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特集

株式会社LIFULL 羽田幸広氏インタビューvol.2


「日本一働きたい会社」LIFULLに学ぶ、効果的な人事施策を行う3つのコツ

2017.12.28

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日本最大級の不動産・住宅情報サイトLIFULL HOME‘Sの運営会社・株式会社LIFULLの人事本部長で、「日本一働きたい会社のつくりかた」著者の羽田幸広氏。前回の記事では、「日本一働きたい会社プロジェクト」と、そこから派生した社内大学「LIFULL大学」についてお聞きしました。後半では、「LIFULL」大学の個別のゼミや、多くの人事の方が悩む「人事施策を社内に浸透させる方法」、そして「企業における人事の役割」についてお聞きします。

目次
  1. 新規事業での失敗体験を共有する「しくじり元社長」ゼミ
  2. 効果的な人事施策を行うコツ①「一貫していること」
  3. 効果的な人事施策を行うコツ②「調和していること」
  4. 効果的な人事施策を行うコツ③「市民権を得ること」
  5. 人事の仕事は「社会」と「会社」に対しての貢献
羽田 幸広(はだ・ゆきひろ)

LIFULL人事本部長の羽田幸広氏

1976年生まれ。上智大学卒業。人材関連企業を経て2005年6月ネクスト(現LIFULL)入社。
同社の人事部を立ち上げ、企業文化、採用、人材育成、人材制度の基礎づくりに尽力。2008年からは社員有志を集めた「日本一働きたい会社プロジェクト」を推進し、2011年から7年連続『働きがいのある会社』ベストカンパニー選出に貢献。

著書日本一働きたい会社のつくりかたは、サイバーエージェント社長・藤田晋氏、ガンホー創業者・孫泰蔵氏、LINE元CEO・森川亮氏らに推薦されている。

新規事業での失敗体験を共有する「しくじり元社長」ゼミ

─書籍で紹介されていたLIFULL大学のゼミで、「しくじり元社長、失敗体験を語る」という講座が本当に良い取り組みだと思ったのですが、詳しくお聞きしても良いですか?

昔、ある新規事業が上手くいかず撤退した際に、事業責任者が会社に恩返しするために失敗を共有する会を開催したことがあって、この講座はその流れを汲んだゼミです。新規事業に取り組んだ社員が、自分の失敗をシェアしました。

「なるほど」と納得できる内容もたくさんあって。一人で起業すると、悩みを打ち明けられる相手がなかなか周りにいなくなってしまうので、スタートアップの次点で相談できる相手がいた方が良かったとか。よく言われるような話も、実感として話をされると聞く側への響き方も違いますね。

─たしかにそうですね。特に、セミナー講師のような立場ですと、成功したお話は多くされますけど、失敗のお話はされないことが多いように思います。

社長の井上が、全社総会でよく引用する言葉に「薩摩の教え」というものがあって、その影響はあると思います。正確な出典は不明なのですが、考え方が非常に共感できるもので、社員にもこうした思考が浸透していることが、失敗談を素直に話せる社風を作っている部分はあります。

薩摩の教え(作者不詳)

人の価値は、以下の順番で決まる。
1. 何かに挑戦し、成功した者
2. 何かに挑戦し、失敗した者
3. 自ら挑戦していないが、挑戦した人を手助けした物
4. 何もしなかった者
5. 何もせず、他人の批判だけをする者

効果的な人事施策を行うコツ①「一貫していること」

─LIFULLでは、さまざまな人事施策が社内に浸透しているように思うのですが、上手くいくためのコツを、あえて3つにまとめるとすれば、どういった内容になるでしょうか?

一つは「一貫していること」です。会社のビジョン・戦略と人事施策が一貫していること。これがないと、何のために施策やっているのか分からなくなりますよね。ここが一気通貫していることがまず重要です。

─LIFULLでも、人事施策が、社是・経営理念につながっている。

そうですね。社名変更を4月にしたのですが、この「LIFULL」という社名がまさに経営理念を表しています。あらゆる「LIFE」を「FULL」に、世界中のさまざまな方の人生や生活、暮らしを満たしていく。そのために、今世の中に無いものは作り出し、あるものは更に良くしていく。この想いを実現しようと試行錯誤した結果、今の人事施策群になっています。

経営理念と一貫した、LIFULLの人事施策

LIFFULでは今、900人近い人材が働いていますが、みんなが今まで生きてきて感じた、暮らしの中の不満・不・不便というものがたくさんあるだろうし、それは、経営陣10人が認知しているものをはるかに上回っています。

世の中のあらゆる課題を解消するためには、社員一人ひとりが感じている課題に向き合い、新たな事業を考えて、それぞれが責任者となって次々とアプローチしていった方がいい。つまり、経営陣が主導でやるだけではなく、社員全員がどんどん提案し、良い提案なら思い切って任せる。この形のほうが、いち早くあらゆるLIFEをFULLにできる、つまり経営理念を実現できるわけです。

