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改正障害者雇用促進法解説 Vol.1


初めて障害者雇用義務が発生するとき押さえておきたいポイント

2018.04.23

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2018年4月1日から新たな障害者雇用促進法が施行されました。今回の改正によって、雇用義務の対象に精神障害者の方が加わります。さらに、対象となる従業員規模がこれまでの50人以上から、45.5人以上へと変更されます。初めて雇用義務が発生する企業もあるでしょう。今回はそうした企業の人事・総務担当者向けに、法改正の内容と押さえておきたいポイントを解説します。

関連記事→「2018年版 人事・総務に関する制度変更まとめ」

【1】2018年4月1日施行の障害者雇用促進法の改正内容と背景

今回の改正は、法定雇用率の引き上げ、精神障害者の扱いの変更、連動して雇用義務のある事業主の範囲が拡大されることが新たな変更点となります。自社の従業員規模が該当するかどうか、また2021年4月までに予定されている規模になるかどうかの確認が必要です。

1.改正の概要

(1)法定雇用率の引き上げと障害者雇用義務のある企業の拡大

今回の改正では、法定雇用率の引き上げが行われ、民間企業は改正前の2.0%から2.2%になります。また連動して、障害者の雇用義務のある事業主の範囲が、改正前の50人以上から45.5人以上に拡大されます。新しく障害者雇用義務が生じる企業の方は注意が必要です。

(2)精神障害者の雇用義務化について

これまでは法令の記載上、障害者雇用の義務があるのは身体障害者と知的障害者となっていました。今回から障害者の種別の記載がなくなり、精神障害者が加わります。ただし、法令上の扱いが変わるのみであって、必ずしも精神障害者の雇用を強制されるわけではありません。

(3)今後のさらなる改正について

2021年4月までに、法定雇用率は2.3%となります。具体的な引き上げ時期は、今後の労働政策審議会で議論されるとの扱いとなっています。障害者雇用の法定雇用率が2.3%になった場合は、同時に対象となる事業主の範囲が従業員数43.5人以上に拡大されます。

2.改正の背景

今回の雇用率引き上げの直接の経緯は、精神障害者の雇用義務が追加されたためです。引き上げに伴い、連動して精神障害者の雇用数も増加することが見込まれています。

今回を含め、近年、障害者雇用関連の法改正が多く行われています。これは、障害者の雇用に関して国が力を入れており、また、現状の障害者の雇用状況に改善余地があると考えられているためです。

障害者の雇用者数は伸び続けており、民間企業における雇用障害者数は、2017年度の結果として49万5,795人となりました。対前年比で4.5%の伸びを記録し、13年連続で過去最高を更新しています(※1)。

しかしながら『平成29年版障害者白書』(内閣府)によれば、日本の障害者人口は858万人近くの規模であることが分かります。地方公共団体等で雇用している障害者の方を計算に入れても、実際は障害のある方の約6~7%程度しか働けていないのです。

就業できていない障害者の方の中にも、企業と就業者が工夫することで活躍できる方も数多くいると思われます。政府が構想する「一億総活躍社会」の実現の中でも、障害者雇用は大きな課題となっているのです。

※1「平成29年 障害者雇用状況の集計結果」(厚生労働省・平成29年12月12日)

【2】今回初めて障害者雇用義務の発生した企業では

今回、障害者雇用義務のある企業の範囲が拡大したことで、新しく障害者雇用義務が発生する企業もあると思います。こうした企業の方が、まずどうすれば良いのかということや、新しく発生する手続きやルールについて紹介します。

1.障害者雇用の検討は、まずハローワークへ相談を

障害者の就職や採用については、通常、ハローワークへ連絡することが第一歩になります。

ハローワークには雇用指導官という、企業での障害者・高齢者雇用を扱う部門があります。求人を出す役割のみでなく、雇用全般のサポート機関でもあるのです。企業の現状を説明し、どのような方法、順序で取り組むべきか、連絡を取り合い、不安な点を相談することが大切です。

またハローワークは、地域の様々な障害者関連の機関と連携したサービスを行っています。障害者就労に関しては、障害者の就業生活を一体として支援する障害者就業・生活支援センターや、障害者の職業能力を身に付けるための就労移行支援事業所など様々な機関が存在しています。企業単位でこうした機関にアプローチすることは難しいため、ハローワークがこうした機関と連携する中心の役割を果たしています。

