コラム

社員に選ばれる会社の人事制度・人材開発


「オフサイト研修」で、マネージャーとして必要なスキルを習得する

2017.11.15

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さまざまな取り組みを通じて「社員に選ばれる会社」を作るポイントを解説する、人事のプロ・永見昌彦氏の連載企画。今回は、永見氏が外資系企業勤務時に経験した、マネジメントスキルを習得する「オフサイト研修」をご紹介します。

全世界共通の研修プログラムと、各国固有のニーズによる研修

私が在籍していた事業会社は外資系企業だったので、全世界共通の研修プログラムも存在していました。

例えば、新しく入ってきた社員に対する「新入社員オリエンテーション」や、業績評価の評価者を対象とした「評価者研修」といったものは、研修の内容がある程度決まっており、それを現地の言語で提供するローカライズを行っていました。ただ、それ以外にも各国固有のニーズに応じて企画・実施していた研修もあります。

今回はそのうちの一つで、受講者だけではなくその上司からも評価が高かった「ベーシックマネージメント研修」の概要や、その効果についてご紹介したいと思います。

新任マネージャー等が対象の「ベーシックマネージメント研修」

決められたタスクの期限を守って完了させることができるのはメンバーにとっては必要なことです。しかし、マネージャーとなってくるとそれだけではなく、複数のメンバーの指導・育成をしながらそのメンバーをとりまとめて大きなタスクを完了させていくことが求められます。さらに、そのメンバーの評価も行うことも役割として入ってくるので、責任範囲が広くなり、かつ深みが出てくるといってもよいでしょう。

そこで、マネージャーになったばかりの方や、あと1,2年でマネージャーになる予定の方々を対象とした「ベーシックマネージメント研修」という研修を年に1回、2日間の日程で開催していました。受講者は公募としていましたが、過去に同じ研修を受講した上司から推薦されて参加される方も多かったです。年によって参加人数は異なっていましたが、だいたい10数名くらいで行っていました。研修の目的は以下の通りです。

  • マネージャーの役割を明確にする
  • マネージャーに必要な基礎知識を習得する
  • スタッフ(部下)の行動特性について理解する
  • (企業で定めた)コンピテンシーをリーダーの行動指針として理解・習得する
  • 自分のめざすマネージャー像を描く
  • 自身の行動特性を理解する
  • コーチングとは何か、メンバーの指導・育成にどう役立つのかを実践を通して理解する

マネージャーとは何なのかといったことを理解した上で、労務管理などマネージャーとして習得しておくべき知識や企業が求めるリーダーの行動指針が何なのかを学びます。さらに、スタッフ(部下)の育成のために必要なツールとしてコーチングを使えるようになり、今後どんなマネージャーになっていきたいのか、そのために何をするのかというアクションプランを作成して終了する、内容盛りだくさんの研修です。

オフィスから離れた場所で宿泊研修を行う3つの理由

この研修は2日間で、東京都内近郊のオフィスから離れたところでの宿泊を伴うオフサイト研修でした。その背景としては下記のようなものがあげられます。

  • オフィスから離れたところで、日常の業務から切り離して集中して研修に取り組む環境をつくる
  • アジェンダが多く、研修時間がそれなりに必要となる
  • 受講者同士の横のつながりを構築できるきっかけをつくる

2日間職場を離れるというのは、業務上なかなか難しいという声は社員からもらっていました。しかし、普段の職場から切り離した環境のもとで、「マネージャーとしての役割を果たすために必要なことは何なのか」ということを多面的な角度で考えられるように、ケーススタディやグループワークの時間を多くとった構成にしていました。

また、部門をこえたつながりというのは、ほとんどが中途採用で構成されていた企業だったこともあり、なかなか生まれにくい状況でした。社内サークルといった取り組みも行っていましたが、実は研修の実施そのものを「社内活性化」のツールの一つとして位置付けていました。そのため、夜は夕食を兼ねた懇親会を行う、研修プログラムの初日と2日目ではグループ編成を変える、ペアワークの時は後半になると「今まで組んだことの無い人とペアになる」というルールを作っていました。

研修後の効果測定は、「アクションプラン」を軸に実施

研修の最後には、「今回の研修で学んだことを、職場でどう活用するのか」を軸としたアクションプランを作成してもらいます。そのアクションプランは、事務局(人事部門)経由で、受講者の上司にも共有していました。これは研修受講報告というよりも、受講内容に関する実践のサポート役として、上司の関与は最重要だと判断していたために行っていました。

それと同時に、研修終了後のなるべく早い段階で、アクションプランについて受講者とその直属上司との間で、直接話し合いの場を持つように双方に依頼をしました。オフィスで受講者を見かけた時や別の機会に伺ってみると、かなり高い割合で実施していたようです。

研修実施の3か月後および6か月後にアンケートを行う

受講直後のアンケートや「アクションプランを元にしたミーティングの実施依頼」だけではなく、「受講3か月後および6ヶ月後の受講者へのアンケート」も行っていました。ここでは、「研修で学んだことが活かせたことは何か」「やってみて難しいと感じた点は何か」など3-4個の質問に限定していました。回答の内容によっては、部門担当のHRビジネスパートナーと連携することもありました。

さらには、こういったコメントを通してプログラムの改善ポイントが浮かび上がることもあるので、プログラム骨子はそのままに中身のブラッシュアップを継続的に行うきっかけにもなりました。


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執筆者紹介

永見昌彦(ながみ・まさひこ) アルドーニ株式会社代表取締役。外資系コンサルティングファームなどで人事コンサルタントとして勤務した後、事業会社(ラグジュアリーブランド持株会社)で人事企画担当マネージャーとして人材開発・人事システム・人事企画を兼務。事業会社、コンサルティングファームの両面から人事に20年たずさわった経験を活かして、2016年にフリーランス人事プランナー・コンサルタントとして独立。2018年に法人化。現在、人事全般のプランニング・コンサルティング・実務にたずさわっている。

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