i-plug田中氏が語る「テクノロジー採用がうまくいく企業・いかない企業」
OfferBox(オファーボックス)の現状から知る、AIを活用した採用の未来
2018.05.08
企業の規模を問わず、人材不足が深刻化している昨今。AIをはじめとした、テクノロジーを活用した採用が注目を集めています。中でも、AIを活用したダイレクトリクルーティングサービス「OfferBox(オファーボックス)」は19卒学生の約8万人が利用しており、テクノロジーを活用した採用のトップランナーとなっています。
今回は、オファーボックスを提供する株式会社i-plug取締役の田中伸明氏のお話から、採用分野における「テクノロジーと人の役割」についてご紹介します。
OfferBoxを運営するのは「大阪にあるコツコツ系ベンチャー」
みなさん、こんばんは。
ご紹介いただきましたi-plug(アイプラグ)の田中と申します。どうぞよろしくお願いいたします。今日は「テクノロジー採用、うまくいく企業といかない企業」ということでお話させていただきます。
田中伸明氏
株式会社i-plug 取締役兼CMO
関西学院大学卒、グロービス経営大学院大学卒。新卒で外資金融機関に入社後、株式会社グロービスに転職し法人営業に従事。ユニットリーダー、マーケティング業務を経験。グロービス経営大学院の同期とともに2012年に株式会社i-plugを創業し、初期は法人営業の責任者を務めた。三期目より、学生や法人のユーザー拡大を目指しマーケティング部門の立ち上げに着手。その後、広報チームや大学営業チーム、新規事業の立ち上げも担当。年間50回以上の大学の講座にも登壇。
私は今日は大阪からやってきておりまして、i-plugという会社は人材系にしては珍しく大阪に本社のある会社でして、一言で言うならば「大阪にあるコツコツ系ベンチャー」です。非常に地味でコツコツやることを大事にしている会社になります。
こんなに色が黒いのは、可愛い可愛い子どもがおりまして、子どもたちと休日公園で遊んでいるからなのですが、自分たちの子どもも含めた、若い人たちの可能性を広げるような、就職活動の仕組み・環境を作るんだという、そういう思いを持って、作り上げてきた会社がi-plug、そしてオファーボックスというサービスになります。
約8万名の19卒学生、3,500社を超える企業が利用するサービス
オファーボックスというサービスは、学生がプロフィールを登録して、それを見た企業さんが直接スカウト・オファーを送るという、ダイレクトリクルーティングサービスです。おかげさまで、19卒学生の利用数はまもなく8万名になるところで、19卒学生の約5人に1人が使ってくださっています。
企業のみなさんも3,500社を超える方々に使っていただけるようになっている。そういうサービスですね。
AIの基本的な機能は「学習」と「推論」
今日は「テクノロジー」というテーマなんですけれども、よくテクノロジーと聞くと「AI」という言葉が出てきます。私たちは、AIの基本は2つあると思っているんですね。
1つ目の機能は「学習」ですね。もう1つは「推論」と呼ばれる、知識をもとにして新しい結論を得る機能です。この2つが基本的な機能なわけなんです。世の中にあるAIを活用したサービスというのは、これらの掛け合わせによるものがほとんどなんですね。
一般的によく誤解されているのがAIは「データを大量に読み込ませるだけで、自動的にあらゆる物事を学び、どんな質問にも的確に答えるようになる」といったことですね。
実はこの認識はあまり正解ではなくて、解決したい課題を明確化し、適切な「教師データ」を用意してAIに学習させないと、なかなか思うような結果は出てこないというふうに言われているわけですね。
我々のオファーボックスも実は「学習」と「推論」を組み合わせて、マッチングの精度を高めています。ただ、オファーボックスはAIを少し分かりにくいところで使っています。
「意思のこもった行動ログ」を解析し、検索の効率を上げる
企業さんや学生さんがオファーボックスを使用していく中で、アプリの中には「意思のこもった行動ログ」というものがどんどん取れてくるわけですね。
それらを解析しながら、その企業さんに合った学生さんを、上位に表示させる。検索の効率を高めていくというところで、我々はAIを活用しています。これは、最近行った調査なんですけれども、「使えば使うほど人事の手になじむ」ということで、2年間で採用効率が3.6倍になったというデータも取れております。
利用者の約65%が、当初志望していない業界に入社
