の通り、1人を2人の障害者とみなすことができるなどの特別措置が取られています。 身体障害者であることの確認は「身体障害者手帳」の所持、または規定の診断書によってなされます。

知的障害者

「知的障害者」とは「障害者のうち、知的な障害をもつ者であって厚生労働省令で定める者」とされています。

そのうち「重度知的障害者」は「知的障害者のうち、知的障害の程度が重い者であって厚生労働省令で定める者」をいい、「重度知的障害者」も雇用率の算定にあたっては、前項の通り、1人を2人の障害者とみなすことができるなどの特別措置が取られています。 知的障害者であることの確認は「療育手帳」の所持、または知的障害者判定機関が交付する判定書によってなされます。

精神障害者

「精神障害者」とは、「精神障害がある者であって、厚生労働省令で定める者」とされています。

この「厚生労働省令で定める者」とは、「精神保健福祉法の定めにより精神障害者保健福祉手帳を交付されている者」、または「統合失調症、躁鬱病またはてんかんにかかっている者」で「症状が安定し就労が可能な状態にある者」のことをいいます。

なお、精神障害については、雇用率の算定にかかわる「重度障害」の規定はありません。

(2)障害の把握・確認について、実務上注意すべきこと

障害の把握・確認については、採用段階では、本人自身が障害者であることを明らかにする場合と、企業が本人に事実を照会する場合があります。

前者の場合は本人がプライバシーを開示しているため直接質問に入ることが可能ですが、後者の場合、確認の目的を示し、同意を得たうえで行う必要があります。

職場における障害者であることの把握・確認については、厚生労働省から「プライバシーに配慮した障害者の把握・確認ガイドライン」が示されています。要点としては、以下のような点への配慮が必要であるとされています。

障害の有無の把握の方法

障害者本人の意に反した雇用率制度などの適用が行われることのないようにするため、採用後に障害の有無の把握・確認を行う場合には、労働者全員に画一的な手段で申告を呼びかけることが原則とされています。

つまり、個別の労働者に障害者であるかどうかを問いただすのではなく、利用目的を明示した上で、障害者である方は、差し支えなければそのことを会社に対して情報共有して欲しい旨を、画一的な方法で紙面等にして配布するような方法になります。

障害の有無の把握の方法の例外

例外的に、障害者である労働者本人が、職場において障害者の雇用を支援するための公的制度や社内制度の活用を求めて、企業に対し自発的に情報を提供した場合は、個人を特定して障害者手帳などの所持を照会することができます。

例外の例外

本人から自発的に情報を提供した場合においても、以下のケースにおいては、障害者手帳の有無を把握することについて、本人の意に反することもありえるため、個別のケースごとに慎重に判断する必要があります。

  • 年末調整の書類などで所得税の障害者控除を行うために提出された書類
  • 病欠や休職の際に提出された医師の診断書
  • 傷病手当金の申請(健康保険)にあたって事業主が証明を行った場合

把握した情報の更新について

把握・確認した情報の更新については、必要最小限にすることを心掛けながら、配慮しながら適切に行う必要があります。また行ってはならない事項、処理保管方法についてもガイドラインに記載がありますので確認しておきましょう。

以上のように、「障害がある」ということ自体がプライバシー情報の一つであることに、十分に留意したやり取りが求められます。こうした留意点は、障害の種類によっても異なるため、その方の状況に合わせた配慮も求められていると言えます。

判断が難しいケースもあると思われますが、プライバシー権や人格権、個人情報保護関連の法令との関係で重大な問題になる場合もあるため、社会保険労務士などの専門家や、ハローワークなどの行政機関と連携し、工夫していくことが必要といえます。

※この記事は2018年4月に作成したものです。最新の情報は厚生労働省のWebサイトやハローワークでご確認ください。

【障害者雇用に関する法律の記事はこちら】

【障がい者雇用の成功事例に関する記事はこちら】

執筆者紹介

松井勇策(社会保険労務士・産業カウンセラー・Webアーキテクト) 東京都社会保険労務士会 広報委員長(新宿支部)。フォレストコンサルティング社会保険労務士事務所代表。名古屋大学法学部卒業後、株式会社リクルートにて広告企画・人事コンサルティングの営業職に従事、のち経営管理部門で法務・監査・ITマネジメント等に関わる。その後、社会保険労務士として独立。労働法務の問題や法改正への対応、IPO支援、人事制度整備支援、ほかIT/広報関連の知見を生かしたブランディング戦略等を専門にしている。

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