国内人事コラム
けものフレンズ監督降板騒動に学ぶ、組織に必要なSNSリスクマネジメント
2017.09.29
(出典:けものフレンズプロジェクト公式Webサイト)
人気テレビアニメ「けものフレンズ」で監督・シリーズ構成などを務めた「たつき監督」が、自身のTwitterで同アニメの制作から「外れる」と報告したことが、波紋を広げている。
コンテンツ産業が普及した現在、企業がタレントやクリエイターと共同で事業を行うことは珍しくない。また、一般に認知されていなくても、特定の個人が、サービスの開発・展開に大きく関与していることは少なくないだろう。
一方、近年はSNSの普及にも目覚ましいものがある。コンテンツ産業においては、関係者が個人のアカウントでサービスを宣伝するなど、ファンとの関係構築を行うことが浸透している。アニメ「けものフレンズ」のたつき監督も、自身のアカウントで積極的に情報を発信していた。
このように、関係者が個人として行うSNSの情報発信に、企業はどのように対応すればよいのだろうか。今回のケースを参考に、リスクを管理するための注意点を考えてみよう。
けものフレンズ「たつき監督解任騒動」の概要
テレビアニメ「けものフレンズ」は、吉崎観音氏がキャラクター及び世界観のコンセプトデザインを手がけた「けものフレンズプロジェクト」の一部だ。
「けものフレンズプロジェクト」は、「アニマルガール」と呼ばれる擬人化された動物たちが集まる架空の動物園「ジャパリパーク」を舞台にしたメディアミックスプロジェクト。現在までにスマホゲーム、コミック、テレビアニメ、グッズなど、さまざまな媒体で展開を行っている。
2015年3月にネクソンからスマートフォン用ゲームアプリがリリースされたのを皮切りに、2015年7月から「月刊少年エース」で漫画版が連載を開始、2017年1月にはアニメ「けものフレンズ」の放映が始まった。ただしスマートフォンアプリが2016年12月に、漫画版の連載が2017年3月に終了している。
こうした経緯から、アニメの放映が開始されるまで、「けものフレンズプロジェクト」の知名度は現在ほど高くなかったことが分かる。アニメ「けものフレンズ」がSNSを中心に話題となり、ヒット作品となったことで、プロジェクト自体の認知度も向上した。
このアニメ「けものフレンズ」の監督・脚本・シリーズ構成・演出を担当したのが「たつき監督」だった。
プロジェクトの知名度を高めた「功労者」を解任
今回の騒動は、たつき監督が9月25日に自身のTwitterアカウントで、制作が予定されていた「けものフレンズ(2期)」のスタッフから降板する旨を書き込んだことで始まった。
https://twitter.com/irodori7/status/912270635610472448
9月29日現在、当該ツイートは31万リツイートを超えており、ファンからはたつき監督を心配する声や、ツイートに名前の挙がったカドカワ株式会社を批判する声が上がっている。
9月27日、「けものフレンズプロジェクト」は公式サイトに経緯を説明する文書を公開。たつき監督の降板について、「アニメーション制作会社であるヤオヨロズ株式会社※より8月に入った段階で辞退したい旨の話を受け、制作体制を一から模索することになっている」と説明した。
※ヤオヨロズ株式会社:たつき監督の所属するアニメーション制作会社。
この対応に、ファンの一部からは「たつき監督と言っていることが違う」「8月に辞退を申し入れたのなら、なぜ9月末にどん兵衛とのコラボ企画を実施できたのか」など、疑問の声が上がった。
https://twitter.com/kemo_anime/status/910067145580486658
またファンの間では、カドカワ株式会社の子会社である株式会社ドワンゴが運営する、「ニコニコ動画」のプレミアム会員を解約する動きも広まった。
参考:『けものフレンズ』騒動でニコニコ動画プレミアム会員退会者続出(ニコニコニュース)
SNSの炎上で、重要なのは「感情への配慮」
企業と深く関わりのあるタレントやクリエイターが、SNSで騒動を引き起こしてしまった場合、企業はどう対応すべきなのか。ネット社会を含めたリスクマネジメントに詳しい、危機管理・広報コンサルタントの平能哲也氏は、「感情への配慮が重要」と指摘する。
「SNSを発端とした炎上危機対応でまず考えるべきは、『怒りを鎮める』ということです。今回のケースで言えば、何よりもファンの方たちの視点や感情に配慮した対応が必要です。企業の対応の失敗例としてありがちなのは、『自社の法的手続きなどの正当性のみのアピールによって、説明責任を果たしたと考えること』。一方的に企業側の主張を述べても、受け入れられる可能性は低いですし、逆にネガティブな感情を悪化させてしまう要因となります」(平能氏)
憶測を広げないよう、公式なステートメントを早めに出す
SNSの中でも、Twitterは投稿できる文量が短く、1つの投稿からさまざまな憶測が広がりやすい。平能氏は、事実と異なる噂が広がらないためにも、公式なステートメントを迅速に出すことが重要だと言う。
「今回のケースでは、まず『ファンの方たちに対して、誤解も含めて不快な気持ちにさせてしまったことへの率直なお詫び』、そして『制作会社や監督に対してこれまでの仕事に対する尊敬と感謝の気持ちを述べる』ことが必要です。その上で事実関係をわかりやすく、納得してもらえるように説明する。何よりも、ファンの方たちとの『友好的なコミュニケーション』を重視する姿勢が大切です」(平能氏)
