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特集

働きやすい職場づくり~株式会社サイボウズ


旧姓使用を認めない企業は採用で不利? サイボウズ人事部が語る理由

2018.02.06

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今年1月、サイボウズ社の青野慶久社長が夫婦同姓・別姓を選べる「選択的夫婦別姓」の実現を求めて、国を相手取り、東京地裁に提訴した。結婚などで姓が変わった後も職場で旧姓を使い続ける動きは時代とともに広がってきているが、企業では旧姓使用を希望する人がどの程度認められ、どう運用されているのか。「職場での旧姓使用」の実態と理想を探るべく、サイボウズの人事部に取材した。

目次
  1. 広がる「職場の旧姓使用」
  2. いまだ企業の3割が「旧姓使用を認めていない」
  3. 「その人が呼ばれたい名前で呼ぶ」 ニックネームを使う社員も
  4. 旧姓使用による事務は惜しまず「喜んで手間をかける」
  5. 多様性を認めないことは、人材獲得競争で「致命的になりうる」
  6. 選択的夫婦別姓を求める青野社長は、社員にどう映っているのか

広がる「職場の旧姓使用」

結婚などで姓が変わると、さまざまな窓口に行き、煩雑な名義変更手続きをすることが必要になる。運転免許証、銀行口座、マイナンバーカード、クレジットカード……。名義変更には時間だけでなく、お金がかかる場合も。サイボウズ社の青野社長は自身のブログ上で「所有している株式の名義変更に81万円もかかった」と、具体的に生じた経済的不利益を語っている。

姓が変わることで、所属している会社でも人事・総務部門で何かしらの変更手続きが必要になる場合が多い。その場合、会社ごとに対応が分かれるのが「旧姓」をどう扱うかだ。旧姓で積み上げてきた仕事上の実績が、新姓に変わることで対外的に認識されづらくなることなどから、職場で旧姓を使用する動きは時代とともに広がってきている。2017年9月には、国は全省庁の国家公務員に対し、対外的な公的文書においても職員の旧姓使用を認めると発表した。

いまだ企業の3割が「旧姓使用を認めていない」

はじめに、現代の企業がどの程度職場での旧姓使用を認めているかを見ていこう。

2016年、内閣府がさまざまな業種の企業を対象に行った調査報告書(有効回答数4,695社)によると、約半数の企業が何らかの形で旧姓使用を認めていると回答。一方で「これまでに旧姓使用を検討したことはなく、旧姓使用も認めていない」と答えた企業がいまだ3割に上った。

また、認めていると回答した企業の中でも大半は「名札」「名刺」「呼称」「メールアドレス」等の使用にとどまり、「論文・原稿執筆」「プレスリリースなど公表資料」など、会社の対外的な資料での旧姓使用を認めている企業は2割程度にとどまった。

旧姓使用を認めている範囲

(図の引用元:平成28年度内閣府委託調査「旧姓使用の状況に関する調査報告書」)

「その人が呼ばれたい名前で呼ぶ」 ニックネームを使う社員も

企業の現場ではどんな運用がされているのだろうか。社長が「旧姓の法的根拠」を求めて提訴している最中の、サイボウズ社人事部に話を聞いた。

まず、同社の根底の考え方は「旧姓でも新姓でも、その人が呼ばれたい名前で呼ぶ」というということ。社員一人ひとりの働きやすさや、社内での多様性を尊重するためだ。人事部マネージャーの松川隆さんは「個人が特定できる名前であれば、どんな名前でも使っていい。例えば業界で本名よりニックネームの方が浸透しているエンジニアがいれば、社内でニックネームを使ってもいいんです」と話す。

実際、同社の社内のグループウェアではニックネームを使っている社員もいるという。先に引用した内閣府調査で旧姓使用が認められる割合が低かったプレスリリース等の対外的資料や給与明細等でも、旧姓を含む「個々人の希望する呼び名」の使用を認めている。

旧姓使用による事務は惜しまず「喜んで手間をかける」

一方で現行の法制度上では、銀行口座や公的書類など、旧姓が使用できない場面がほとんどだ。旧姓を使用している社員は、給与振込先の銀行口座名が新姓であるなど、二種類の姓を運用する事務手続きが必要になる。保育園からの社員の呼び出し電話が、社内とは違う名前でかかってきて、確認に少し手間取ったこともあった。

松川さんは「事務の手間が増えるため、事務手続き上は一つの名前(新姓)で統一した方が楽なのだろうとは思う。しかし、我々は旧姓を使うことで増える事務の手間を惜しまないし、喜んで手間をかける。それは、私たちが『事務上のミスを起こさないこと』よりも、『社員の多様性と働きやすさ』をゆずれない価値として考えているからです」と語る。

多様性を認めないことは、人材獲得競争で「致命的になりうる」

「旧姓使用を認めていない会社では、社員が旧姓を含む好きな名前を使うことが一体いくらの儲けにつながるんだ?と思う人もいるかもしれません。でも、これは決してバカにできない問題です。そもそも企業で働くモチベーションや愛社精神といったものは、個々人の働きやすさから生まれてくるもの。働き手が減少していく今の時代に、社員一人ひとりの多様性や個性を認めず、働きやすい環境を整えないということは、(人材獲得競争の中で)致命的になりかねません。事実、サイボウズにも超大手企業から『働きやすさ』を求めて続々と社員が転職してくる流れがあります」(サイボウズ人事・松川氏)

旧姓使用を認めるかどうか、という狭い話に限らず、会社が昔から何気なく続けているあらゆる制度の中で、社員が精神的に嫌な思いをしている可能性はないか、より働きやすくできる可能性はないか、を常に考え改善し続けることが、今日の人材獲得の上でますます重要性を帯びているということだろう。

選択的夫婦別姓を求める青野社長は、社員にどう映っているのか

最後に、選択的夫婦別姓制度を求めた青野社長の提訴は、社員から見てどう映っているのかを聞いた。

cybozuaono020601選択的夫婦別姓を求め提訴し、記者会見する青野慶久社長(提供:サイボウズ社)

松川さんは提訴は社長個人によるものであり、裁判自体に会社としては関わっていないと前置きした上で、「多様性を大事にするサイボウズの考え方を、会社の外の社会に向かっても発信している、といえるのではないでしょうか。サイボウズ社としても、こうなった方が楽しいよ、という提案を社会に投げかけながら、世の中を楽しく変えていくようなことをしていきたいですね」と話してくれた。

【編集部より】
サイボウズ社に関する、この他の記事はこちら。

執筆者紹介

安藤歩美(あんどう・あゆみ) 全国紙記者として東日本大震災の被災地報道や地方行政等を担当したのち独立。ニュースサイト「THE PAGE」でYahoo!ニュースに全国ニュースの解説記事を多数執筆。2016年、日本初のVR動画ニュースサイト TOHOKU360を立ち上げ、編集長に。東北各地を駆けめぐりながら、記事やVR動画などのさまざまな作品を企画・制作している。

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