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採用の流儀~「サイバーエージェント」編


内定受諾率を驚異的にアップさせたサイバーエージェントの採用戦略

2015.11.11

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大手企業の選考が後ろ倒しとなった影響で、16卒採用では内定辞退に苦しむ企業の声も多い。そんな中、サイバーエージェントでは「内定者数を絞ることで、内定受諾率を90%に上げる」という驚くべき戦略を取っていた。人事本部の新卒採用責任者として大胆な改革を行う同社人事本部の渡邊大介氏に、その詳細を伺った。

目次
  1. クリエイティブ人材は「偏った知識」が面白い
  2. 「面接官になること」が一人前の証
  3. 面接だけでは見えない側面をどう見抜くか
  4. 「ブランド戦略」「事業戦略」としての人材採用
  5. 「学生に時間を使え」藤田氏から唯一のアドバイス

クリエイティブ人材は「偏った知識」が面白い

サイバーエージェントが求める人材は、一言で言うと「素直でいいヤツ」です。「新しいことに挑戦する」「常に成長し続ける」など、独自のカルチャーが強い会社なので、そこがマッチしているかどうかも前提条件として見ています。

当社は、インターネットビジネス業界や広告、ゲームなどに興味がある学生からは、「とりあえず」のエントリーはしてもらえる会社です。2万5千件を超えるエントリーがあります。それゆえ、「採用すべき人間」を絶対に落とさないように気を付けています。

求める職種により重視するポイントが違うので、コース別エントリー制を採用しているのもそのためです。「ビジネス(総合職)」「テクノロジー」「デザイン」と大きく3つのコースに分けています。事業ドメインも「広告」「メディア」「ゲーム」と3つあるので、それぞれの領域で活躍できる人材を各コースから採用します。

サイバーエージェント人事本部の渡邊大介氏

ビジネスコースで重視するポイントは、「チャレンジ精神」「粘り強さ」など、おそらく総合職を募集する他社とそう大差はないと思います。

一方、クリエイティブな仕事では、「偏った知識」を持つ人材に注目しています。「妄想力の高さ」とも言えますが、自分が興味を持ったことに対して、徹底的に調べる姿勢、ハマっていけるマインドを持っている人は、やっぱり面白いですね。

「面接官になること」が一人前の証

当社の一般的な選考においては、エントリーシート(ES)は「ちゃんと書けていればいい」程度にしかチェックはしません。やっぱり文字だと「嘘」が書けますから。人気の高いインターンシップや特別な採用コースでは、かなりのボリュームを書かせることもありますが、それはチャレンジ意欲を見るためです。

やはり圧倒的に重視するのは面接です。質問内容は、それほど特別なものではありません。「チャレンジ精神」「積極性」などの基本的な要素を確認するチェックシートは、事前に人事本部で用意していますが、質問内容は面接官の裁量に、ある程度任せています。

サイバーエージェントでは、人事や経営陣だけでなく現場社員の多くが面接官を務めるのですが、この「面接官になる」というのが社員にとって一つのステータスであり、会社に認められた証です。面接官を依頼する社員は、その社員自身が、サイバーエージェントの魅力を体現している人材である、という選定をしています。

僕も最初の2年間は声がかからず、悔しかったのを覚えています。人事にもすごくアピールしていましたから。現在でも毎年、新卒採用に最も貢献した社員は、代表の藤田晋から直接表彰があるんです。「会社全体で採用に取り組む」のは、創業当時から大切にしている姿勢です。

面接だけでは見えない側面をどう見抜くか

16卒採用では、新たに「トライアウト」制度を導入しました。3~4次面接に相当する段階で、学生を30名ずつグループに分け、実際にオフィスで実践的な課題にチャレンジしてもらいます。「このクライアントに対するプロモーション案を考えよ」「このゲームの改善案を考えよ」など、コースごとに実在のビジネスに即した課題を考えてもらいます。それを先輩社員に提案、フィードバック、再提案ということを3時間みっちりやってもらいます。

学生からすれば、相当タフな選考ですが、サイバーエージェントで働く模擬体験ができ、採用側にも面接だけでは見えにくい多くの面を知ることが可能です。思考回路、粘り強さ、拝聴力、コミュニケーション能力に取り組み姿勢そのものまで見ますから。

