@人事 ドイツ支部通信
日本企業のための、学生アルバイト活用のススメ
2018.03.02
3月、企業説明会やエントリーシートの提出が解禁になり、採用活動が本格化する。
新卒採用のために就活期間を有効に使うのはもちろん大事だが、その一方で、学生アルバイトをもっと活用したらいいのではないかとも思っている。
今回は、ドイツ企業がどんなかたちで学生を活用しているかを紹介しよう。
ドイツ在住、1991年生まれのフリーライター。大学在学中にドイツ留学を経験し、大学卒業後、再びドイツに渡る。ブログ『雨宮の迷走ニュース』を運営しながら、東洋経済オンラインやハフィントンポストなどに寄稿。
学生アルバイトという手段
日本は、学生と企業との距離が遠い。そのため就職活動で双方のマッチングがうまくいかないこともある。
それを防ぐためにインターンシップに力を入れている企業も多いが、就職活動の長期化が懸念されているため、インターンシップと採用は結び付けてはいけないことになっている。
しかも就職活動が後ろ倒しになったことにより、夏休みにインターンを開催しても実際の就活まで半年時間が空いてしまう。だが秋冬にインターンできる学生がいるかというと、授業があったり、年末年始に入っていたりしてなかなかむずかしい。
そうなれば、結果的に就活一辺倒になってしまう。
わたしが住んでいるドイツでは、インターンシップと採用を結びつけるのは当然だし、学生アルバイトの活用にも積極的だ。
インターンシップ採用がダメなら、日本も学生アルバイトの活用に注目してみたらどうだろう。
その参考として、ドイツのインターンシップと2種類のアルバイトの様子をお伝えしたい。
長期休暇中、フルタイムで学生を雇う
まずは、ドイツのインターンシップ(Praktikum)制度を紹介しよう。
ドイツのインターンは実践的であることが多いものの、表向きは労働者ではなく、新しい知識や能力を得るための研修生という認識だ。
大学の卒業要件としてインターンシップを導入していることが多く、そういう場合は「労働ではなく社会経験だから」という理由で無給だったりする。卒業に必須のインターンは、長期休暇を使って6週間程度フルタイムで働くことが一般的だ。
また、大学卒業後、就職のために半年以上の長期インターンを行う人もいる。ドイツは就職前に実務経験を積んでおく必要があるから、キャリアの第一歩としてもインターンは重要なのだ。
仕事内容は、単純作業や雑用、先輩のサポートなど。6週間のように短いインターンシップでは、ひとつのプロジェクトのメンバーとして働くこともある。
ドイツのインターンシップは、だいたいこんな感じだ。
2017年度、日本ではたった1日のインターンシップが44.5%を占めていた。だがそれでは、ただの見学になってしまう。(参考:株式会社リクルートキャリア『就職白書2017 -インターンシップ編-』)
インターンシップと採用を結びつけてはいけないから仕方ないかもしれないが、たとえば長期休暇中、学生を期間アルバイトとして雇うのはどうだろう。
数日間のインターンシップより学生のことを知れるし、学生も「1ヵ月企業で働いた」という実績になる。
新入社員に任せている作業を学生に
次にアルバイトだが、ドイツの学生が企業でアルバイトするとき、大きくふたつのタイプに分かれる。
ひとつは、日本の学生アルバイトに近い働き方だ。月450ユーロの所得制限、もしくは働く期間の上限が決まっている。
イメージとしては、週に1回か2回働く学生アルバイトといったところだろうか。
ドイツ企業は、専門知識やむずかしい判断を必要としないとき、また雑務や単純作業を任せたいときに、学生アルバイトを雇う。
「就職してから育てればいい」という傾向がある日本は、ドイツが学生に任せている作業を、新卒就職者に任せているのかもしれない。
だれがやっても成果に大きな影響がでない作業を社員にやらせるのはもったいない。そういった場合も、学生アルバイトの採用はひとつの手段だ。
すでに能力がある学生は即戦力
もうひとつのアルバイト方法として、Werkstudentがある。
Werkstudentはインターンシップ生や上記のアルバイトとはちがい、すでに能力がある人が対象になる。たとえば大学で専門的な勉強をしている人や、職業訓練を経て大学に入った人などだ。
学生はここでしっかりと結果を出せば、そのまま就職になることもある。逆に、卒業するまでのあいだは就職予定先でWerkstudentとして働いておく、という人もいる。
Werkstudentの仕事内容はけっこう本格的なので、「学生社員」というとわかりやすいかもしれない(社会保障費などの話ではなく、あくまでイメージとして)。
大学優先という前提があるため、授業期間中は週20時間以上働いてはいけないことになっているが、休暇中はフルタイムで働ける。
ちなみにわたしの友人は、大学が定める6週間の無給インターンシップをし、そこで気に入られてWerkstudentとしてそのまま勤めることを提案された。
週20時間働くために授業を減らして卒業を延ばし、働き始めて数ヶ月すぎたところで、「大学を卒業したら就職しないか」とスカウトされて、無事就職。
ドイツでは企業が積極的に学生を活用しているので、こういった流れでの就職も少なくない。
学生アルバイトという長期視点の採用活動
日本でもベンチャー企業やメディア関連の企業などでは、比較的オープンに学生を受け入れているような印象があるが、そういったことがもっと広がっていってもいいんじゃないだろうか。
期間が決まっている採用活動ではうまく人を集められなくとも、アルバイトなら常時募集できる。
人件費を抑えられるし、面接を重ねるよりも相手のことがよくわかる。職場が気に入れば、学生はそのまま就職を決めてくれるだろう。
インターンシップばかりが注目されるが、日本ではインターン採用は表向きはNGだ。それなら、インターンシップ以外の場で学生を受け入れればいい。
授業が多く、まだあまり専門知識がない大学1年生や2年生はアルバイトとして。専攻の基礎知識や時間的余裕がある大学3年生や4年生は、Werkstudentのように受け入れてみるのはどうだろう。
留学によって卒業を伸ばしたが単位を取り終えている人、休学しながら社会経験を積みたい人なども注目するはずだ。
「インターンシップ」という枠にこだわらず、長期的採用活動という視点で、学生アルバイトの活用をもう少し視野に入れるといいかもしれない。
【参考】
Praktikumsanzeigen「WIE LANGE SOLLTE EIN PRAKTIKUM DAUERN?」
univativ Journal「Unterschiede zwischen Praktikanten und Werkstudenten」
Deutsches Studentenwerk「Werkstudenten」
Minijob-Zentrale「Minijobs im Überblick」
執筆者紹介
雨宮紫苑(フリーライター) ドイツ在住、1991年生まれのフリーライター。大学在学中にドイツ留学を経験し、大学卒業後、再びドイツに渡る。ブログ『雨宮の迷走ニュース』を運営しながら、東洋経済オンラインやハフィントンポストなどに寄稿。著書に『日本人とドイツ人 比べてみたらどっちもどっち』(新潮新書)がある。
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