人事のための「求人広告」活用術
会社にぴったり合った人材の応募を集める、求人広告の作り方とは?
2017.10.06
採用市場では売り手優位の状況が続いています。入社後に活躍する人材を採用するには、求人広告を活用して、多くの人材にアプローチすることが欠かせません。しかし、こうした求人広告作りのノウハウは、これまであまり公にされてきませんでした。
求人広告は求職者とのコミュニケーションの手段の1つ。コピーや写真を1つ変えるだけで、会社にぴったりな人材の応募を増やすことも可能です。@人事では、株式会社ONE(オーエヌイー)で求人広告事業の責任者を務める、樋口寛之氏に取材。求人媒体の選び方から訴求ポイントの見つけ方、求人広告のコピーやビジュアル面の工夫まで、実践的なテクニックを聞きました。
樋口寛之(ひぐち・ひろゆき)
前職で勤めていた大手上場企業の上司が独立し、株式会社ONEを立ち上げ。上司よりONE設立メンバーとして誘いを受け、同社へ入社。大手のゼネコン・保険会社・不動産関連の企業を中心に、これまでの担当案件は約1,500社以上。求人広告の領域だけではなく、採用代行・アウトソーシングや人事コンサルティングなど、幅広い領域で実績を持つ。取締役就任後も、求人広告事業の事業責任者として従事。自身も引き続きクライアントを保有し、社内売上額No.1の実績を持つ。
採用広告の最新事情 「職場の雰囲気」を重視する若者たち
中途採用広告の最新動向はどのようなものか。樋口氏は中途採用広告で訴求する内容の変化について、次のように語る。
「現在、社会人歴3年程度で即戦力になってくれそうな人材がほしいという中小企業が多いですね。若年層は、応募や内定受諾の際に『職場の雰囲気』をこれまでに増して重視する傾向にあります。以前は入社の決め手が給与というケースも普通にありました。ですが今は、ギスギスした職場ではないか、社員が自分に合いそうかどうかを判断基準にしている人が多い。給与の高さよりも、ストレスなく、楽しく働けるかが大事。こうした価値観にシフトしているので、それを踏まえた広告がおのずと求められているのが現状です。」
中途採用の求人媒体と一口にいっても、「若手に強い」「ITエンジニアに強い」など、特徴や強みはさまざまだ。自社に合った求人媒体を選ぶためのポイントは何か。樋口氏によると、それは「ターゲットを具体化する」ことに尽きるという。
「採用広告で明示できるわけではもちろんありませんが、採りたい方の年齢の上限・下限、性別、学歴、経験、資格などをできるだけ明らかにしておくことをお薦めします。そのうえで、ターゲットが多く見ていると思われる媒体を選びます。もちろん、その媒体に掲載した際に、競合他社と比べて優位性があるか、大きく見劣りがしないかという視点も意識すべきです。」
株式会社ONEでは、クライアントに対し、給与や福利厚生、休日休暇といった項目ごとに比較する「競合調査」を行っている。「競合と比べて見劣りがしないか」という点も含めて、どの媒体がよいか、どこを訴求するとよいかを助言するという。
ONEで実施している競合調査の内容。企業のプロフィールから福利厚生まで、細かく調査を行っている。(出典:株式会社ONE Webサイト)
ミスマッチが生まれる原因は「極端なデコレーション」
人事担当者が抱える課題として、「求人内容と応募者のミスマッチ」を挙げる人は多い。これを防ぐために、人事担当者が注意すべき点は何か。
「大事なのは、極端なデコレーションはしないことです。見栄えをよくすると、たしかに応募者は増えますが、本来の目的は、採用した人材に入社後活躍してもらうことですよね。ミスマッチを誘発する事例としては、バリバリ働くベンチャー気質の企業なのに、採用広告では『アットホームな職場』などと表現する例が挙げられます。これでは入社後にミスマッチが起きるのも無理はありません。内定者、会社双方にとって不幸なことです。
また、社内の実情とかけ離れた採用広告を掲載すると、ミスマッチがもとで早期退職した人がSNS上などで、会社に対するネガティブな書き込みをするリスクも高まります。こうなると、採用にとどまらず、会社全体のブランディングにも大きな損害が出てしまうので気をつけたいですね。」
だからこそ、事実としてアピールできるポイント、競合他社と比べて優位性がある部分を掘り起こし、正直に書くことが重要だと樋口氏は断言する。
「もちろん、前向きな表現にすることは必要です。例えば体育会系の営業職ならば、『独立したい人にはうってつけの環境』、『20代のマネジャーもいます』などと表現する。応募者は減るかもしれないけれど、より自社のほしい人材像にマッチした有効な母集団形成ができます。大事なのは自社が戦えるポイントをどこにもってくるかですね。」
原稿を作成する「前準備」に力を注げているか?