SNSの運用には、適切なリスク対策を
近年は、「社員がソーシャルメディアを利用する際のルール」を設ける企業も増加している。幅広いユーザーとコミュニケーションを取ることのできるSNSは、うまく活用すれば、商品やサービス、ひいては企業自身のファンを増やすことができる。一方、いつ発生するか分からない炎上危機に備えて、平常時の運用での細心の注意と、危機対応への適切なリスク対策が必要と言える。(@人事編集部)
参考:「けものフレンズ」の映像化プロジェクトに関するご報告(けものフレンズプロジェクト/KFPA)
@人事では『人事がラクに成果を出せるお役立ち資料』を揃えています。
@人事では、会員限定のお役立ち資料を無料で公開しています。
特に人事の皆さんに好評な人気資料は下記の通りです。
下記のボタンをクリックすると、人事がラクに成果を出すための資料が無料で手に入ります。
今、人事の皆さんに
支持されているお役立ち資料
@人事は、「業務を改善・効率化する法人向けサービス紹介」を通じて日本の人事を応援しています。採用、勤怠管理、研修、社員教育、法務、経理、物品経理 etc…
人事のお仕事で何かお困りごとがあれば、ぜひ私達に応援させてください。
「何か業務改善サービスを導入したいけど、今どんなサービスがあるのだろう?」
「自分たちに一番合っているサービスを探したいけど、どうしたらいいんだろう?」
そんな方は、下記のボタンを
クリックしてみてください。
サービスの利用は無料です。
関連記事
-
特集
日本人が驚くアジアの最新採用事情
アジアのホワイトカラー人材採用に日系企業が苦戦する理由とは?
アジア圏の人材採用に、多くの日本企業が苦戦しています。その理由は、日本企業が思い込みを捨てられないことにありました。かつて歓迎された日本の採用方式は、ホワイトカラーの重要性が増した...
2017.09.27
-
特集
なんですか、そのありがた迷惑なプレミアムフライデーとやらは…。
「アリキリ」働き方改革アニメで話題に サイボウズ広報が真意を語る
企業向けグループウェアで知られる株式会社サイボウズが、日本経済新聞に掲載した全面広告が注目を集めています。広告は「働き方改革に関するお詫び」と題するもの。「世の中の働き方を変えたい...
2017.09.15
-
特集
専門家に聞くJアラート配信時の人事・総務向け対処法
ミサイルが発射されたら会社は休み? 緊急時に企業が取るべき対応
2017年8月29日、北朝鮮が弾道ミサイルを発射したことを受け、政府は全国瞬時警報システム(Jアラート)の配信を行いました。「社員の出社・待機命令はどうすれば良いのか」と、人事・総...
2017.08.29
-
コラムニュース・トレンド
企業とシニア求職者のミスマッチをひもとく 第3回
シニア人材の活躍事例――これまでの人生経験を生かす
シニア層の活躍: 未経験業界への挑戦第1回は、シニア層の就業実態および意識をシニア個人と企業双方の視点からお伝えし、第2回では、積み重ねたキャリアで得たスキルや専門性を生かして生き...
2023.08.25
-
コラムニュース・トレンド
企業とシニア求職者のミスマッチをひもとく 第2回
シニア人材の活躍事例――これまでのキャリア・専門性を生かす
シニア人材の採用と活躍:スキルと経験を生かす方法第1回では、リクルートの調査研究機関『ジョブズリサーチセンター』が実施した「シニア層の就業実態・意識調査(個人編・企業編)」をもとに...
2023.08.18
-
コラムニュース・トレンド
「人的資本経営」の実践のポイント 第4回
人的資本経営の実践に向けて――マネジャーのリスキリング
人的資本経営の実践の要となるミドルマネジャーの「リスキリング」に注目本連載では、人的資本経営の実践のポイントとして、「人的資本の情報開示」「人事部の役割変化」「ミドルマネジメントの...
2023.08.10
あわせて読みたい
あわせて読みたい
人気の記事
国内・海外ヘッドライン
THE SELECTION
-
PRTHE SELECTION企画
「置き型健康社食」がもたらす可能性とは
健康経営、採用強化、コミュニケーション活性化にも。 手軽に導入できる「食」の福利厚生
-
PRTHE SELECTION企画
街なかの証明写真機「Ki-Re-i(キレイ)」で、もっと社員の顔写真管理をラクに
社員証の写真、「最適化」できていますか? チーム力を強化する顔写真データ活用法とは
-
THE SELECTION特集
【特集】ChatGPT等の生成AIが一般化する社会で必須の人材戦略・人的資本経営の方法論
-
THE SELECTION企画
レポートまとめ
@人事主催セミナー「人事の学び舎」 人事・総務担当者が“今求める”ノウハウやナレッジを提供
-
THE SELECTION特集
特集「人手不足業界の逆襲」~外食産業編~
「見える化」と「属人化」の組み合わせが鍵。 丸亀製麺が外食業界を変える日
-
THE SELECTION特集
人事のキーパーソン2人が@人事読者の「組織改革」の疑問に答えます(第2弾)
数値化できない部署を無理に人事評価する方が問題。曽和利光×北野唯我対談
-
THE SELECTION会員限定特集
働きやすい職場づくり~サイバーエージェント編
「妊活支援」や 「働くママ・パパ支援」を、 一部の社員のものにしないためには?