コラム

@人事 ドイツ支部通信


夏休みは1カ月? ドイツ人がきちんと休むために行っている3つの工夫

2017.11.10

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働き方改革が進められる日本。それでもいまだに残業が多く、有給取得率も低い。一方で、多くの諸外国では「休む」権利を重視している。

「みんな定時で帰り、1ヵ月のバカンスを取る」と言われている、わたしが住んでいるドイツを参考に、「休める日本」にしていく方法を考えよう。

雨宮紫苑雨宮 紫苑(あめみや・しおん)

ドイツ在住、1991年生まれのフリーライター。大学在学中にドイツ留学を経験し、大学卒業後、再びドイツに渡る。ブログ『雨宮の迷走ニュース』を運営しながら、東洋経済オンラインやハフィントンポストなどに寄稿。

休めないのではなく休まない? 遠慮する日本人

電通過労死問題が取り沙汰されたとき、多くの人が「やはりこのままじゃダメだ」と思ったことだろう。だが残念なことにその後も過労死は起こっており、先日はNHKの記者が過労死したことが報じられた。

日本人が総じて働きすぎの傾向にあるのは明白で、厚生労働省の発表によれば、2015年の1年間に企業が付与した有給化日数は平均18.1日。そのうち労働者が取得した平均日数は8.8日で、有給休暇取得率はいまだに5割を切っている。

なぜ日本人は、有給休暇をとらないのだろうか。

理由としては、約3分の2の労働者が「ためらいを感じる」ことを挙げている。ためらいを感じる理由は、「みんなに迷惑がかかる」が72.3%で、「後で多忙になる」(46.8%)、「職場の雰囲気で取得しづらい」(31.6%)が続く。(参考:厚生労働省『仕事休もっ化計画』)

エクスペディア・ジャパンの調べでは、「有給取得に罪悪感を感じている」人の割合が韓国に次いで多い(59%)ことや、「自分の有給支給日数を知らない人の割合」が47%でダントツである(2位の韓国は21%)ことも報じている。

こういった状況を踏まえ、厚生労働省は10月を「年次有給休暇取得促進期間」とし、有給休暇取得を促した。多くの企業も、従業員が休めるように改革を進めていることだろう。

だが「企業」という共同体のなかで培われた価値観は、なかなか変わらない。労働者自身が休むことに罪悪感を感じているのだから、変えるのもむずかしいだろう。

ではどうやったら、「休みやすい環境」を作れるのか。本稿ではその一例として、わたしが住むドイツの取り組みを3つ紹介したい。

休暇予定表を組んで制度的に長期休暇を取得

ドイツは「1ヵ月の有給休暇が取れる」と言われているが、それはおおむね事実である。だが「来週から1ヵ月休みます」というのは、さすがのドイツでも無理だ。そのためドイツでは、1月や10月などに、従業員の年間休暇予定を組むことが多い。

夏は特に希望者が殺到するので、「2週間ならいいけど、2週間は別のところで取ってくれ」とか、「もう3日早く取ってくれないか」というふうに、上司や人事担当者が従業員と相談して、できるだけ仕事に支障がでないように休暇予定を組む。

わたしが働いていたところでは、11月に翌年の休暇希望表を提出する仕組みだった。年内に休暇日が決まったため、3月に予定していた一時帰国の航空券は安く買えたし、両親や友人と予定を合わせて旅行することもできた。

日本で長期休暇を取りづらいのは、そういった仕組みがなく、突発的な休暇になりやすいからではないだろうか。突然「来月1週間休みます」と言うのは、まわりへの迷惑を考えたらたしかにむずかしい。

それならば、休む日を最初から決めてしまえばいい。

企業としても有給消化率が高いことはイメージアップになるし、休暇予定を把握していれば仕事の計画も立てやすい。従業員は「確実に休める」という安心感があるし、長期休暇が取りやすくなり、事前に予定も立てられる。

