残業ゼロを目指して
なぜ人の意思はあてにならない? 「意志力の科学」を仕事に応用する
2017.11.09
残業ゼロを実現するためのビジネスハック術を紹介する、ベストセラー作家・佐々木正悟氏の連載企画。今回は、『WILLPOWER 意志力の科学』というビジネス書の内容を参考に、「意志力」を意識した仕事術をご紹介します。
「人の意志はあてにならない」という前提
以前の記事で登場した、『スタンフォードの自分を変える教室』の中で注目作として紹介されていた著作に、『WILLPOWER 意志力の科学』があります。本書は心理学者であるロイ・バウマイスターの著書で、一時大きな話題になったのですが、最近はある程度「常識化」してしまったのか、取りざたされることは少なくなっています。
ご多分に漏れずというか、この本でも「意志の力はあてにならない」という認識がまず前提にあります。意志力をタイトルに掲げながら「意志の力は絶対だ」といったタイプの本がめったにないというのは、面白い現象だと思います。
意志力とは、本書によれば、「誘惑や、困難に負けず、自分をコントロールし続ける力」を指します。その上で同書はとことん「なぜ意志の力はあてにならないか?」といった点を科学的に追求しています。「あてにならないから仕組み化しよう」といったタイプの、ライフハック系とはまた違ったアプロ―チです。
意志力は、筋力と似たような性質を持っている
結論から述べると、なぜ意志力があてにならないかといえば、それは、見えない筋力のようなものだからです。この力は使えばだんだん弱まるのですが、私たちは普段、この力があることをほとんど気にかけないので、ムダなことにどんどん浪費してしまうのです。
たとえば私たちがこの力を無駄にしてしまうのが、会社に行くための通勤時間です。ラッシュアワーの通勤電車は決して快適とは言えず、その不快感に耐えるのに、意志力は消費されてしまいます。
会社に着いたころには、力はもう半分程度しか残っておらず、それでもなんとか仕事をこなした正午には、ほとんどゼロになります。何もする気がしない午後は、こうしてやってくるわけです。
意志力という観点からも、早い時間に仕事をこなすことは大切
著者のバウマイスターは、「意志力を節約せよ」と説きます。具体的には「ムダになりそうな行動をさけ、仕事をしない時間帯は積極的に休憩せよ」と指南しています。
また、バウマイスターは「なるべく早い時間帯に仕事をこなしてしまおう」という、ある意味では当然のことを述べていますが、これも、前段に説明したような根拠があっての提案です。時間を過ごすうちに、意志力をどこでどう使ってしまうか、分かったものではないからです。
人は、観光客がつい不要不急の物にお金を使ってしまうように、意志力を簡単に浪費してしまうわけです。お昼ごろにはこの力はほとんど枯渇し、残業をしている時間帯には、いったい何のために残業するのか分からないくらい、意思の力は弱まってしまいます。
意志力の節約を考えつつ、使うための「スイッチ」も意識する
本書が指摘している内容は非常に重要です。意志力といえど、使えば消耗するのであり、消耗を避けるような気配りをしないと、今のような時代にはとても1日もたないということです。その上で私は、このお話には1つ足りない観点があると考えています。
それは、「意志力を使うためのスイッチは何か」という観点です。節約は大切ですが、節約と同じくらい大事なのは「どんなきっかけがあれば、意志力を効果的に使えるか」ということです。
意志力を節約さえしていれば、黙っていても意欲が起き、常にやる気を持って仕事ができるでしょうか? どうもそうは思えません。「意志力」という名前は、自動的には発揮されないからこそついているのではないでしょうか。
シングルタスクに徹することが、意志力の有効活用につながる
そこで私は、前回の記事でもお伝えしましたが「シングルタスクに徹する」ことの重要性を強調したいわけです。マルチタスクは「注意の残留」を発生させ、意思力の浪費へとつながります。私は、これをやると決めた仕事を集中して実行する、シングルタスクに取り組むという意識を持つことが、意志力を有効に使うスイッチになると考えています。
自分の気が進まない仕事を複数並行してこなすといった「回避行動」は意志力の節約にもならないし、仕事の生産性も上がりません。意志力というパラメーターを意識して、「自分が今やる仕事」を絞り、1つ1つ確実にこなしていきましょう。
執筆者紹介
佐々木正悟(ささき・しょうご) 心理学ジャーナリスト。「ハック」ブームの仕掛け人の一人。1973年北海道生まれ。「効率化」と「心理学」を掛け合わせた「ライフハック心理学」を探求。執筆や講演を行う。著書に、ベストセラーとなったハックシリーズ『スピードハックス』『チームハックス』(日本実業出版社)のほか『先送りせずにすぐやる人に変わる方法』(中経出版)『一瞬で「やる気」がでる脳のつくり方』(ソーテック)などがある。ブログ:佐々木正悟のメンタルハック
@人事では『人事がラクに成果を出せるお役立ち資料』を揃えています。
@人事では、会員限定のお役立ち資料を無料で公開しています。
特に人事の皆さんに好評な人気資料は下記の通りです。
下記のボタンをクリックすると、人事がラクに成果を出すための資料が無料で手に入ります。
今、人事の皆さんに
支持されているお役立ち資料
@人事は、「業務を改善・効率化する法人向けサービス紹介」を通じて日本の人事を応援しています。採用、勤怠管理、研修、社員教育、法務、経理、物品経理 etc…
人事のお仕事で何かお困りごとがあれば、ぜひ私達に応援させてください。
「何か業務改善サービスを導入したいけど、今どんなサービスがあるのだろう?」
「自分たちに一番合っているサービスを探したいけど、どうしたらいいんだろう?」
そんな方は、下記のボタンを
クリックしてみてください。
サービスの利用は無料です。
関連記事
-
特集
シリーズ・人づくり革命
働き方はどう変わる? リンダ・グラットン著「ワーク・シフト」書評
「そろそろ我々の働き方は大きな転換点を迎えそうだ」日本で働いているすべての人にとって、これは共通の認識になりつつあるのではないでしょうか。日本政府が「働き方改革」や「人づくり革命」...
