コラム

残業ゼロを目指して


「観客」が仕事のパフォーマンスを変える

2017.09.21

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残業ゼロを実現するためのビジネスハック術を紹介する、ベストセラー作家・佐々木正悟さんの連載企画。今回は観客と仕事のパフォーマンスに関するお話です。ある心理学者は、仕事のパフォーマンスを調べるために、「あの生き物」で実験を行いました。

人間は、常に他人の目を気にして生きている

私たちは、他人の目というものを気にします。

 ギャラリーが存在していなければ、プロのアスリートのパフォーマンスといえども著しく低下します。そのむかし閑古鳥の鳴く川崎球場まで出かけて、しょっちゅう「ロッテ・オリオンズ」(現千葉ロッテマリーンズ)を応援していた自分には、これが実感として分かる気がします。

ビジネスパーソンも、その仕事の「プロ」です。当然、仕事のパフォーマンスは、大観衆が見守っているのと、たった1人でやっているのとでは、大幅に違ってきます。

「あの生き物」もギャラリーが気になっていた

心理学者は「なぜそんなことを思いついたんだ」と思ってしまうような突飛な実験を考案することがありますが、その最たる例として、アメリカの心理学者、ロバート・ザイアンスが行った実験があります。

ザイアンス博士は、ゴキブリが迷路をすり抜けてうまくエサにありつけるまでのパフォーマンスを、ギャラリーがいる場合、いない場合で比較する実験を行いました。

実験の結果、彼らは「ギャラリーがいた方が迷路をすり抜けるパフォーマンスが高い」ことが分かりました。彼らが「仲間に見られているか」を気にしているのかどうか、人間の私たちは大いに疑問に思いましたが、実は気にするようなのです。

ギャラリーがいない場合では、真面目に迷路を抜ける動機づけが弱くなる。つまり、ゴキブリは単にゴールにたどり着けてエサがもらえればいいというものではなく、仲間が感心してくれてこそ、すばやく迷路を抜けようという気になるらしいのです。

しかもこの研究はこれで終わりではありません。

ザイアンスは、タスクの難易度を変えることにしました。具体的には、通過する迷路を複雑なものと、やさしいものの2種類用意したのです。

その結果分かったことは、以下の2点です。

  • やさしい迷路では、ギャラリーが多いほどパフォーマンスが向上する
  • 難しい迷路では、ギャラリーが多いほど、迷路を抜ける時間が長くかかる

つまり、頭を絞って考えなくてはいけない複雑なタスクのパフォーマンスは、大勢が固唾を呑んで見守っている状態にあると、下がってしまうということです。

ゴキブリと私たち人間が同じというつもりはありませんが、この実験結果は、人間に置き換えても納得のいくものと言えそうです。 実際にザイアンス博士は、この実験から「動因説」と呼ばれる心理学の仮説を立てています。

簡単にできる仕事は1人で黙々とやらない

ザイアンス博士の実験結果を考慮に入れるなら、雑務や書類の簡単な仕分けなど、やり慣れていてすぐできそうな仕事を孤独に黙々とやっていると、きっと張り合いがなくて、やる気を失うでしょう。

つまり「簡単で単純なタスクは、一人で静かに実施しないほうが良い」ということです。そういう単純な仕事こそ、同僚たちのいるオフィスで、軽口を叩きながら進めていくべきなのです。

実際には、単純なタスクをこなす自分を「観客」として応援してくれている同僚はほとんどいないでしょうが、「注目されている」と思い込む気持ちが大事です。おそらく、実験でギャラリーとして存在していたゴキブリのみなさんも、知らない個体が迷路を抜けている様子などに興味はなかったはずですが、抜けている「主人公」はそう思ってなかったのでしょう。

発想力を要するような複雑な仕事は、大人数で実施しない

逆に、発想力を要するような複雑な仕事を、騒然とした雰囲気でやろうとすると、なかなかうまくいきません。「自分が苦手としているような、集中力を要する仕事では、ギャラリーは不要」ということです。そのようなクリエイティブな仕事は、少なくとも沈思黙考を要する段階では「人に見せる」ものではないのです。会社に一人で集中できるスペースがある場合はそのスペースに、難しい場合は人知れず隠れ家的なカフェにこもって、孤独にじっくりと進めるべきでしょう。

日々の仕事の中で、漫然と同じ場所でタスクを進めてしまうことは多いかと思いますが、「社会的な動物」である私たちは、行動が環境に大きく左右されます。仕事を効率よく進めるためには、最適な環境を考えることも大切です。

執筆者紹介

佐々木正悟(ささき・しょうご) 心理学ジャーナリスト。「ハック」ブームの仕掛け人の一人。1973年北海道生まれ。「効率化」と「心理学」を掛け合わせた「ライフハック心理学」を探求。執筆や講演を行う。著書に、ベストセラーとなったハックシリーズ『スピードハックス』『チームハックス』(日本実業出版社)のほか『先送りせずにすぐやる人に変わる方法』(中経出版)『一瞬で「やる気」がでる脳のつくり方』(ソーテック)などがある。ブログ:佐々木正悟のメンタルハック

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