ドイツ

仕事の連絡対応を拒否する「つながらない権利」

だがいざ休暇が取れたとしても、仕事の連絡がいつくるかわからないような状況では、リフレッシュはできない。現代ではスマホで常にメールチェックができるし、会社用の携帯を持っている人も少なくないため、休んでいても仕事と繋がっている人は多いだろう。

だがそれでは、休んだことにはならない。ただのリモートワークである。

そんななか、ドイツでは最近、「つながらない権利」が注目されている。勤務時間外や休日に、仕事の連絡対応を拒否できる権利だ。

わたしが保険会社の担当者にメールしたとき、「3週間の休暇中なので受信したメールは勝手に消えます。急用なら総合窓口へ」という自動返信が返ってきたことがある。かかりつけ医にメールしたときも、「休暇中なのでメールは自動的に消えます」という自動返信だった。

「休暇中なので返事が遅れます」ならわかるのだが、「受信メールが消える」ようにするとは……と驚いたものだ。だがそうまでしなければ、現代では完全に仕事から離れることはむずかしいのだろう。

仕事にマジメな人ほど、労働時間外でも仕事と関わろうとしてしまう。そんな人にちゃんと休んでもらうためにも、こうした強硬手段を取り入れるのもひとつの方法だ。

自動返信に、「我が社は従業員の休みを保障している」「迷惑をかけるがご理解いただきたい」と付け加えておけば、企業としてもイメージアップになるかもしれない。

わたしだったら、問い合わせた先の会社からこんな自動返信がきたら、「従業員を大切にしているんだな」と好感度が上がる。就活中だったら特に、「働きたい」と思うだろう。

残業時間を貯めて休日にする「労働時間貯蓄口座」

ほかにもドイツでは、「労働時間貯蓄口座」(Arbeitszeitkonto)という制度がある。かんたんにいえば、残業や休日出勤の時間を貯めて、休暇などに振り返る仕組みだ。

2013年のstatistaの統計では、アンケート回答者の67.7%が「働いている会社にこの制度がある」と答えていて、ドイツではすでに一般的になりつつある。

だがこれは、労働時間が明記された労働契約書をキッチリ結んでいることが前提にある。ドイツでは労働時間の上限が厳しく制限・明記されているので、月間の労働時間が規定どおりに収まるように調整しなくてはならない。

また、ドイツでは時間外手当の法的規定はない。とはいえ多くの企業では、残業や休日出勤時には割増の手当てを支払うことになっている。そのため、企業としても「割増料金を払うよりは休んでくれたほうがいい」という考えになる。

一方日本では時間外労働には割増賃金を支払うことになっているので、この制度を取り入れたら、「割増分の給料はどこへ?」という話になってしまう。

だがたとえば、1日単位ではなく「労働時間は月間○時間」もしくは「週間○時間」と決めて、残業したぶん休めるようにするのはどうだろう。

法定労働時間を遵守しつつ、柔軟なフレックスタイムといったかたちでなら、ドイツの「労働時間貯金講座」システムは参考になるはずだ。

ドイツをモデルケースのひとつとして労働環境の改善を

ドイツと日本では労働環境の根底がちがうので、ドイツの制度をそのまま取り入れることはむずかしいし、ドイツのやり方が完璧なわけでもない。だがモデルケースのひとつとして、知っておいて損はない。

そのなかで実現できそうな仕組みがあれば、積極的に試してみるといいだろう。

「日本の労働環境を変えたい」と思う人が増えていけば、少しずつでも確実に、良い方向へ向かっていくはずだ。

【参考】
厚生労働省「平成28年就労条件総合調査の概況
厚生労働省「仕事休もっ化計画」Webサイト
エクスペディア・ジャパン「有給休暇国際比較調査2016
statista「Können die von Ihnen geleisteten Überstunden in ein Arbeitszeitkonto fließen?

執筆者紹介

雨宮紫苑(フリーライター) ドイツ在住、1991年生まれのフリーライター。大学在学中にドイツ留学を経験し、大学卒業後、再びドイツに渡る。ブログ『雨宮の迷走ニュース』を運営しながら、東洋経済オンラインやハフィントンポストなどに寄稿。

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