2017.09.29
-
コラム
残業ゼロを目指して
「いちばん大変そうな仕事」から手をつける
残業ゼロを実現するためのビジネスハック術を紹介する、ベストセラー作家・佐々木正悟さんの連載企画。今回は、これまでに執筆した本の中で、もっとも反響の大きかったテーマを扱います。目次 ...
2017.09.28
-
国内・海外ヘッドライン
厚生労働省プレスリリース
厚労省「柔軟な働き方に関する検討会」を設置 テレワーク・副業等の環境整備が目的
厚生労働省は、有識者からなる「柔軟な働き方に関する検討会」を設置し、2017年10月3日に第1回検討会を開催することを発表した。厚労省は、同検討会の目的を「働き方改革を進める上で、...
2017.09.26
-
コラムニュース・トレンド
企業とシニア求職者のミスマッチをひもとく 第3回
シニア人材の活躍事例――これまでの人生経験を生かす
シニア層の活躍: 未経験業界への挑戦第1回は、シニア層の就業実態および意識をシニア個人と企業双方の視点からお伝えし、第2回では、積み重ねたキャリアで得たスキルや専門性を生かして生き...
2023.08.25
-
コラムニュース・トレンド
企業とシニア求職者のミスマッチをひもとく 第2回
シニア人材の活躍事例――これまでのキャリア・専門性を生かす
シニア人材の採用と活躍:スキルと経験を生かす方法第1回では、リクルートの調査研究機関『ジョブズリサーチセンター』が実施した「シニア層の就業実態・意識調査(個人編・企業編)」をもとに...
2023.08.18
-
コラムニュース・トレンド
「人的資本経営」の実践のポイント 第4回
人的資本経営の実践に向けて――マネジャーのリスキリング
人的資本経営の実践の要となるミドルマネジャーの「リスキリング」に注目本連載では、人的資本経営の実践のポイントとして、「人的資本の情報開示」「人事部の役割変化」「ミドルマネジメントの...
2023.08.10
あわせて読みたい
あわせて読みたい
人気の記事
国内・海外ヘッドライン
THE SELECTION
-
PRTHE SELECTION企画
「置き型健康社食」がもたらす可能性とは
健康経営、採用強化、コミュニケーション活性化にも。 手軽に導入できる「食」の福利厚生
-
PRTHE SELECTION企画
街なかの証明写真機「Ki-Re-i(キレイ)」で、もっと社員の顔写真管理をラクに
社員証の写真、「最適化」できていますか? チーム力を強化する顔写真データ活用法とは
-
THE SELECTION特集
【特集】ChatGPT等の生成AIが一般化する社会で必須の人材戦略・人的資本経営の方法論
-
THE SELECTION企画
レポートまとめ
@人事主催セミナー「人事の学び舎」 人事・総務担当者が“今求める”ノウハウやナレッジを提供
-
THE SELECTION特集
特集「人手不足業界の逆襲」~外食産業編~
「見える化」と「属人化」の組み合わせが鍵。 丸亀製麺が外食業界を変える日
-
THE SELECTION特集
人事のキーパーソン2人が@人事読者の「組織改革」の疑問に答えます(第2弾)
数値化できない部署を無理に人事評価する方が問題。曽和利光×北野唯我対談
-
THE SELECTION会員限定特集
働きやすい職場づくり~サイバーエージェント編
「妊活支援」や 「働くママ・パパ支援」を、 一部の社員のものにしないためには?