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シリーズ・人づくり革命


働き方はどう変わる? リンダ・グラットン著「ワーク・シフト」書評

2017.09.29

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「そろそろ我々の働き方は大きな転換点を迎えそうだ」

日本で働いているすべての人にとって、これは共通の認識になりつつあるのではないでしょうか。日本政府が「働き方改革」「人づくり革命」を主導していることからもそれは伺い知れます。

このような波乱の時代において、未来に押しつぶされないようにするためにはどうすればいいのでしょうか? これから数年〜数十年、どこに力を注げば幸福な人生を形成していけるのでしょうか?

リンダ・グラットン著『ワーク・シフト』
ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉
リンダ・グラットン (著), 池村 千秋 (翻訳)
単行本(ハードカバー)
2012/7/28発売(プレジデント社)

このような答えの出ない問いに答えを出そうとするのはこの世で最も複雑で難解なパズルのうちの1つですが、かような問題に果敢に取り組んでいる1人の勇敢な女性がいます。ロンドン・ビジネススクール教授のリンダ・グラットン氏です。

実は「人づくり革命」の具体策を検討するべく設置された「人生100年時代構想会議には、13名の有識者メンバーのうちの1人としてリンダ・グラットン氏が招聘されています。また、安倍晋三首相も出席し、首相官邸で開催された2017年9月11日の第一回会議では、実際にリンダ・グラットン氏が招かれています。
【参考】安倍首相が推進を発表した「生産性革命」「人づくり革命」とは何か

ここでは、日本でもベストセラーとなったリンダ・グラットン氏の2冊の著作「ワーク・シフト」と「ライフ・シフト」のうち、未来の働き方にフォーカスした「ワーク・シフト 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉」を紹介しながら働き方の未来を考えていきましょう。

目次
  1. 未来を形作る5つの要因とは?
  2. 漫然と迎える暗い未来か? 主体的に築く明るい未来か?
  3. 明るい未来を引き寄せる「三つのシフト」
  4. 主体的な選択によって未来は切り拓かれる

未来を形作る5つの要因とは?

なぜいま働き方の大きな転換点が訪れているのでしょうか? これは多くの人が日々肌で感じていることでしょうが、その理由は、我々を取り巻く環境が、今までの常識が通用しなくなるくらい劇的に変化してきているからです。「ワークシフト」の中でリンダ・グラットン氏はこう言っています。

いま私たちの社会は、十八世紀後半から十九世紀前半にかけて世界の一部の国が工業化への歩みを始めたとき以来の大きな変化を経験している。
(中略)
私たちを待ち受ける新しい時代も、それと同じくらい途方もなく大きな変化をもたらしそうだ。これまでの常識の数々が覆されるだろう。

リンダ・グラットン著『ワーク・シフト』p.15

本書はそう遠くない未来である2025年の働き方がどうなっているかを見据えて書かれています。これから約10年のうちに世界は今よりもさらにめまぐるしく変化していくからです。本書ではその劇的な変化の要因を「未来を形作る五つの要因」として以下のようにまとめて説明しています。

  • 要因1 テクノロジーの進化
  • 要因2 グローバル化の進展
  • 要因3 人口構成の変化と長寿化
  • 要因4 社会の変化
  • 要因5 エネルギー・環境問題の深刻化

本書の中ではそれぞれの要因をさらに細分化して「三十二の要素」に分類していますが、その詳細は本書をあたってください。

五つの要因が私たちにどう影響するかは人それぞれで、身近に感じるものもあればそうでないこともあるでしょう。

このような五つの要因がそれぞれ複雑に、相乗効果的に、個別に関連し合うことで、私たちの未来の働き方が形成されていきます。それを予想することは容易ではありません。

漫然と迎える暗い未来か? 主体的に築く明るい未来か?

