コラム

データが会社を強くする! 北野唯我のロジカル採用理論


採用ブランドを高めたいなら、「コンテンツ」は二段用意せよ

2017.10.25

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就職人気ランキングで上位に入るような企業は、他社と何が違うのか?

大きな反響を呼んでいるコラム「北野唯我のロジカル採用理論」。ボストン・コンサルティング・グループで事業戦略立案業務の経験を持ち、株式会社ワンキャリアでチーフアナリストを務める北野唯我氏が、データを交えて人材業界をロジカルに紐解きます。第二回は、企業の「採用費」についてご紹介しました。

連載三回目のテーマは「採用ブランド」。自社のブランディングを高めるために必要な要素を解説します。

「採用ブランドが強くあり続ける企業」が持つ特徴

「採用ブランドを強化したいんですが、来てもらえますか? 北野さん」

先日、とある人事責任者に呼び出されました。その企業は、「就職人気企業ランキング」で常に上位に入る超有名企業でした。私は1時間ほどお話した末に、「すごい会社だなぁ……」と素直に感じました。

なぜなら、このレベルの企業であれば何もしなくても優秀な候補者が集まるにもかかわらず、今の立場に胡座をかかずに「もっと上を目指す」という意気込みを持っていたからです。長期にわたって「採用ブランドが強くあり続ける企業」には、こういう人事が大体、存在します。

さて、「採用ブランドはどうやって構築すべきか?」という経営陣からの質問に、あなたならなんと答えるでしょうか。

結論から言うと、採用ブランドを強化するために必要なことは「コンテンツを二段、用意すること」だと私は考えます。どういうことか? 詳しく見ていきましょう。

人気ランキングは「認知率」と「支持率」の組み合わせで決まる

採用ブランドを定量的に測る指標の1つとして、まず思い浮かぶのは「就職ランキング」です。現在、別記事で紹介したように、高学歴の学生には「コンサルティングファーム」や「総合商社」が根強い人気です。この就職ランキングは、2つの要素によって決められています。

 1、認知率……その企業を知っている人の割合
 2、支持率……好感を持っている人の割合

そして両者は似て非なるものです。広告モデルと同様に「企業の名前を知っていること」と「その企業へのブランドイメージがあること」は違います。ブラック企業として名高い企業は「認知率」は高いものの、「支持率」は低いことからも分かります。そしてこのことは、人事に1つの落とし穴を作ります。それは、面接活動や広告だけでは「支持率」は上がらない、ということです。

合同説明会では「認知」は獲得できても「支持」は得られない

多くの企業が行う合同説明会や面接は、事業理解という点で「認知率」は獲得できても「支持率」にはほとんど影響を与えません。すなわち「企業のことは知れたけど、特段に良い印象はない」ということです。

というのも、説明会や面接は全て、企業からみると「採用活動」ですが、候補者からすると一種の「コンテンツ」です。そして生活者は「自分が投下した時間や労力に見合うぐらい、面白いものであったか?」によってコンテンツを評価します。これは映画を例にすると、「1800円と2時間に見合うだけ、面白いものであったか」によって評価を行うということです。

この時に大事なのは、比較される「コンテンツ」は、他の企業の説明会ではないということです。映画や読書など、「他のコンテンツ」を軸に評価されることになります。

例えば、大学の1つの授業が、他に比べて「マシ」であったとしても、それ自体で「授業を支持する」までにはつながらないという例が分かりやすいかと思います。つまり、人は常にコンテンツを「時間と金に見合うものであったか」によって絶対評価しているということです。

ブランドの形成は「没入感と、消費時間」によって行われる

では、どうやって「支持率」、すなわち、ブランドを高めるべきか? 結論から言えば、ブランドを作るには「消費時間を最大化させること」が重要です。


▼ブランド形成の3STEP▼
良いコンテンツを提供する→消費時間が最大化される→CASHと評判が生まれる→(繰り返す)

人が特定のブランドを好きになるのは「圧倒的にいい経験」を得たときです。いい経験とはすなわち「いい時間を過ごした」ということ。もちろん「単に長時間拘束された」だけでは意味がないですから、より正確にいうと、ブランドをあげたい場合「没入感と、消費時間」の組み合わせを最大化させる必要があるわけです。つまり、ブランドを形成するためには「気づけば5時間経っていた」という体験を作り出すことが重要なのです。

ブランドの形成力= 消費時間 × 没入感(面積)

「軽くてシェアしやすいコンテンツ」「重くて深いコンテンツ」

冒頭の質問に戻りましょう。

企業の採用ブランドを高めるために必要なのは、コンテンツを二段用意すること。これはつまり「認知を稼ぐためのイベント」と「ブランドを高めるためのイベント」を用意する、ということです。

そして大事なのは、ブランドを高めるためのイベントでは一切、「認知を取りにいこうとしないこと」です。目的は「消費時間の最大化」。そのための、いいコンテンツを提供することなのです。認知を上げるなら「軽くてシェアしやすいコンテンツ」、支持プールを増やすなら「重くて深いコンテンツ」を用意しましょう。

前者のNRIは就職人気ランキングで三菱商事を抜いて日系1位になるなど、上位校の学生から人気の企業です。彼らは毎年、夏頃に5日間の濃密なインターンを行っています。また「ケース面接を動画で生放送する」など、労力をかけた施策にも挑戦しています。

別記事で論じたように、新卒マーケットには「なぜこの企業がこんなに人気なのか?」とよそからでは分からない企業があります。あるいは数年でブランドをあげた企業があります。彼らの特徴は「重くて深いコンテンツ」と「軽くてシェアしやすいコンテンツ」の両方を持っていることです。

「ブランド」は、強いコンパスになりえます。ブランドマネージャーが考えるべき論点は「消費時間を最大化させられる、いいコンテンツはなにか?」です。「気づけば、5時間が経っていた」。そういうコンテンツこそが、ブランドを作り上げるのです。

執筆者紹介

北野唯我(株式会社ワンキャリア執行役員兼チーフアナリスト) 新卒で株式会社博報堂に入社。中期経営計画の立案・M&A・組織改編業務を経験し、米国・台湾留学。帰国後、ボストン・コンサルティング・グループでの事業戦略立案業務などを経て、ワンキャリアに参画。現在、メディア事業の統括責任者。一方で23歳の頃から、日本シナリオ作家協会で「ストロベリーナイト」「恋空」などを執筆したプロの脚本家に従事。主な記事に『ゴールドマンサックスを選ぶ理由が僕には見当たらなかった』『田原総一朗vs編集長KEN:「大企業は面白い仕事ができない」はウソか、真実か』など。

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