さらにご覧いただきたいのが、こちらですね。我々のサービスでは、志望業界を1位~3位まで選択することができるんですけれども、実は、オファーボックスを使用して入社を決めた学生さんの65%が、当初志望していなかった、志望業界1~3位のいずれにも入れていない業界の企業さんに、入社する意思決定をしています。
AIによるマッチングの結果、当初は志望していなかった業界を知り、入社する学生さんが多く出ています。これが企業と学生がオファーボックスを選んでいただける1つの理由でして、我々はこの提供価値をさらに高めていくということを、テクノロジーを活用してやっています。
テクノロジーの2つの活用方法
ここからは、テクノロジーの範囲というものを整理させていただこうと思います。テクノロジーというと、「AIの活用」という方向に目がいきがちなんですけれども、ロボットの活用というのもテクノロジーだと思いますし、ツールを活用するというのもテクノロジー活用かと思います。ここで大事なのは「テクノロジーをどう活用していくか」という点だと思っております。
テクノロジーの活用方法には、大きく2つあると思っているんです。1つは業務効率の向上。そしてもう1つは、デコンストラクション(再構築)。要は、構造的に変えていくということですね。この2つの活用方法について、採用分野を例にしてご紹介します。
テクノロジーの活用方法1.業務効率の向上
まず、業務効率向上の例です。「AIを使ったES判定」というのは「大量にエントリーが集まる、母集団を形成できる企業」という条件が前提にあり、エントリーが集まった後にAIを活用して、ES判定を効率化します。そこで浮いた工数を、学生を見極め、口説くというところに投下して、競争優位性を高めていくという採用手法・採用戦略なわけですね。
テクノロジーの活用方法2.デコンストラクション(再構築)
オファーボックスで何をやっているかというと、まず最初に、母集団を集めません。集める前にターゲット属性の人材を検索して、候補者を絞り込みます。その後、適性検査結果で活躍人材を検索して見極める、そうして会いたい学生だけを集める、というところまでを、オファーボックスがワンストップで行います。つまり、採用の構造を変えているんですね。このようなやり方であれば、中小企業さんでも大手企業さんに勝ててしまうような、そんな採用が実現できる。我々はそんな仕組みを提供しています。
テクノロジー活用がうまい企業の3つの特徴
これは私たちもいろんな企業さんの事例と日々向き合いながら考えているんですけれども、テクノロジー活用が上手い企業はどんな企業かと言いますと、やはり「何を解決したいのか」が明らかである、ということと、ツールの本質をしっかり捉えて、活用できているということ、そしてですね、特にテクノロジー活用において重要なことは、感情に配慮したコミュニケーションを外部に向けてしていることかなと思っています。
感情に配慮したコミュニケーションをしないとどうなるか
こちらは、今年の3月に株式会社ディスコさんが発表した学生モニターの調査結果なのですが、約半分の学生さんが、AIに合否を判定されるのを「よいと思わない」というふうに答えているわけですね。
【データ・画像の出典】話題のAI選考について就活生の反応は? ~キャリタス就活2019 学生モニター調査結果(2018年3月発行)速報~(株式会社ディスコ)
オファーボックス上の12月時点でのユーザーを去年と今年で比較したときに、最もランキングを下げているのが銀行です。これは、間違いなく「下手なコミュニケーションの結果」だと思います。AIを活用するということが、正しく伝わっていないわけです。AIを活用して、その先にどういう世界を実現できるのかも含めた上で、学生さんに対してコミュニケーションをしていかないと、大失敗をしてしまう。そういう諸刃の剣的なところがあるんではないかなと思っております。
i-plugが考える「テクノロジーと人の住み分け」
私たちは「テクノロジーと人の住み分け」というのを考えているわけなんですけれども、今のところ、選択肢を広げたり絞り込むという部分は、テクノロジーで加速できるところかと思います。一方で、「決める」とか「口説く」というところは、人が主体的に行っていくところかなと思っています。
我々オファーボックスというサービスは、こういった思想のもと、きちんと人が主体的に動く部分、テクノロジーで加速する部分を住み分けながら、サービスを提供させていただいています。
【編集部より】
株式会社i-plug「OfferBox(オファーボックス)」のサービスガイドはこちら。
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