五つの要因は、どれも我々を明るい未来に導く要因にもなれば、暗い未来に導く要因にもなり得ます。

私が特にゾッとしたのは、テクノロジーの進化とグローバル化の進展がもたらす暗い側面です。これからは24時間365日働ける環境が整い、様々な人とプロジェクトを進められるようになります。そうなることで時間がどんどん”細切れ”になっていきます。

過剰に仕事の効率化が求められ、遊びや創造性を発揮するゆとりが縮小します。それは本業以外に高度な専門技能を身につける機会を失うことに直結し、柔軟なキャリアプランの形成を阻害します。すでに今その傾向がどんどん加速しているのを実感している方は多いのではないでしょうか。

実際のところ、私は今日家を出る前にプロジェクトのチャットを一通りチェックし、電車の中でブログを書き、事務所に到着してすぐに「ワーク・シフト」を読み返しながらこの書評を執筆しているのです(そして背筋がうすら寒くなりました)。

おっと、でも悲しむのはまだ早いですよ。このような暗い未来を避けるために主体的な選択を続けていけば、五つの要因は明るい未来を引き寄せる要因にもなり得るのですから。その鍵となるのが、働き方を転換すること、つまり、「ワーク・シフト」なのです。

明るい未来を引き寄せる「三つのシフト」

では、主体的な選択によって明るい未来を引き寄せるには、今から何をすればいいのでしょうか?本書では「三つのシフト」が提案されています。

私たちは、第8〜10章で詳しく論じる三つの<シフト>を意識的に実践しなくてはならない。具体的には、第一に、さまざまな専門技能を次々と身につけることを意識して行動し、第二に、いろいろなタイプの興味深い人たちと繋がり合うために、善良に、そして精力的に振る舞い、第三に、所得と消費に重きを置くのではなく、情熱をいだける有意義な経験をしたいという思いに沿った働き方を選択する必要がある。

リンダ・グラットン著『ワーク・シフト』p.235

いまは多くの企業で管理職を務めるゼネラリスト(なんでも屋)ですが、終身雇用を前提として、給料のために出世コースを争うこの働き方をしている人材はどんどん価値を失っていきます。その会社でしか通用しない知識や技能、人脈、待遇に依存しているからです。

これから求められるのは会社を一歩出ても通用する専門的で高度な技能を複数有する人材であり、そのようなスペシャリストがみんなで協力しあって作り出す大規模で創造的なイノベーションです。

いま世に出ている数々のサービスを見ればそれがすでに当たり前のように行われていることが分かります。試しに、いま劇場で公開されている映画の最後に流れるスタッフロールをじっくりと見てみてください。たった2時間のために、別々の会社に属する数え切れないスペシャリスト達が全力で協力しあっていることが分かるはずです。多い時には1,000人を超えるでしょう。

行動が伴わなければ、一流と呼ばれるほどの専門技能を磨くことは難しいでしょう。単に契約でつながるのではなく、きちんと協力しあえる人脈を築くには積極的な働きかけが必要です。そしてこのようなことを実現するために必要なのは、お金や物ではなく「情熱をいだける有意義な経験をしたい」という思いなのです。

主体的な選択によって未来は切り拓かれる

リンダ・グラットン氏が言わんとしていることは、未来は予測不可能なほど激しい変化の中にあり、我々はただそれをじっと眺めていることしかできないということでは“ありません”。

むしろ逆で、予測不可能な変化のまっただ中にあるからこそ、勇気を出して主体的に自らの未来を選択していくことで、よりよい未来を引き寄せることができるのです。

「ワーク・シフト」が書かれたのは5年前。これから未来が来るのではありません。未来は現在進行形で訪れています。

これから5年10年の働き方を本気で考えたいのであれば、ぜひ今こそ本書を手にとってみてください。5年経っても色褪せないどころか、より現実的な内容となった名著です。

執筆者紹介

松崎純一(jMatsuzaki) IT系専門学校を卒業後、システム屋として6年半の会社員生活を経て独立。 ブログ「jMatsuzaki」を通して、小学生の頃からの夢であった音楽家へ至るまでの全プロセスを公開することで、のっぴきならない現実を乗り越えて、諦めきれない夢に向かう生き方を伝えている。 2015年からはjMatsuzaki名義でバンド活動を開始。 ブログ:jMatsuzaki(http://jmatsuzaki.com/

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