残業ゼロを目指して
まとめて一気に仕事をすることが「かっこいい」と思っていませんか?
2017.09.14
残業ゼロを実現するためのビジネスハック術を紹介する、ベストセラー作家・佐々木正悟さんの連載企画。今回は、残業を生んでいる「ある心理」についてのお話です。
ちょうど半年後にやってくる「ある問題」
2017年度も残すところ半年足らずとなりましたが、ちょうどこれから半年後の時期に、悲鳴を上げる方がたくさんいらっしゃるというお話を税理士さんからお聞きしました。いわゆる「確定申告問題」です。
2018年の確定申告期間は、2月16日(金)〜3月15日(木)だそうですが、税理士さんがおっしゃるには、法人の責任者・個人事業主問わず、毎年1〜3月になるとこの「確定申告問題」で慌てる人がとてもたくさんいるそうです。
「領収書を後でまとめて処理する」≒「領収書を混ぜる」
この種の話を聞くたびに、なんともいえない、もったいないような気持ちを抱きます。税理関係の処理は「毎日」行うべきで、個人事業主であればそれはなおさらです。経費が何のために使われたもので、どこで、いくら使ったのかという情報は、当日が一番よく分かっているからです。
具体的な話をすれば、当日のレシートを当日のうちに記録すれば、「レシートを仕分ける」という作業は必要ありません。それを翌週以降に持ち越すことで「記録」の前に「仕分け」という作業が発生します。
にもかかわらず、多くの方はその作業を先延ばしにしてしまいます。全てのレシートは、それを手にした時点では日付順(厳密には時系列順)に仕分けされているはずなのに、それを記録せずにためてしまうことで、結局「仕分けされたものを混ぜてしまっている」のです。これは請求書であれ、領収書であれ、同じことが言えます。
「領収書を後でまとめて処理する」という行為は、実は「仕分けてあった領収書を混ぜる」という行為に、かぎりなく近いわけです。
あとでまとめてやることで「仕事が減った」ような幻想を抱く
「それは今はいいから!後でまとめてやるから!」という言葉を、私はけっこう頻繁に耳にして、そのたびに「後でまとめてやると、仕事が『1つ』に減るという幻想があるのではないか」と感じます。つまり仕事を「1つ」にまとめられると、それだけで仕事が「減った」と感じられてしまうのではないか、ということです。
実際には「後でまとめてやる」という行為はだいたいにおいて仕事を増やします。なぜなら、もともと不要だった「仕分ける」「整理する」「記憶を掘り起こす」といった仕事が増えるからです。大したことではないこともあるでしょう。でも「増える」ことはあっても「減る」ことはないのです。
メール返信やメッセージ処理もそうなのですが、この種の「1回にまとめることで仕事が減る」という幻想には根深いものがあって、どうすればその「苦行」をこの世から減らすことができるのか、いつも伝え方に悩みます。
「仕事をまとめてやる快感」にハマってはいないか?
もうひとつ、「まとめてやる」ことにはもしかしてこうした理由があるのかも知れない、と疑っていることがあります。それは「つらさが魅力的」という感覚です。
たとえば、3月になって「まとめて税務処理をする」ことは、どこか楽しい側面もあるかもしれません。ギリギリになって、なんだかよくわからない大量の領収書があって、その記憶を掘り起こし、徹夜して、努力して、難しいパズルを解き明かしたような達成感は、強烈な快感なのかもしれません。
同時に、膨大な仕事に立ち向かう自分が、魔王に立ち向かう勇者のように感じられることも、もしかするとあるかもしれません。
ただ、こうした「まとめて仕事を片付ける自分をかっこいいと思う」という感覚こそが、残業を生む原因のひとつでもあるのです。
残業をなくせるのは「達成感」ではなく「地道な作業」
仕事に関わっているのが自分だけであれば、「まとめて仕事を片付ける」という手段も選択肢としてはあると思います。ただ、自分が「まとめてやろう」と思っている仕事が終わらないと、次の仕事を進められない人がいたとしたら? ここに、残業の連鎖が生まれてしまいます。
たしかに、毎日地道に経理を処理していた場合、まとめて領収書を処理して一気に仕事を終わらせるような「達成感」を得ることはできません。というより、毎日毎日「経費を記入する」という作業自体は、正直面白くもなんともありません。ただ、面白くもなんともないと思う作業を、たとえ毎日1分でもくり返すことが、残業をなくすことにつながるのです。
残業を減らすためには「達成感」よりも「毎日の地道な作業」を大切にする姿勢が必要です。そのためには「仕事をむやみにまとめない」ことを意識しましょう。
執筆者紹介
