コラム

失業経験アリ人事コンサルによる直球コラム


職場に子どもを連れてくる社員への対応、どうするべき?

2017.12.11

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目次
  1. 熊本市議の「子ども連れ議会出席」が賛否両論で話題に
  2. 人事担当者も頭を悩ませる、「仕事と育児の両立」問題
  3. 社員が職場に子どもを連れてくることを、容認する義務はない
  4. 社内で線引きを明確にした上で育児支援を行う

熊本市議の「子ども連れ議会出席」が賛否両論で話題に

2017年11月22日、熊本市議会でひとつの騒動が起こりました。ある女性議員が自らの子ども(生後7ヶ月)とともに本会議場に入場しようとしたところ、議長と事務局が制止。「本会議中は議員以外は議場に入場できない」という市議会の規則が、議会側の入場禁止の根拠です。話し合いの結果、女性議員は子どもを親族に預け、本会議は40分遅れで開会されました。

西日本新聞では、この騒動について「子育てしながら働く女性の環境整備に一石を投じた行動」と評価する声を紹介する一方で、「問題提起にはなったのかもしれないが、議会の貴重な議論を妨げてしまっては他の議員や市民の理解は広がらず、かえって逆効果になるのではないか」との声も取り上げられています。

【参考】熊本市議の乳児連れ議会出席、議員や市民は反対6割 「事前に理解必要」 「一石投じる」と評価も(西日本新聞)

人事担当者も頭を悩ませる、「仕事と育児の両立」問題

この騒動の背景には、深刻な待機児童の増加により、育児を担う人材の社会進出が遅れていることがあげられます。「社員の仕事と育児の両立」は人事・総務担当者にとっても重要なテーマですが、「答えが明確にない、先送りにしたい話題」と考えている方も多いのではないでしょうか。

子どもを預けられる保育所が周辺にないことから、社内託児所の開設を望む声も一部にはあり、実際に社内託児所を実現している企業も存在します。しかし、大多数の企業では、現実問題として社内にそうした託児スペースを設けられる余地は少なく、ただでさえ不足している保育士の採用問題も出てきます。

また、社員からは「育児がある社員だけ福利厚生が充実している」「独身者や子どもがいない社員が受けられない福利厚生なんて不公平じゃないか」といった声も上がりかねません。社内託児所の開設ができる企業は、ごく一部というのが現実です。

国家戦略としては「育児と仕事の両立は重要課題である」ということは盛んに喧伝されていますが、企業との温度差は広がっていると言わざるを得ません。

そうはいっても、育児介護休業法では育児休業制度があり、厚労省も「イクメンプロジェクト」を推進している世情で、「企業としては何もしないわけにはいかない」というのもまた事実です。今回は、現場のリアルをふまえ、「職場に子どもを連れてくる社員」への対応を考えます。

社員が職場に子どもを連れてくることを、容認する義務はない

まずそもそも、会社は社員が職場に子どもを連れてくることを容認しなければならないのでしょうか?
結論から言えば、会社は社員が子どもを連れてくることを容認する義務はありません。今回は、子どもを連れてくることを「容認しない立場」「容認する立場」それぞれに分けて、対応を紹介しましょう。

職場に子どもを連れてくることを容認しない場合

法的には「育児時間の確保」は定められていますが、社員は同時に「職務専念義務」も負っています。育児をしながら仕事をするというのは、「職務に専念していない」と捉えることも可能です。そのため、「社内秩序維持のため、会社の許可なくして社内に社員以外を入場させることを禁ずる」といった規定を作ることで、子どもを職場に連れてくることを明確に禁止することができます。また、社内規定に従わない社員の退場・入場を禁止することも可能です。

これが「容認反対」の場合です。こうした社内規定を策定した上で、子どもを連れてくる社員に対しては、減給などの厳しい処分ではなく、会社の自由裁量権が大きい賞与の査定減額(仕事に影響した場合のみに限る)や、人事考課での評価などで対処するのが得策でしょう。

職場に子どもを連れてくることを容認する場合

職場に子どもを連れてくることを容認する場合はどうするべきでしょうか。この場合でも、ただ「連れてきていいよ」となあなあで認めてしてしまうのは、決して良い結果を招きません。しっかり次の事項について決めるべきです。

  • 連れてきても良い子どもの対象年齢
  • 子どもを連れて仕事をする上限時間

こうしたことを全く決めないで放置すると、会社の規律が乱れる原因となります。しっかりとしたルールの上で、仕事と育児の両立という大義名分を果たすことが大切です。

また対象にならない社員のために、ある程度の人事考課・賞与査定での差はつけるべきでしょう。ノーワーク・ノーペイの原則は貫いた上で、職務に支障が出た部分を減点という形ではなく、しわ寄せがきた社員に還元する体制作りが必要でしょう。

社内で線引きを明確にした上で育児支援を行う

このように、会社の方向性によって、作る制度も対応も全く異なってきます。大原則は「会社は育児支援はするが、育児施設ではないのだ」ということをしっかり社員に伝え、守るということです。具体的な育児支援の内容としては、以下のようなものが挙げられるでしょう。

  • 託児所の斡旋(法人契約だと受け入れ幅が大きくなる託児所・保育所もある)などを積極的に行う
  • 社外で育児時間を取れるよう、時短制度を導入する
  • 保育園に預けたあとでも通勤しやすい環境を作る

また、職場に子どもを連れてこなくても済むように、「テレワーク」などで育児と仕事を自宅で両立できる仕組みを模索するという方法もあります。

最終的には「会社としてどうしたいのか」という方針が重要な要素になりますが、大前提は「子どもの存在が人材確保・活用の妨げになってはならない」ということ。そして「子どもの育児による社業への影響を最低限に抑える」ということでしょう。

「仕事の育児の両立」のあり方について、社内で議論があまり行われていない場合、冒頭でご紹介した熊本市議会のように、半ば突発的に子どもを連れてきたりするケースが出ないともかぎりません。社内がギクシャクしないよう、しっかりと社内規定の整備と運用を進めていきましょう。

【編集部より】
育児・介護休業法の詳しい解説記事はこちら。

執筆者紹介

田中 顕(たなか・けん)(人事コンサルタント) 大学を卒業後、医療系人材派遣会社・広告代理店で人事を担当したのち、密着型人事コンサルティング団体「人事総合研究所」を設立。代表兼主任研究員として、労務相談受付・課題解決に取り組む。得意分野は採用・法務・労務・人事全般の問題解決等、多岐にわたる。

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