コラム

社員に選ばれる会社の人事制度・人材開発


「自転車・バイク通勤手当」と「近隣住宅手当」で社員の通勤をサポートする

2017.12.12

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さまざまな取り組みを通じて「社員に選ばれる会社」を作るポイントを解説する、人事のプロ・永見昌彦氏の連載企画。今回は、「社員の通勤」に関する手当について解説します。

目次
  1. さまざまなケースが想定される、社員の通勤事情
  2. 公共交通機関以外の通勤制度について、考慮すべき5つのポイント
  3. 近隣住宅手当によって、職住近接をサポートする

さまざまなケースが想定される、社員の通勤事情

会社への通勤といえば、電車やバスなどの公共交通機関によるものが首都圏では主流です。そもそも会社の事業所周辺に駐車(輪)場が無いといった理由もありますが、通勤途上での事故の発生頻度の高さも、公共交通機関による通勤が好まれる理由として挙げられるかと思います。そのため、自動車・バイク・自転車による通勤そのものを禁止している会社もあります。その一方、会社の事業所が駅から遠い、夜勤などの関係で公共交通機関を使用して通勤できないといった理由のため、電車通勤以外にも自転車やバイクでの通勤を認めている会社もあります。

今回は、公共交通機関以外での通勤を認める際に考慮すべき点や、通勤手当に関連して、職場から近距離に住む社員に対して一定の手当を支給するケースについて述べたいと思います。

公共交通機関以外の通勤制度について、考慮すべき5つのポイント

いくつか検討すべきポイントがあると思います。具体的には以下の5点です。

1.対象者

対象者に関しては大きく分けて2通りの考え方があると思います。
1つ目は、該当の事業所に勤務する社員ならば、事前に申請すれば認めるケースです。原則として公共交通機関以外での通勤を認めており、社員数分かそれに近いだけの駐車(輪)場が十分に確保されていることが前提となります。郊外に事業所がある、夜勤や早朝勤務のシフトのため公共交通機関が使用できない状況であるといった環境において選択されるケースです。

2つ目は、「通勤距離が一定以上である」「電車など公共交通機関を使うよりも利便性が高い」といった何らかの基準を設けるというケースです。この基準は、どちらかといえば例外対応として公共交通機関以外での通勤を認めている場合に用いられます。

2.駐車(輪)場

駐車(輪)場については、以下のいずれかで対応する必要があります。当然、路上駐車は法律に反するので論外です。

  • 会社が事業所の敷地内外に駐車(輪)場を準備して、そこにとめてもらう
  • 近隣の駐車(輪)場を社員が個別に契約し、その契約書のコピーを提出してもらう。(この場合、契約費用の会社負担有無は別途検討する)

都心に事業所がある場合は、そもそも駐車(輪)場が確保できないので、公共交通機関以外での通勤を認められないというケースが多いでしょう。

3.通勤手当

通勤手当の本来の目的は「実費弁償」です。実費弁償とは「業務を行うにあたってかかった費用を支給してもらうこと」です。そのため、公共交通機関による通勤の場合は、その実費(実際には定期代)を支払うことを意味しています。一方、個人所有の自動車・バイク・自転車については、通勤のためだけではなく私用で使用することもあるので、そういったものの購入費用・ガソリン代などは実費弁償には入りにくいでしょう。実際には、以下のいずれかで対応しているケースが多いです。

  • 電車通勤相当の金額を支給
  • 事業所から自宅までの距離に応じた非課税枠を考慮した、別基準による手当支給

参考:マイカー・自転車通勤者の通勤手当(国税庁)

4.労災/保険

合理的な経路(通勤経路)の中で発生した事故は労災扱いになります。しかし、それを外れる経路の場合は対象外となるので、通勤災害が適用されない場合のリスクについて、社員によく説明する必要があります。例えば、通勤途中での交通事故は労災扱いになりますが、寄り道してスーパーで買い物をした際に事故にあった場合、通勤経路から外れているので労災対象外となります。一方、社員が事故を起こすケースも想定して自賠責保険、対物・対人保険などの加入を必須にするケースがほとんどです。その保険費用を会社が負担することもあります。

5.規程

自転車・バイク通勤について、何らかの規程は整備しておく必要があります。就業規則の中に盛り込む、あるいは別途「自動車・バイク通勤規程」のようなものを設けることでも構いません。具体的には上記に述べた内容が記載されていること、および、通勤手当を電車通勤時の支給金額とは異なるルールで支払う場合は、返還請求および懲戒処分も含めた内容も考慮した方がよいです。

年度更新などを行うことによって、公共交通機関以外での通勤対象の可否の定期的なチェックや、異動・引越しなどにより現住所が変わる際の対象可否を確認するといった運用上の留意事項もあります。そのため、公共交通機関以外の通勤制度を設けるかどうかは、全社共通であるかどうかよりも、事業所毎の勤務形態やロケーションなどの環境にあわせることが肝要となります。

近隣住宅手当によって、職住近接をサポートする

スタートアップ企業など新しく設立された会社を中心に、最近の傾向として、会社から近距離に居住している場合は「近隣住宅手当」を支給するケースもあります。会社の最寄り駅から2駅以内、会社から3キロ以内というように近距離の定義は会社によって異なります。また、近隣住宅手当の金額は月額2万円~3万円を設定しているところが多いです。中には徒歩圏内に住んでいる場合は月額5万円支給するところや、入社後3キロ圏内に引っ越して来た場合は、初回のみ一律10万円を支給する会社もあります。

首都圏の場合、郊外から通うことによって通勤時間が1時間以上かかり、それによる通勤手当代が高いケースも多いです。そのため、経費削減の側面と長時間の通勤による疲労やストレスを原因とする生産性の低下を防ぐ、さらには社員の健康面を考慮していることがこういった制度を導入している背景としてあげられます。この場合、通勤手当の支給対象外にするケースもあれば、「近隣住宅手当」を併用して支給するケースのどちらもあり、これは会社の特性によって異なるかと思います。

執筆者紹介

永見昌彦(ながみ・まさひこ) アルドーニ株式会社代表取締役。外資系コンサルティングファームなどで人事コンサルタントとして勤務した後、事業会社(ラグジュアリーブランド持株会社)で人事企画担当マネージャーとして人材開発・人事システム・人事企画を兼務。事業会社、コンサルティングファームの両面から人事に20年たずさわった経験を活かして、2016年にフリーランス人事プランナー・コンサルタントとして独立。2018年に法人化。現在、人事全般のプランニング・コンサルティング・実務にたずさわっている。

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