ではそもそも自社の知名度に課題がある場合、どんな点を注意すべきなのか。実は原稿やコピーを考えるよりも先に、前準備が必要となる。「ターゲットとなる求職者が、その媒体でどのように自社の広告を見つけて、興味をもつのか」。この導線を綿密に検討できるかどうかが、採用の成否を分けるという。
具体的には、掲載媒体における職種のカテゴリ設定が挙げられる。検索時に職種の条件などを細かく入力するような、熱心な求職者の目に留めてもらうには、どのカテゴリだと上位に表示されやすいかを考えて設定するのが望ましい。例えば、広く見てもらおうと「一般事務」に設定するよりも「経理」「人事・労務」と設定したほうがよい。これらを検討する準備ステップを踏んでから、文章を練るべきだと樋口氏は呼びかける。
コピーを書く際は「訴求ポイント」の絞り込みを徹底せよ
では、実際に求人広告をつくる際、コピーなどの文章表現面では何を意識すればいいのか。まずは、とにかく「訴求ポイントの絞り込み」がキーになるという。
「待遇や社内の雰囲気、研修制度と、関連性の低い訴求ポイントをいくつも散りばめようとすることはありませんか。そうすると、読者にインパクトを残しづらいのです。例えば、稼ぎたいと考える20代後半の男性がターゲットなら、同年代の年収のモデルケースを数字で明示するべきです。コピーでは端的に『20代後半のマネジャーが活躍!』と謳うとよいでしょう。コピーは数字、具体性がものをいいます。訴求ポイントの絞り込みに迷ったら、ターゲットと訴求ポイントが一貫しているかどうかで判断するとよいですよ。
また20代後半、30代前半の女性に訴求したいなら、出産後の復帰は気になるポイントです。となると、育児休暇復帰後も活躍している女性社員の等身大の声を載せ、一日のスケジュールなどを載せるのが有効です。『出産後もキャリアを積める』『ロールモデルがあるから安心』と思ってもらいやすく、出産後も活躍できる会社という印象につながります。
また先ほど述べたように、事実に即していることは大前提として、コピーの表現の工夫は重要です。『体育会系』ならば『意識が高い同世代メンバーと目標に向かっていける』というように。言い方ひとつで印象をガラッと変えられます。これにより、ターゲット人材の応募数を増やしたり、質をコントロールしたりすることができるのです。」
汎用的に求職者に響く、コピーの「鉄板フレーズ」も参考になる。例えば「新規事業立ち上げ」「新拠点のスタッフ募集」というのは、新しいことにトライできるという印象が前面に出ており、年代を越えて響くという。「創業●年、老舗」という表現も「安定」のイメージを想起させるので効果的だ。
ターゲットを踏まえて写真を選定する
次に、写真などのビジュアル面でのポイントは何か。一番は、働いている社員の写真だという。樋口氏は写真選定のポイントをこう語る。「大事なのは、ターゲットと同年代、同じ性別の人の表情が映ること。あとは明るく親しみやすい方の写真に越したことはありません。実は表情がわかることがミソ。大人数の集合写真は、表情が見えないのであまりお薦めしません。自分がそこで一緒に働いているイメージがわくかどうかを意識してください。
また、きりっとした真剣な表情とにこやかな笑顔のどちらがいいのか、訴求によって変えるといいですね。複数枚の写真を掲載できるとしたら、取り扱っている商品やサービスがわかる写真を載せると、親近感がわきます。あとは写真の明るさの調整、背景に余計なものが映りこんでいないか。こうした細かいところまで気を配れるかが、求職者に与える印象を大きく左右します。
約8割の転職者がホームページをチェックしているという調査結果もあるので、採用をバックアップする採用サイトの制作も事前準備の一つとして着手できるといいですね。」
信頼できるパートナー企業を見極めるためのポイント
信頼できる採用広告制作会社や代理店探しも、人事担当者にとっては大きな課題となるだろう。見極めのポイントはあるのだろうか。
「最初の打ち合わせのときに、良い面も悪い面も両方伝えてくれるかどうかをチェックするとよいでしょう。『こういう表現をすると応募者は減るかもしれないけれど、より自社にマッチした人が応募しやすくなる』というように。過去数年の間に出稿した求人広告を振り返ったり、勤務年数の長い社員に長く働いている理由をヒアリングしたりして、『その会社ならではの強み』を丁寧に掘り起こしたうえで、訴求ポイントを提案してくれるかどうかが肝です。
また、求人広告は一度出稿して応募者が集まったから成功というわけではありません。求める人材に限りなく近い人を採用することが真の成果だと考えています。
求人から応募者の面接へ何名通過したか、希望する人材像と合っていたのか。こうした観点から求人広告の検証と改善を繰り返し、今後に活かしていく。このように、採用の精度を高めていくための『伴走者』という意識で、中長期的な戦略をともに考え、ともに実行していく企業こそ、信頼できるパートナーになってくれるはずです。」
PDCAサイクルを回していく姿勢こそが、真に成果を上げる求人広告づくりに欠かせない。
【まとめ】中途採用広告で成果を上げる4つのポイント
1.競合調査で訴求点を絞り込む
2.原稿を作る前に、ターゲットの導線を分析する
3.訴求内容に合った画像を掲載する
4.検証と改善ができるパートナー会社を選ぶ
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松尾美里(まつお・みさと) 日本インタビュアー協会認定インタビュアー/ライター。教育出版社を経て、2015年より本の要約サイトを運営する株式会社フライヤー(https://www.flierinc.com/)に参画。ライフワークとして、面白い生き方の実践者にインタビューを行い、「人や団体の可能性やビジョンを引き出すプロジェクト」を進行中。ブログは教育×キャリアインタビュー(http://edu-serendipity.seesaa.net/)。
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