jMatsuzakiの「自己啓発書評」
『嫌われる勇気』~自由かつ幸福に働くために
2015.10.14
私の愛しいアップルパイへ
私が去年読んだ本のなかで最も衝撃的かつ味わい深かったのは「嫌われる勇気」です。2015年1月現在で63万部を突破し、心理学の本としては異例のヒットとなった一冊です。ちなみに、Amazonの2014年書籍年間ランキングの和書総合カテゴリでも1位だったそうです。
本書は、アルフレッド・アドラーの「アドラー心理学」を基に、私たちが自由に、そして幸福に生きるための実践的な考え方を教えてくれます。
自由に、でもやりがいを持って働くためにアドラー心理学が教えてくれたこと
あなた自身が変われば、世界はシンプルな姿を取り戻します。問題は世界がどうであるかではなく、あなたがどうであるか、なのです。
本文より引用 位置No.68/3760
※引用番号は電子書籍のページを示しています。
アドラー心理学は「人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである」と断言し、誰もが今日から幸福になれることを教えてくれる非常に実践的な心理学です。対人関係を改善しながら、自由で幸福な働き方をするために必要なことを教えてくれます。
その内容は従来の一般的な考え方を痛快に否定してくれて、読めばハッと目が覚めるような体験を与えてくれるでしょう。 今日は本書で説かれていることのなかで、特に重要なポイントを5つご紹介します。
- 生き方は過去の経験に「どのような意味を与えるか」で決まる
- 人は常に「変わらない」ことを決心している
- すべての悩みは「対人関係の悩み」である
- 承認欲求は不自由を強いる
- 仕事の本質は、他者への貢献
1つ1つ見ていきましょう。
1.生き方は過去の経験に「どのような意味を与えるか」で決まる
アドラー心理学の大きな特徴の1つは、人は誰でもいつでも変わることできると説いている点です。
あなたは過去が現在を作っていると思うでしょうか?過去に起きた出来事、過去に得た経験、過去に作った環境、これらが現在の土台になっていると。だから、人は簡単に変わることができないと。
きっと多くの人がそう思っているに違いありません。過去の失敗が不幸を招いた。過去の経歴が職業につながった。過去の人間関係で性格が変わった。これらは、原因があって結果がある生き方です。しかし、本書では、この過去の原因が現在の結果を作っているという考えを明確に否定します。
つまり、過去の原因が現在を作っているのではなく、現在が過去に与える意味によって現在を作り出しているという考え方です。本書では以下のように説明しています。
いかなる経験も、それ自体では成功の原因でも失敗の原因でもない。われわれは自分の経験によるショック——いわゆるトラウマ―—に苦しむのではなく、経験の中から目的にかなうものを見つけ出す。自分の経験によって決定されるのではなく、経験に与える意味によって自らを決定するのである。
本文より引用 位置No.285/3760
経験それ自体ではなく、経験に与える意味によって現在が決まるのです。過去に縛られないので、誰でもいまから自由で幸福な生き方ができるというわけです。
2.人は常に「変わらない」ことを決心している
過去に与える意味を変えるのは、そう簡単な話ではありません。人が簡単に変われないことは誰でも知っています。
本書では、人は常になにかしらの目的に沿って生きているという「目的論」という立場でこの事実を説明します。つまり、変われない人は「変わらない」という目的のために生きているのです。
夢があっても行動に移せない。職場の人間関係を改善したくても行動に移せない。気になるあの子に告白したくてもできない。
これらはすべて「変わらない」という目的を達成するために選択した行動なのです。それがライフスタイルになってしまっている。なぜ「変わらない」なんて馬鹿げたことを決心しているか疑問でしょうか。しかし、これはよくあることです。
悩むことで人の注目を得たいのかもしれません。行動に移さないことで、やってもうまくいかなかったという現実に直面するのを避けているのかもしれません。変わらないことで誰かに無言の圧力をかけたり、過去の復讐をしたりしたいのかもしれません。
いずれにせよ、変われないのは過去が原因なのではなく、いま「変わらない」という目的を達成するために変わらないのです。そして目的に着目すればこそ、変わることもまた可能ということです。
