コラム

城繫幸、ニュースを斬る


「40代が足りない」と嘆く企業が直面する、より深刻な2つの課題

2018.02.08

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就職氷河期世代と「40代の社員不足」問題

昨年、大手企業トップがインタビューの中で「40代の生え抜き社員が不足している」とコメントし、ネット中心に大きな反響を呼んだ。40代と言えば、2000年前後の超買い手市場に世に出ざるをえなかった就職氷河期世代が該当する。

ちなみに2018年の新卒求人倍率が1.78倍だが、氷河期の底である2000年の新卒求人倍率はたった0.99倍だった。終身雇用制度は採用数の増減を通じてしか雇用調整できないため、特定の世代にのみしわ寄せが集中してしまった形だ。そういう状況を演出しておきながら「やっぱり40代が不足しています」と言われても後の祭りだろう。

そもそも、日本企業はなぜ特定の世代を必要とするのか。そして、それをカバーするにはどういったアプローチをとるべきなのか。良い機会なのでまとめておこう。

企業上層部が「40代が足りない」と嘆くメカニズム

日本企業で一般的な賃金制度である「職能給」は人に賃金が紐づいた属人給であり、従業員は勤続年数と共にさまざまなスキルを獲得し、人材としての価値が高まるというコンセプトに基づくものだ。事実上の年功給と言っていいだろう。多くの会社で「必要とされている40代の人材像」というのは、おおよそ以下のような職歴とスキルを身につけた人材となる。

20代のうちに地方を含めた複数の事業部で経験を積み、30代で海外赴任を経験、帰国後に30代後半で課長昇格し、現在は部長もしくは部長昇格待ちの脂の乗った中間管理職。査定成績は常に同期で上位10%以内。

よって、新卒時に思うような就活が出来なかった氷河期世代の40代は採用対象とはなりにくい。企業が求めている40代とは、あくまでも同じような規模の企業で、総合職として上記のような職歴を積めた人材だからだ。

また、よく耳にする「氷河期世代は採用数自体が少ないから出世もしやすい」という意見もややずれている。日本企業における評価は相対評価が基本なので、数が少ないからといって皆が出世できるわけではない。

通常、100人新卒で採用して30人が課長級以上に昇格できている企業なら、氷河期に30人しか採用していなかったとしても課長級以上に昇格できるのはせいぜい十数人だろう。その少ない十数人を中途採用で奪い合うわけだから、トップが「使える40代が少ない」とぼやくのも仕方のない話かもしれない。

「40代不足」の裏に潜む本当の危機

とはいえ、筆者自身は「40代の使える管理職が不足している問題」についてはそれほど切羽詰まった問題だとは考えていない。というのも、作業プロセスの見直しなどである程度は対応可能だし、そもそも日本企業は中間管理職自体が多すぎる傾向にあるためだ。

それよりも、「40代が足りない」と嘆く企業はこれから先にもっと深刻な問題に直面するだろう。それは以下の2点だ。

問題① 人材確保で明確な遅れを取る

本来、企業は年齢ではなく「〇〇が出来る人材が欲しい」と仕事内容やスキルで人材を判断すべきだ。経済がグローバル化し、変革スピードが加速してゆく中、現場からは「〇〇が出来る人材がすぐに〇人欲しい」「こっちは□□が出来る人材を今すぐ採ってほしい」という多様なニーズがどんどん湧き出てくるに違いない。

そして、そうしたニーズを満たせる人材は全然畑違いの業種にいるかもしれないし、年齢も60代の大ベテランかもしれないし、あるいは大学院を出たばかりの20代かもしれない。そういう多様な人材に対して、職能給(とそれに基づく年功序列制度)はまったく柔軟な処遇が提供できないだろう。

既に国内上位校の学生の間には、明らかな日本企業離れが見られる。かわって人気なのは外資系企業や新興企業であり、それらに共通するのは「初年度から600万円以上の処遇を提供できるような柔軟な賃金制度」の存在だ。

 エリート学生は年功序列という単線型キャリアパスの限界などとうに見抜いており、「将来の出世」といった餌には釣られないということだ。彼らを囲い込むにはその能力に応じた市場価格を提示する以外にはない。

【参考リンク】
トップ6大学「就職人気企業ランキング」(プレジデントオンライン)

問題② 40代以降の人材のモチベーションを維持できなくなる

そして、年功序列を維持する企業が直面する最大の問題は、40代以降のモチベーションをどう維持するかというものだ。先に述べたように、組織が求める「40代のあるべき人材像」にはみんながなれるわけではない。実は「あるべき40代が足りない」ことよりも、「あるべき40代になれなかった人達をどうメンテするか」の方が、はるかに切実な問題なのだ。

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高度成長期からバブル期までなら、この問題は誤差として無視することができた。というのも、多くの企業では過半数の総合職に対して40代以降に課長以上のポストを配分できたからだ。だが、現在では40代の役職者の数は着実に減ってきている。

大和総研の調査によれば、2016年に40代で課長に就いている人の割合は11.2%となっている。この比率は2000年代後半から低下が目立ってきており、課長に就いている人の割合は10年前より2.6ポイント下がった。このままの傾向が続けば、下手をすると8割、少なくとも7割の人間は「生涯ヒラ社員」で終わる可能性が高い。

これはとても恐ろしいことだと筆者は考える。というのも、人間は、それ以上のリターンが望めないとわかると、必ず手を抜こうとするものだからだ。想像してみて欲しい。窓際に座ってぼーっと外を眺めていたり、新しい企画にはとりあえず反対から入ったりやらなくていい理由を探すような困った中高年が、きっと誰でも一人くらい頭に浮かぶはずだ。そういった中高年が過半数を占めるようになったとしたら、組織は完全に活力を失うだろう。

単線型キャリアパスの見直しを

いかにして多様な人材を戦力として取り込むか。そして、いかにして40代以降の人材のモチベーションを維持していくのか。処方箋としては、年功序列という単線型のキャリアパスを廃し、担当する職務に応じて処遇を決める職務給(=役割給)に置き換えを進める以外にはない。

そうすれば年齢ではなく「〇〇が出来る人材が必要だ」と言えるようになり、何歳だろうがどんな経歴だろうがそのスキルのある人材を世界中から採用することが可能となる。何歳からでも役割に応じた処遇が目指せるから、モチベーションをロストする中高年も減らすことが可能となるだろう。

急な置き換えが難しいのなら、中途採用者や高スキルの新卒者だけに限ってもよいし、35歳以降という具合に限定しても構わない。いずれにせよ、まずは組織内で人事を流動化することが、今後の日本企業にとっては人事戦略のカギとなるはずだ。

【編集部より】
就職氷河期世代に関する、人気記事はこちら。

執筆者紹介

城繁幸(じょう・しげゆき)(人事コンサルタント・作家) 1973年生まれ。東京大学法学部卒。富士通を経て2004年独立。06年よりJoe’sLabo代表を務める。代表作『若者はなぜ3年で辞めるのか?』(光文社)、『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』(筑摩書房)、『7割は課長にさえなれません 終身雇用の幻想』(PHP研究所)など。

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