2.障害者雇用に関する手続きや体制、障害者雇用にあたってのルール

障害者雇用に関連した手続きや、体制の整備が必要となります。また雇用にあたっては特に配慮が必要なルールがあります。

(1)障害者雇用に関して注意すべき手続きや体制

障害者雇用状況報告

障害者雇用状況報告義務のある事業主は、毎年6月1日現在の障害者の雇用に関する状況を、障害者雇用状況報告書に記載し、ハローワークに報告する義務があります。毎年報告時期になると、ハローワークから報告用紙が送付されますので、必要事項を記載の上で締め切りまでに返信してください。雇用義務が果たせていない場合、ハローワークの雇用指導官等から指導を受けることがあります。指導内容としては、雇い入れ計画の作成命令や、罰則である社名公表を前提とした特別指導等があります。

障害者雇用推進者設置の努力義務

障害者雇用推進者とは、障害者の雇用の促進及び安定を図るため、企業における障害者雇用に係る国との連絡窓口となり、雇用管理等諸条件の整備や、障害者雇入れ計画作成に関する国との連絡、届出等の事務を行う責任者のことです。障害者の雇用義務がある企業は、設置する努力義務があります。

解雇届

障害者を解雇しようとする事業主は、障害者解雇届によって、その旨を速やかにハローワークに届け出なければなりません。通常の労働者の方と取り扱いが違いますので、気をつけて下さい。

(2)事業主の守らなくてはならないルール

法律上、事業主が障害者の雇用にあたって守らなくてはならないルールがあります。特に次の点は、障害者雇用促進法にも定められている原則となるルールであり、社内で制度設計をし、規程等を整備する上でも基本的な内容となります。

障害者に対する差別の禁止

事業主は、募集・採用において、障害者に対して障害者でない者と均等な機会を与えなければならず、待遇等に関して差別的取扱いをしてはなりません。

障害者に対する合理的配慮

事業主は、障害者と障害者でない者との均等な機会の確保のための措置を講じなければなりません。施設整備、援助者の配置などの必要な措置を講じる必要があります。

3.障害者雇用に関する公的支援や、外部の専門家・期間との連携

前項目までのように、障害者を雇用するにあたっては様々な手続きやルールがあります。こうした障害者の雇用を促進するための支援制度も多くあります。社会保険労務士等の専門家や、ハローワークや民間の障害者就労支援企業などと連携することにより、積極的に支援制度を活用するといいでしょう。

(1)トライアル雇用制度

ハローワーク等の紹介により、障害者を一定期間雇用することです。トライアル雇用期間中に、職場に適応が可能か、企業と障害者がお互いに確認してから、本採用するかどうかを決めることができます。

また、トライアル雇用の対象者が一定の条件を満たす場合、トライアル雇用助成金として、月額で公的助成が受けられる制度があります。

(2)各種助成金

前項目のトライアル雇用助成金のほかにも、一定の条件の障害者を、ハローワークや民間の職業紹介事業者等の紹介により採用した企業に対して、継続して雇用する場合に、特定求職者雇用開発助成金が支給されます。

この他にも、発達障害者や難治性疾患の方を雇い入れる場合の助成金や、障害者が働きやすいように業務サポートをしたり、障害者の能力向上のための施設を設置した企業に対して支給される助成金もあります。障害者雇用に関する助成金は種類が多く、申請に当たっては事前の計画の届出などの手続きがあります。後で対象となっていたことを知っても、遡っての支給は認められないため、事前によく確認し専門家へ相談することが必要です。

義務履行を助ける公的支援やサービスの情報収集を積極的に

障害者雇用は、公的支援や様々なサービスを効果的に生かしつつ、外部のノウハウを活用して工夫をし、働く方の個性を生かして活躍できる企業を創っていくことがポイントになります。従業員100人超の企業に適用となる「障害者雇用納付金・障害者雇用調整金の制度」や、「障害者雇用に関する特例子会社の制度」なども存在します。外部の機関や専門家とも連携し、積極的に情報収集に努めていきましょう。

※この記事は2018年4月に作成したものです。最新の情報は厚生労働省のWebサイトやハローワークでご確認ください。

改正障害者雇用促進法解説

執筆者紹介

松井勇策(社会保険労務士・産業カウンセラー・Webアーキテクト) 東京都社会保険労務士会 広報委員長(新宿支部)。フォレストコンサルティング社会保険労務士事務所代表。名古屋大学法学部卒業後、株式会社リクルートにて広告企画・人事コンサルティングの営業職に従事、のち経営管理部門で法務・監査・ITマネジメント等に関わる。その後、社会保険労務士として独立。IPO支援、労務監査等の人事制度整備支援、ほかIT/広報関連の知見を生かしたブランディング戦略等を専門にしている。

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