残業ゼロを目指して
脳はマルチタスクができない? 仕事術「ポモドーロ・テクニック」とは
2017.11.02

残業ゼロを実現するためのビジネスハック術を紹介する、ベストセラー作家・佐々木正悟氏の連載企画。今回は心理学的なアプローチから、仕事のパフォーマンスを向上させる方法をご紹介します。
注意の残留を引き起こしてしまう、「ながら仕事」に要注意
心理学では「注意の残留」と呼ばれる現象があります。これは1つの作業から、別の作業へと「スイッチ」しても、意識の一部は元の作業のことを「モニタリング」しているという考え方です。
ごく簡単に言えば、プロ野球中継をラジオで聞きながらものを書いていたとします。「打った!」というアナウンサーの声で意識が野球のほうにスイッチされると、また仕事に戻ったとしても、しばらくはラジオの方に注意が残留するのです。
ですので、心理学的には、音楽を聴きながら、ラジオを聴きながらといった「ながら仕事」は「注意の残留」を引き起こしやすく、集中力は散漫になるということが言えます。
しかし、人によっては「ラジオでも聞いているから、気分よく仕事ができる」という方もいますし、シーンとした部屋ではまったく落ち着かない、という方もいます。以前の記事「『観客』が仕事のパフォーマンスを変える」でご紹介しましたが、単純作業の場合は、むしろ他人と話しながらの方が仕事が捗るということもあります。
ただし、集中して一気に仕事を片付けたい場合には、話は別です。こうした際には「注意の残留」を引き起こさないよう「ながら仕事」をいったんやめ、目の前の1つのことに意識を絞ることで、仕事に集中することができます。
マルチタスクを「している気」になっているだけのことが多い
心理学の研究者からは「そもそも私たちの脳はマルチタスクという行為ができない」ということが指摘されています。たとえば「音楽を聴きながら本を読んでいる」という人の場合でも、実は「音楽を聴く」という行為と「本を読む」という行為をただ「スイッチ」しているだけだというのです。
心理学者のガイ・ウィンチ氏は、研究によって「人間の脳には1つの作業をしているときに、ガムをかむなどの反射的な作業を除いて、もう1つ別の作業をするためのスペースがほとんど残されていない」ことを明らかにしています。つまり、マルチタスクをしているつもりでも、本当にそうしているわけではなく、ただ、タスクA→タスクB→A→B…とこなしているだけに過ぎないのです。
そういった意味でも、集中して仕事をする際は、同時にいくつもの仕事を進めるより、一度にひとつずつ片付けていくということが、はるかに効率的であるということです。
集中して仕事を片付けたい時に有効「ポモドーロ・テクニック」
集中して1つの仕事を片付ける方法としては、「ポモドーロ・テクニック」と呼ばれるものが有名です。
これは25分集中して、5分休憩を取り、また25分集中するというリズムを作りだし、仕事を次々に片付けていくやり方です。「25分集中+5分休憩」という30分の区切りを「1ポモドーロ」とし、4ポモドーロ(2時間)ごとに30分間の休憩を取りながら、これを繰り返します。
この「ポモドーロ」という言葉はイタリア語で「トマト」のことです。「なぜタスク管理の単位がトマトなの?」と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、これは「ポモドーロ・テクニック」の産みの親であるイタリアの起業家、フランチェスコ・シリロが愛用していたキッチンタイマーがトマト型だったことから来ているそうです。
仕事を進めるやり方は人それぞれですが、この「ポモドーロ・テクニック」は、試してみる価値があることをお伝えします。ただ同時に、この方法はなかなか疲れるやり方でもあります。1つのことに時間を切って集中する、それも何度も繰り返すというわけですから、楽な方法ではないのです。
自分が抱えている仕事が「集中して終わらせなくてはいけない仕事」か「集中しなくても片付けられる単純作業」かを分別し、集中が必要な仕事については、こうしたテクニックを活用してみると良いでしょう。
執筆者紹介

佐々木正悟(ささき・しょうご) 心理学ジャーナリスト。「ハック」ブームの仕掛け人の一人。1973年北海道生まれ。「効率化」と「心理学」を掛け合わせた「ライフハック心理学」を探求。執筆や講演を行う。著書に、ベストセラーとなったハックシリーズ『スピードハックス』『チームハックス』(日本実業出版社)のほか『先送りせずにすぐやる人に変わる方法』(中経出版)『一瞬で「やる気」がでる脳のつくり方』(ソーテック)などがある。ブログ:佐々木正悟のメンタルハック
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