3.すべての悩みは「対人関係の悩み」である
もう1つ、アドラー心理学の大きな特徴の1つは、すべての悩みは「対人関係の悩み」であると説いている点です。本書では、もしこの世界から対人関係がなくなってしまえば、あらゆる悩みも消え去るとまで書かれています。
個人の内面に抱えている悩みも、精神的で高尚な悩みも、働き方に関する悩みも、どのような悩みも例外なく、突き詰めれば必ず他者の影が介在しているということです。もっと言えば、他者との比較から生まれる劣等感が、悩みの種なのです。
同時に、この他者との比較から生まれる劣等感は、すべて主観的な解釈に過ぎないと本書では明言しています。私たちは様々な劣等感を抱え、それに悩まされていますが、それらはすべて他者との比較から生まれる主観的な劣等感なのです。
われわれを苦しめる劣等感は「客観的な事実」ではなく、「主観的な解釈」。
本文より引用 位置No.897/3760
4.承認欲求は不自由を強いる
すべての悩みの源泉となる「対人関係の悩み」を解決するうえで、大きな障壁となるのが「承認欲求」です。承認欲求とは、誰かに認められたいとか、多くの人に認められたいとか、称賛を得たいとする欲求のことです。
承認欲求に振り回されている間は、悩みが尽きることはなく、自由にもなれません。それどころか、承認欲求を満たそうとすればするほど、間違った方向へと進むことになるでしょう。その理由は2つあります。
第一に、人に認められるために何かをするということは、裏を返せば「認めてくれる人がいなければ適切な行動をとらない」「罰する人がいなければ不適切な行動もとる」という考えに向かっていきます。
第二に、承認欲求はいずれ他人をコントロールしようという欲求に向かいます。そのため、コントロールすることのできない他人に胸を引き裂かれるような思いをしたり、他人をコントールするために嘘をつくようになったりするでしょう。
他人に認められたいとする衝動を抑え、他人からの承認を気にかけず、嫌われる勇気を持つこと。これが自由の入り口なのです。
5.仕事の本質は、他者への貢献
それでは、誰からも認められない生活、誰にも興味を持たない生活、誰とも関係のない生活を送れということでしょうか。もちろん、それは違います。
本書には対人関係のゴールは「共同体感覚」だと書かれています。つまり、嫌われる勇気を持ちながら、仲間のために貢献しようとすることです。
ここでいう共同体とは、わたしとあなたの関係をはじめ、家族や友人、地域や学校なども含まれます。もちろん職場や仕事も含まれます。
この自らが所属している共同体に対して積極的にコミットしていくことで、幸福を得られるのです。他人から認められることではなく、自分からコミットしていくことなのがポイントになります。本書の一節を引用しましょう。
我々はみな「ここにいてもいいんだ」という所属感を求めている。しかしアドラー心理学では、所属感とはただそこにいるだけで得られるものではなく、共同体に対して自らが積極的にコミットすることによって得られるのだと考えます。
本文より引用 位置No.2348/3760
心理学を知らなくても深い洞察を得られる一冊!
アドラー心理学と聞くと、心理学に馴染みのない方はとっつきにくさを感じるかもしれません。
しかし、本書を読むために心理学の前知識は必要ありません。人生や対人関係に悩む人なら誰にでも役立つ本になっているのが素晴らしいところです。
人生の方向性に悩んでいる、働き方について考えている、対人関係を良くしたいと思っているならぜひ手にとってみてください。人は誰でもいまこの瞬間から幸福になれることを教えてくれ、あなたの進むべき道を明るく照らしだしてくれるでしょう。
貴下の従順なる下僕 松崎より
執筆者紹介
松崎純一(jMatsuzaki) IT系専門学校を卒業後、システム屋として6年半の会社員生活を経て独立。 ブログ「jMatsuzaki」を通して、小学生の頃からの夢であった音楽家へ至るまでの全プロセスを公開することで、のっぴきならない現実を乗り越えて、諦めきれない夢に向かう生き方を伝えている。 2015年からはjMatsuzaki名義でバンド活動を開始。 ブログ:jMatsuzaki(http://jmatsuzaki.com/)
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