社員に選ばれる会社の人事制度・人材開発
「2018年問題」労働契約法・労働派遣法の改正内容と、社員に与える影響とは
2018.03.13
2018年から社員の雇用に大きく影響を及ぼす2つの法律
「働き方改革」という言葉も世間ではだいぶ定着してきました。その中身についてはいろいろとディスカッションできる部分はあると思いますが、2018年から、会社における社員の雇用に大きく影響を及ぼす法律が2つあります。1つ目は、2013年4月1日に改正された労働契約法、2つ目は2015年9月30日に改正された労働派遣法です。
特に来月で改正から5年となる労働契約法によって、新たな雇用体系を設置する企業も多く、その準備状況は今まさに佳境とも言えるでしょう。今回は、この2つの法改正における影響について、会社員であれば知っておいた方がよい内容をご紹介したいと思います。
5年勤務すると発生する権利
冒頭でご紹介したように、2013年4月に労働契約法が改正されました。これによって、契約社員、パート・アルバイトで5年以上継続して勤務していた場合、「無期雇用転換」を雇われている側から申し出ることによって、期間の定めのない労働契約=無期雇用契約に転換できます。その効力が実際に発生するのが、4月1日からとなります。これは、企業側が雇用転換を行うものではなく、社員からの申し出が必要です。申し出をせずに有期雇用を継続することも、今回申し出をせずに次の契約更改後に申し出を行うこともできます。
この法改正が公表された頃(2013年)に、「契約社員/パートとして5年働いていれば正社員になれる」という世論がありましたが、これは理解が異なっております。いや、厳密には「間違っていることがほとんどである」と言えるでしょう。なぜなら、国は「雇用期間が有期から無期になること以外の人事的処遇については、全く言及しておらず、企業の裁量に任せている」からです。
対応は、正社員登用だけに限らない
企業はこの法改正によって、以下の選択肢から一つあるいは両方の対応を検討することになります。
- 有期雇用契約社員の処遇を正社員と全く同じにする。すなわち「正社員」にする
- 無期雇用契約社員を、新しいタイプの社員「無期契約社員」とする
1番目の場合は、いわゆる「正社員登用」のことになります。2番目の場合、新たな雇用形態を設置することを意味しています。新しいタイプの社員、「無期契約社員」の給与/賞与・異動/出向・転勤・昇(降)格・福利厚生などの処遇を従来の正社員とどの程度同じにするのか、あるいは違いを設けるのか、ということを調整し、さらにはそれに関連した就業規則/諸規程の修正・追加が発生しているので、例年以上に忙しい人事部門も多いでしょう。
多様な働き方を検討するきっかけ
また、これまで有期雇用契約で働いていた社員のみなさんには、以下の3点のような事情があるかもしれません。
- 転勤はしたくない(勤務地の限定)
- 特定の職種・職務で働きたい(職種・職務の限定)
- フルタイムの勤務は難しい(勤務時間の限定)
「勤務地」「職種/職務」「勤務時間」の3つの軸の1つ、あるいは複数を使って、従来の正社員との違いを明確にすることが、多様な社員を生み出すきっかけとなると思います。雇用期間を気にしなくてよいということは、それだけ安心して働くことができる環境とも言えます。こういった法改正を、より多様な働き方を受容できる環境を構築できる機会の一つととらえる企業は既に多く存在しており、ニュースなどにも取り上げられているのをご覧になられた方も多いでしょう。
派遣社員をとりまく環境の変化
派遣社員の場合は、より注意を払う必要があります。具体的には、「無期雇用転換」の申し出によって雇用されるのは、派遣「先」企業ではなく派遣「元」企業となります。派遣社員における「継続して5年以上勤務」というのは、同じ会社に派遣されていなければいけないというわけではありません。同一の派遣会社との間で通算契約期間が5年を超え、かつ、労働契約がない期間(派遣先企業に派遣されていない期間)が6ヶ月以上空いていないことが条件となります。
さらに派遣社員の勤務環境は、今年10月に大きく変わるかもしれません。なぜなら、労働派遣法の改正によって同じ企業の同一部門(課レベル)で3年以上の勤務ができなくなるからです。その効力が発生するのが今年10月となります。
派遣社員の勤務にまつわる2つの懸念事項
これをふまえると企業としては以下の2つが懸念事項となります。
- 派遣元企業で無期雇用転換されたとしても、継続して同じ派遣先企業(自社)に勤務するかどうかは本人や派遣元企業の意向に大きく左右される
- 3年以上勤務している派遣社員は同一部門で勤務してもらうことができなくなる
そのゆえ、これを機に派遣社員として勤務してもらっている方を派遣元企業にて直接雇用するケースも増えています。特に店舗スタッフやコールセンタースタッフのようにシフト制かつ、時間帯によって一定の人数がいないと業務が成り立たない職種にあてはまると思います。こういった職種において、非正規社員の実務上での戦力はかなり重要と位置付けている企業は多いです。
私が勤務していた事業会社、あるいは独立してから担当しているお客様企業においても、直接雇用化をどのように行っていくのかというのは、継続して現場部門と取り組んでいる課題です。事業継続の点から鑑みても、有能な方をしっかりとつなぎとめておきたいという潜在的意向が、法改正によって具現化したとも表現できるかもしれません。2018年は、働き方の大きな転換期になると言えるでしょう。
執筆者紹介
永見昌彦(ながみ・まさひこ) アルドーニ株式会社代表取締役。外資系コンサルティングファームなどで人事コンサルタントとして勤務した後、事業会社(ラグジュアリーブランド持株会社)で人事企画担当マネージャーとして人材開発・人事システム・人事企画を兼務。事業会社、コンサルティングファームの両面から人事に20年たずさわった経験を活かして、2016年にフリーランス人事プランナー・コンサルタントとして独立。2018年に法人化。現在、人事全般のプランニング・コンサルティング・実務にたずさわっている。
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