コラム

残業ゼロを目指して


仕事の進め方のコツは? 知っておきたい「完了バイアス」という心理

2018.04.04

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残業ゼロを実現するためのビジネスハック術を紹介する、作家・佐々木正悟氏の連載企画。今回は、「完了バイアス」という心理を解説しながら、仕事をうまく進めるコツをご紹介します。

やりやすいところから? それとも面倒なところから?

やりやすいタスクから片づけるか、最も面倒なタスクから始めるのが良いか? この問いは、仕事を進める上で多くの方が抱く悩みでしょう。実際、私のような物書きで生計を立てている人間にもおなじみの悩みではあります。

たとえば、一冊の企画書を書き上げるという仕事があるとします。この仕事を進める際には、

  • 書きやすいところからどんどん書いていくのが良い
  • 目次を決めて順番に最初から書いていくのが良い

という2つの意見が常にあります。

手がかりがあれば文章は成長する。ゼロと「何か」の違いは甚大

100万部を超えるベストセラーとなった「『超』整理法」著者の野口悠紀雄氏は、著書の中で以下のように書いています。

「始めなくてはできない」(中略)。これは、自明である。しかし、真に重要なのは、その裏命題である。つまり、「始めればできる」のだ。完全でなくともよい。ほんの手がかりでもよい。「何か」あれば、そこから文章は成長していく。ゼロと「何か」の違いは、甚大なのである。

野口悠紀雄著「超」文章法 (中公新書)

「書きやすいところから書いていく」という方法は、「冒頭からまったく書けないまま、原稿は真っ白」という状況を防いでくれます。また、虫食い状態でも何かを書いていくうちに新しい発見があり、そこが糸口となり、さらに文章を進められる、といったこともあります。

逆に言えば、「前から順に書いていく」と、冒頭の書き出しが難しいときには、まったくいいことがないわけです。1つも仕事が終わらないまま時間が過ぎてしまって、絶望的な気分に陥りかねません。

仕事が多いときに陥りやすい心理「完了バイアス」

ただ「書きやすいところから書いていく」という方法では、気を付けなくてはいけない心理があります。それが、「完了バイアス」です。完了バイアスとは、「重要な仕事」と「至急の仕事」があった場合、人は至急の仕事(メールの返信など)を完了させることに過度に集中して、重要な仕事のほうをおろそかにしてしまう、という心理のことです。

ハーバード・ビジネス・スクール教授のフランチェスカ・ジーノ氏が、エモリー大学とノースウェスタン大学の研究者と共同で行ったある研究では、救急科で働く医師たちは、来院患者が増えると「症状の軽い患者への治療」を優先する傾向があることが分かりました。これについて、ジーノ氏は以下のような指摘をしています。

このやり方は、一見すると有益に思える。軽症の患者は滞在時間が短いため、彼らに集中すれば医師の生産性は上がるからだ。ところがこのやり方には少なくとも2つの問題がある。
第1に、より深刻な症状の患者が長時間待たされることになる。これは明らかにまずい。
第2に、軽症患者たちを次々と治療していくにつれて、医師のペースは落ちてくる。つまり、より重症の患者を診る前に、疲れて仕事の質が落ちるおそれがあるのだ。

引用元:仕事の生産性と質を高めるために 「完了バイアス」を利用せよ

上記の例は、医療という大変シビアな現場でのお話ですが、普段の仕事についても、近いことが言えるでしょう。やるべきタスクが山のように積み上がると、たいていの人は「片づけやすそうな仕事からどんどん片づける」ので、最後には大変な仕事ばかりが残ってしまい、その時には疲労してしまっていて手が付けられなくなる、というわけです。

勢いがついたらすぐに切り替える

このように、両者の仕事の進め方には長所と短所がそれぞれあります。そこで今回は、両方の仕事の進め方のいいとこ取りをしつつ、デメリットを少なめに抑える方法を考えてみようと思います。

それは「企画書を書く」という例であれば、「とりあえず書きやすいところから書き、それがある程度たまったら、改めて冒頭から書き出してみる」という方法です。当たり前といえば当たり前のことですが、この方法を徹底することが、仕事を円滑に進めることにつながるのです。

タスクの山が積み上がった際には、簡単なタスクを1つ終わらせて、次に自分で「大変だ」と認識しているタスクに取りかかります。ここで肝心なのは、勢いに任せて「やりやすいタスク」を全部やってしまわないということです。

気分を優先して簡単なタスクばかりをこなしてしまうと、疲労してしまった上に「大変なタスクに戻りたくない」という気持ちが働き、重要なタスクが確実に取り残される結果を招きます。

タスクに手を付けてみることで、別の解決策も浮かぶ

また、まずはタスクに手を付けてみることで、「この部分はあの人にサポートしてもらえないだろうか?」といったアイディアも出てきます。まずは手がけてみなければ、人に手伝ってもらうという発想も出てこないのです。

重要なのは、大変なタスクに手をつけないまま時間ばかり長く取ってしまわないことです。だからといって、大変なタスクを終わらせることに「固執しすぎる」と、気が滅入ってしまうのも事実です。

大変なタスクと手がけやすいタスクとは交互に手がけつつ、大変な仕事を少しでもラクにする工夫を、なるべく早めになるべくたくさん見つけ出すようにしていきましょう。

執筆者紹介

佐々木正悟(ささき・しょうご) 心理学ジャーナリスト。「ハック」ブームの仕掛け人の一人。1973年北海道生まれ。「効率化」と「心理学」を掛け合わせた「ライフハック心理学」を探求。執筆や講演を行う。著書に、ベストセラーとなったハックシリーズ『スピードハックス』『チームハックス』(日本実業出版社)のほか『先送りせずにすぐやる人に変わる方法』(中経出版)『一瞬で「やる気」がでる脳のつくり方』(ソーテック)などがある。ブログ:佐々木正悟のメンタルハック

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