佐々木正悟(ささき・しょうご) 心理学ジャーナリスト。「ハック」ブームの仕掛け人の一人。1973年北海道生まれ。「効率化」と「心理学」を掛け合わせた「ライフハック心理学」を探求。執筆や講演を行う。著書に、ベストセラーとなったハックシリーズ『スピードハックス』『チームハックス』(日本実業出版社)のほか『先送りせずにすぐやる人に変わる方法』(中経出版)『一瞬で「やる気」がでる脳のつくり方』(ソーテック)などがある。ブログ:佐々木正悟のメンタルハック
@人事では『人事がラクに成果を出せるお役立ち資料』を揃えています。
@人事では、会員限定のお役立ち資料を無料で公開しています。
特に人事の皆さんに好評な人気資料は下記の通りです。
下記のボタンをクリックすると、人事がラクに成果を出すための資料が無料で手に入ります。
今、人事の皆さんに
支持されているお役立ち資料
@人事は、「業務を改善・効率化する法人向けサービス紹介」を通じて日本の人事を応援しています。採用、勤怠管理、研修、社員教育、法務、経理、物品経理 etc…
人事のお仕事で何かお困りごとがあれば、ぜひ私達に応援させてください。
「何か業務改善サービスを導入したいけど、今どんなサービスがあるのだろう?」
「自分たちに一番合っているサービスを探したいけど、どうしたらいいんだろう?」
そんな方は、下記のボタンを
クリックしてみてください。
サービスの利用は無料です。
関連記事
-
企画
話題のニュースに斬り込む
労働基準監督署と社会保険労務士に聞く、裁量労働制の「無効」判断 企業が取るべき対応は?
ゲーム開発会社に勤務していた女性について、渋谷労働基準監督署が裁量労働制の適用を無効とし、会社に残業代を支払うように勧告していたことが、2017年9月5日に分かりました。この女性は...
2017.09.07
-
企画
特別インタビュー
小室淑恵氏に聞く、本気で「脱・長時間労働」するためには?
目次 「あなたの長時間労働」が組織をダメにする 「管理職の評価軸を変更せよ」 「もっと働きたがる社員」をどうするか 「少数派の声を聞く」ことが成功への近道 経営トップと脱・長時間労...
2017.03.13
-
コラムニュース・トレンド
企業とシニア求職者のミスマッチをひもとく 第3回
シニア人材の活躍事例――これまでの人生経験を生かす
シニア層の活躍: 未経験業界への挑戦第1回は、シニア層の就業実態および意識をシニア個人と企業双方の視点からお伝えし、第2回では、積み重ねたキャリアで得たスキルや専門性を生かして生き...
2023.08.25
-
コラムニュース・トレンド
企業とシニア求職者のミスマッチをひもとく 第2回
シニア人材の活躍事例――これまでのキャリア・専門性を生かす
シニア人材の採用と活躍:スキルと経験を生かす方法第1回では、リクルートの調査研究機関『ジョブズリサーチセンター』が実施した「シニア層の就業実態・意識調査(個人編・企業編)」をもとに...
2023.08.18
-
コラムニュース・トレンド
「人的資本経営」の実践のポイント 第4回
人的資本経営の実践に向けて――マネジャーのリスキリング
人的資本経営の実践の要となるミドルマネジャーの「リスキリング」に注目本連載では、人的資本経営の実践のポイントとして、「人的資本の情報開示」「人事部の役割変化」「ミドルマネジメントの...
2023.08.10
あわせて読みたい
あわせて読みたい
人気の記事
国内・海外ヘッドライン
THE SELECTION
-
PRTHE SELECTION企画
「置き型健康社食」がもたらす可能性とは
健康経営、採用強化、コミュニケーション活性化にも。 手軽に導入できる「食」の福利厚生
-
PRTHE SELECTION企画
街なかの証明写真機「Ki-Re-i(キレイ)」で、もっと社員の顔写真管理をラクに
社員証の写真、「最適化」できていますか? チーム力を強化する顔写真データ活用法とは
-
THE SELECTION特集
【特集】ChatGPT等の生成AIが一般化する社会で必須の人材戦略・人的資本経営の方法論
-
THE SELECTION企画
レポートまとめ
@人事主催セミナー「人事の学び舎」 人事・総務担当者が“今求める”ノウハウやナレッジを提供
-
THE SELECTION特集
特集「人手不足業界の逆襲」~外食産業編~
「見える化」と「属人化」の組み合わせが鍵。 丸亀製麺が外食業界を変える日
-
THE SELECTION特集
人事のキーパーソン2人が@人事読者の「組織改革」の疑問に答えます(第2弾)
数値化できない部署を無理に人事評価する方が問題。曽和利光×北野唯我対談
-
THE SELECTION会員限定特集
働きやすい職場づくり~サイバーエージェント編
「妊活支援」や 「働くママ・パパ支援」を、 一部の社員のものにしないためには?