人事担当者が知っておくべきマイナンバー制度
【第5回】マイナンバー制度の専門家に聞く、人事労務の今後
2015.10.07
人事総務担当者にとって、対応まったなしの「マイナンバー制」。あなたの会社では、対応の準備は万全でしょうか? 少しでも疑問がある方はぜひこの連載で「押さえておくべきポイント」を総整理しておきましょう。
第5回は前回に引き続き、社会保険労務士法人 名南経営の服部氏に、マイナンバー制導入による人事労務の効率化と、アウトソーシングサービスの活用について、お話を伺います。
人事労務の業務は確実に簡素化される!
マイナンバー制導入にあたっては、税金を正しく公平に徴収し、社会保険料の未納をなくすことが一つのゴールとして考えられています。では、それと同時並行して、どのような状況が予想されるのでしょうか。
「市政が一つの番号を軸にしてワンストップで行われるようになると、企業にとっても入退社の手続きや税金関係の手続きが便利になると思われます。これは、もはや時間の問題でしょう。先進諸国では、ID番号を用いた電子政府の利活用は当たり前の光景となっており、韓国では、世界でも最高水準の電子政府の仕組みで運用されています」
「ほぼすべての取引に取引番号が付与されていますので、例えばコンビニで何かを購入しても経費扱いができるように、多くの国民は支払いの際に番号提示を行います。その結果、確定申告の時期になると、個人のマイポータルとなるWEBページに確定申告書が添付され、個人が承認ボタンを押すだけといった運用になっているようです。日本もこうした運用になる可能性が十分に考えられます」(服部氏)
こうした仕組みは、税務関連以外でも拡大して適用されていくものと考えられ、企業における人事労務業務も然りです。服部氏によると、今回のマイナンバー制度の導入によって、企業の人事労務担当者の業務は一時的に増えるものの、将来的には確実に簡素化するそうです。
アウトソーシングサービスの変革期到来か?
情報管理などにおいて、アウトソーシングサービスを活用する動きは今後増えるのでしょうか。アウトソーシングサービスを活用するメリットについて、服部氏は次のように話します。
「アウトソーシング利用の最大のメリットは、本業に専念できるという点です。ただ、韓国では確定申告の電子化等によって、企業の年末調整という業務自体がなくなったといわれています。将来的に、個人がオンラインで様々な手続きをできるような環境が整っていくことを考えると、アウトソーシングを手掛けるアウトソーサーの役割も変わっていくのではないかと推測しています」
とはいえ、そうした簡潔な仕組みが到来するのは少し先のこと。企業には安全管理義務と委託先の監督義務が生じますが、安心して任せられるアウトソーシングサービス会社を見極めるポイントは、どこにあるのでしょうか。
「情報の管理システムや運用方法等を積極的かつ具体的に、顧客先やサイト上などで公開している会社には、比較的安心して任せられます。一方、そこをうやむやにしている企業の場合は、十分な安全管理体制等が構築されていない可能性も考えられますので要注意。つまり、安全管理に関する情報発信の内容とレベルが見極めのポイントではないかと思います」(服部氏)
マイナンバー制度の導入への対応においては、単に大変になるという短期的な視点を持つのみならず、中長期的な人事労務業務の効率化、簡素化という未来も見据えておく必要があるといえます。【特集・終わり】
- 【第1回】マイナンバー制度とは? 企業のメリットと義務
- 【第2回】担当者が早期に対応すべき理由と、情報漏えい対策
- 【第3回】人事総務担当者が踏むべきステップ、雇用関係の手続き
- 【第4回】マイナンバー制度の専門家に聞く、導入後の課題と対応策
- 【第5回】マイナンバー制度の専門家に聞く、人事労務の今後
執筆者紹介
松尾美里(まつお・みさと) 日本インタビュアー協会認定インタビュアー/ライター。教育出版社を経て、2015年より本の要約サイトを運営する株式会社フライヤー(https://www.flierinc.com/)に参画。ライフワークとして、面白い生き方の実践者にインタビューを行い、「人や団体の可能性やビジョンを引き出すプロジェクト」を進行中。ブログは教育×キャリアインタビュー(http://edu-serendipity.seesaa.net/)。
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