コラム

残業ゼロを目指して


なぜ人の意思はあてにならない? 「意志力の科学」を仕事に応用する

2017.11.09

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残業ゼロを実現するためのビジネスハック術を紹介する、ベストセラー作家・佐々木正悟氏の連載企画。今回は、『WILLPOWER 意志力の科学』というビジネス書の内容を参考に、「意志力」を意識した仕事術をご紹介します。

目次
  1. 「人の意志はあてにならない」という前提
  2. 意志力は、筋力と似たような性質を持っている
  3. 意志力という観点からも、早い時間に仕事をこなすことは大切
  4. 意志力の節約を考えつつ、使うための「スイッチ」も意識する
  5. シングルタスクに徹することが、意志力の有効活用につながる

「人の意志はあてにならない」という前提

以前の記事で登場した、『スタンフォードの自分を変える教室』の中で注目作として紹介されていた著作に、『WILLPOWER 意志力の科学』があります。本書は心理学者であるロイ・バウマイスターの著書で、一時大きな話題になったのですが、最近はある程度「常識化」してしまったのか、取りざたされることは少なくなっています。

ご多分に漏れずというか、この本でも「意志の力はあてにならない」という認識がまず前提にあります。意志力をタイトルに掲げながら「意志の力は絶対だ」といったタイプの本がめったにないというのは、面白い現象だと思います。

意志力とは、本書によれば、「誘惑や、困難に負けず、自分をコントロールし続ける力」を指します。その上で同書はとことん「なぜ意志の力はあてにならないか?」といった点を科学的に追求しています。「あてにならないから仕組み化しよう」といったタイプの、ライフハック系とはまた違ったアプロ―チです。

意志力は、筋力と似たような性質を持っている

結論から述べると、なぜ意志力があてにならないかといえば、それは、見えない筋力のようなものだからです。この力は使えばだんだん弱まるのですが、私たちは普段、この力があることをほとんど気にかけないので、ムダなことにどんどん浪費してしまうのです。

たとえば私たちがこの力を無駄にしてしまうのが、会社に行くための通勤時間です。ラッシュアワーの通勤電車は決して快適とは言えず、その不快感に耐えるのに、意志力は消費されてしまいます。

会社に着いたころには、力はもう半分程度しか残っておらず、それでもなんとか仕事をこなした正午には、ほとんどゼロになります。何もする気がしない午後は、こうしてやってくるわけです。

意志力という観点からも、早い時間に仕事をこなすことは大切

著者のバウマイスターは、「意志力を節約せよ」と説きます。具体的には「ムダになりそうな行動をさけ、仕事をしない時間帯は積極的に休憩せよ」と指南しています。

また、バウマイスターは「なるべく早い時間帯に仕事をこなしてしまおう」という、ある意味では当然のことを述べていますが、これも、前段に説明したような根拠があっての提案です。時間を過ごすうちに、意志力をどこでどう使ってしまうか、分かったものではないからです。

人は、観光客がつい不要不急の物にお金を使ってしまうように、意志力を簡単に浪費してしまうわけです。お昼ごろにはこの力はほとんど枯渇し、残業をしている時間帯には、いったい何のために残業するのか分からないくらい、意思の力は弱まってしまいます。

意志力の節約を考えつつ、使うための「スイッチ」も意識する

本書が指摘している内容は非常に重要です。意志力といえど、使えば消耗するのであり、消耗を避けるような気配りをしないと、今のような時代にはとても1日もたないということです。その上で私は、このお話には1つ足りない観点があると考えています。

それは、「意志力を使うためのスイッチは何か」という観点です。節約は大切ですが、節約と同じくらい大事なのは「どんなきっかけがあれば、意志力を効果的に使えるか」ということです。

意志力を節約さえしていれば、黙っていても意欲が起き、常にやる気を持って仕事ができるでしょうか? どうもそうは思えません。「意志力」という名前は、自動的には発揮されないからこそついているのではないでしょうか。

シングルタスクに徹することが、意志力の有効活用につながる

そこで私は、前回の記事でもお伝えしましたが「シングルタスクに徹する」ことの重要性を強調したいわけです。マルチタスクは「注意の残留」を発生させ、意思力の浪費へとつながります。私は、これをやると決めた仕事を集中して実行する、シングルタスクに取り組むという意識を持つことが、意志力を有効に使うスイッチになると考えています。

自分の気が進まない仕事を複数並行してこなすといった「回避行動」は意志力の節約にもならないし、仕事の生産性も上がりません。意志力というパラメーターを意識して、「自分が今やる仕事」を絞り、1つ1つ確実にこなしていきましょう。

執筆者紹介

佐々木正悟(ささき・しょうご) 心理学ジャーナリスト。「ハック」ブームの仕掛け人の一人。1973年北海道生まれ。「効率化」と「心理学」を掛け合わせた「ライフハック心理学」を探求。執筆や講演を行う。著書に、ベストセラーとなったハックシリーズ『スピードハックス』『チームハックス』(日本実業出版社)のほか『先送りせずにすぐやる人に変わる方法』(中経出版)『一瞬で「やる気」がでる脳のつくり方』(ソーテック)などがある。ブログ:佐々木正悟のメンタルハック

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