ここでは先輩社員のフィードバックをきちんと取り入れているケースを評価することもあれば、逆に意見に左右されず自分の信念を貫くケースを評価することもあります。この選考における通過率は5%です。学生からすると対策は取りづらいかもしれませんが、トライアウトの制度自体は非常に好評でした。

「ブランド戦略」「事業戦略」としての人材採用

私が人事本部に異動してまだ1年ほどですが、改めて採用業務は企業にとって極めて重要なブランド戦略だと感じます。ブランディングは通常のマーケティングと同様に、ターゲットを明確にし、伝えたいメッセージがターゲットにきちんと届く選考方法にしないといけない。

採用は事業戦略と同様に進めるべきです。「昨年、この手法でうまくいったから」「毎年、この手法でやっているから」といった理由での選考方法は一切認めません。採用業務に関わらず、深く考えないままの“前例と同様に”という思考回路は絶対NGです。

トライアウト制度も新しい取り組みですが、他にも16卒採用で思い切って変更したのは、内定者数です。内定受諾率を低めに見積もり内定を多く出すと、どうしても学生一人ひとりのフォローが手薄になってしまう。すると、やはり想定通りの低い内定受諾率になってしまう。

内定を断る学生が多いと、入社を決意してくれた学生に対して申し訳ないんです。そこで16卒では思い切り内定数を絞り、一人にかける時間を長くしました。結果、内定承諾率は約90%です。例年以上に、非常に優秀な人材を相当数採用することができました。

「学生に時間を使え」藤田氏から唯一のアドバイス

人事本部に異動になるときに、社長の藤田から一つだけ言われたのは「学生に時間を使え」です。私は、最終面接を担当しているのですが、そこで出会うほとんどの学生は非常に優秀でどこに面接に行っても内定がもらえそうな学生ばかりです。

そんな彼らに対して、「面接」とかしこまって話をしても意味はありません。フランクにお互いを知るために、よく何人か一緒に飲みにも行きますし、ときには“サシ”で朝まで飲むこともあります。夜はできるだけ予定を入れず、すべて学生のために空けているので、週に6日は学生と飲んでいますね(笑)。プライベートで後輩と飲んでいる感覚とほとんど同じなんです。

会社のいい面だけを見せるのも、すごく不誠実だと思うので、実際の就業環境もしっかり見てもらいます。内定者バイトやインターンシップで、ほとんどの学生に実際に一度は働いてもらいます。そうやって、肌でカルチャーをしっかり理解したうえで入社してくるので、新卒採用者の3年以内離職率も5%以下と非常に低い数字になっています。

「事業戦略と同様に採用活動を行う」と言っても、相手はやっぱり人間なんです。採用を担当する人間が、そのことをしっかり理解していれば「オワハラ」なんてあり得ないと思います。それは、人ではなく「採用者数」という数を見ているだけ。人事担当者はそのことをしっかり考えるべきだと思います。

面接工夫のワンポイント ~Q&A~

Q:当社でもチャレンジ意欲にあふれる学生を採用したいのですが、面接での判断が難しいです。サイバーエージェントさんでは、どのような質問で判断していますか?

A:言葉で「大きな仕事にチャレンジしたいんです」という学生は多いので、確かにその見極めは難しいですよね。「大きな」のイメージも人によってまちまち。そんなとき、私は実際にスケールの大きい具体的な話をします。

例えば「シリコンバレーで数十億円の資金を投下したプロジェクトがある。こんな風にビジネスを成長させていきたいけど、そんな仕事をどう思う?」とできるだけリアルに話すんです。あえて正解は言いませんが、その反応を見ると、本当に大きなことにチャレンジしたいと思っている学生かどうかは、おそらく分かるのではないでしょうか。

渡邊 大介(わたなべ・だいすけ)
人事本部 採用責任者
2006年サイバーエージェントに新卒入社、広告企画営業を担当。3年後、新規事業開発室でマーケティング部署を立ち上げ、BtoCサービスのローンチなどを行う。2014年10月から現職。

【編集部より】
「採用の流儀」シリーズの記事一覧

執筆者紹介

玉寄麻衣(たまよせ・まい) 1979年生まれ。立命館大学政策科学部卒業。外資系大手人材派遣・人材紹介会社で、営業として主に中小企業の人材採用をサポート。その後フリーランスのライターとなり、人材採用、人材育成、大学教育、広報・PR、企業経営等に関する取材・執筆を行う。

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