そのための人事施策として新規事業提案制度「Switch」であるとか、良い事業プランであれば子会社化して社長を任せるとか、それぞれの社員が自分に必要な「知」を自分で学べるLIFULL大学のような人事施策を実施しています。

効果的な人事施策を行うコツ②「調和していること」

二つ目は、「調和していること」。全体の構造を常に意識して施策を作るということです。施策を単発で実施していっても、あまりうまくはいきません。ひとつひとつの施策を見ていったときに、全体として調和が取れているか、施策同士に矛盾がないかを考えることが大切だと思います。

個別の手当や休暇などについても「全体として我々の人事施策はこうしたスタンスだから、こうした手当、休暇を実施します」と伝えられることがとても大事かなと思います。

我々は我々の経営理念から現在のような形で人事施策を実施していますが、逆に、超トップダウンの会社があっても良いと思っています。ただ、そういう会社で、たとえば「LIFULL大学」のような形式の社内大学をそのまま導入しても、おそらくうまくはいかない。講師が自発的に出てこない可能性がありますので。それが駄目かというとそうではなく、それぞれの会社に正解があって、ある会社にとっての正解が他の会社にとっての正解かどうかは分からない、ということですね。

効果的な人事施策を行うコツ③「市民権を得ること」

三つ目が、「市民権を得ること」。社員に浸透し、社員が自発的に使いたいと思えるものになっているということ。
人事施策は社員に使ってもらわなければ意味がないので、自分から「使おう」と思えるものでないといけませんよね。どういった施策をつくるのかについても、社員の「内発的な動機付け」を大切にしようと考えています。

LIFULL社・羽田氏が教える人事施策を社内に浸透させる3つのポイント

─「内発的な動機付け」という単語が著作の中でも多く登場し、LIFULLの人事施策におけるキーワードと感じたのですが、具体的には、どういったものなのでしょうか。

「動機付け」というと少しわかりづらいですけど、こうなりたい、何かをしたいという気持ち、「内発的な欲求」というふうに考えていただければと思います。

たとえば、最近では、社会貢献活動支援プログラム(通称One P‘s ワンピース)という取り組みを開始しました。このプログラムでは、ボランティアのような社会貢献活動をしたい社員に対して特別に有給休暇を付与し、その活動に参加するにあたっての交通費などの実費を支援します。

これは、当社の「利他主義」という社是から生まれたプログラムです。事業に直接関係のない、他者への貢献活動にも出来るだけお金と時間を提供して支援していこうと考えていて、こうした施策にも全て社員の「内発的動機付け」に対して挑戦機会を提供したいという思いが根底にあります。

社員が気軽に活用できるよう、施策へのアクセスをなるべく簡単にする

─社員が自発的に施策を使うようになるために、他に工夫されていることはありますか?

社員にも制度づくりにかかわってもらうこと、社員が簡単にアクセスでき、簡単に使えることを意識しています。

─「社員が簡単にアクセスできるようにする」ために具体的に実施していることがあれば教えてください。

LIFULL大学のゼミナールでは、「ゼミの概要」はパワーポイント1枚の資料で作ってもらうんですね。この資料もフォーマットを作っているので、決められた場所に指定された情報を入力すればすぐ作れる。だから講座を開講しやすい。それを読むほうも、フォーマットが決まっていれば大量の講座があっても効率的に情報を収集できます。集客も人事が全部やるので講師の方にはなるべく負担がかからない形でやっていますね。

人事の仕事は「社会」と「会社」に対しての貢献

─最後に、羽田さんにとって「人事」とはどういう仕事ですか?

「事を成す」と言いますが、人事の基本的な仕事は「人を以て事を成す」ことだと思っています。事業ビジョンを実現するために、人材を採用し、組織化し、工夫を重ねることで、リミッターを外し、人材のエネルギーを解放することが最低限やるべき仕事です。

そのうえで実現したいと考えているのは、社員が幸せであることです。僕は、会社とは社会に新たな価値を提供するために存在していると思っていますが、そのために社員が不幸になるのであれば、僕は会社という仕組みに価値を見出すことができません。仕事というのは人生のうちの一部だと思うのですが、費やす時間的にも大きな部分を占めた「一部」なので、仕事で社員の人生を幸せにするためにはどうしたらいいかを考えていくのが、人事の大切な役割だと思います。

そう考えていくと、人事は「会社に対しての貢献」と、「社員に対しての貢献」の両方を行う仕事だと思います。当社もまだまだ道半ばで色々な課題がありますが、少しずつ前進していきたいと考えています。

【2017年10月、LIFULL本社オフィスにて取材:聞き手、撮影 @人事編集部】

企業プロフィール

社名 株式会社LIFULL 英文:LIFULL Co., Ltd.
社是 利他主義
設立 1997年3月12日
主要事業 不動産情報サービス事業(不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME’S」の運営)
従業員数 1,140名(2017年3月末現在、内、臨時雇用者数 236名、海外子会社153名)
URLhttps://LIFULL.com/

【編集部より】
株式会社LIFULLに関する、この他の記事はこちら。

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